与のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『はるを呼ぶ』を読み終えてまず感じたのは、『光のとこにいてね』と通じる“人の温かさ”と“静かな再生の気配”だった。
ストーリーは異なるのに、作品全体を包む雰囲気や読後感が似ていて、心の奥に柔らかな光が残るような感覚を味わった。
物語の中心にいる晴奈は、8歳の時に姉・小春が突然いなくなったことをきっかけに、過酷な環境へと放り込まれる。
父は家を出て行き、母は精神的に壊れて部屋から出られなくなり、晴奈は村八分のような孤立した状況で母の面倒を見ながら成長していく。
幼い少女が10年間も必死に耐え抜いてきた事実は、それだけで胸が締め付けられる。
そんな晴奈の人生を大きく動かしたのが、海岸通りの公衆電話に突然かかってきた姉・小春の電話だった。
何となく受話器を取ったその瞬間、晴奈は10年ぶりに姉の声を聞く。
小春は晴奈に2つの「ミッション」を与える。
・友人と仲直りし、一緒に下校して冬休みの予定を入れること
・家を出て行った父に会うこと
このミッションは、晴奈が他者とのつながりを取り戻し、自分の人生を再び歩き始めるための小さな一歩だった。
1つ目のミッションは、晴奈が勇気を振り絞ってなんとか達成する。
2つ目のミッションは、仲直りした友人の美久が驚くほどテキパキと動き、父との再会を実現させた。
ミッションを一つずつこなすたびに、晴奈の周囲の人間関係は少しずつ良好になり、晴奈自身も前向きになっていく。
読者である私も、晴奈の変化に合わせて心が軽くなり、なぜか救われたような気持ちになった。
姉の失踪が原因で家族が崩壊したため、晴奈には小春への恨みもある。
しかしそれ以上に、晴奈の中には強い姉妹愛が流れている。
「お姉ちゃん」という言葉が30回以上も登場するほどで、晴奈がどれほど姉を思い続けてきたかが痛いほど伝わってくる。
そして物語の終盤で明かされる事実が、晴奈の心の深さをさらに際立たせる。
――公衆電話からの小春の電話は、春奈が無意識に作り出した“幻想”だったのだ。
姉を思う気持ちがあまりにも強く、心の奥底で「小春に背中を押してほしい」と願い続けていた晴奈。
その切実な思いが、電話という形で彼女を支えていた。
ミッションを達成するたびに人間関係が改善していったのは、晴奈自身が変わろうとする力を内側に持っていたからこそだと気づかされる。
晴奈が自分の力で立ち直り、周囲の人々とつながり直していく姿は、読んでいて涙がこぼれるほど感動的だった。
過酷な環境で育った少女が、幻想に頼りながらも、最後には自分自身の足で未来へ踏み出していく。
その過程は静かでありながら力強く、読後には温かい余韻が残った。
『はるを呼ぶ』は、苦しみの中でも人は他者の温かさや、自分の内側にある希望によって救われることがあると教えてくれる作品だった。
晴奈の再生の物語は、読者の心にもそっと春を呼び込んでくれるような、優しくて力強い小説だった。 -
Posted by ブクログ
10年前にいなくなったお姉ちゃんと同い年になった晴奈。進学先も決まったが手詰まりのような“いま”と向き合うヤングケアラーの物語。
第四章の光明が見えた気がしたのに、抜け出せそうなのに、いちばん悪くなってしまった時の晴奈の感情が決壊した場面で泣いてしまった。
結果的に何もできなかった担任、居合わせた木村くんのお母さん、頼子さん、家族や10年前の関係者以外で関わる“大人”の完璧じゃない、その人なりの精一杯の行動は晴奈にとって全く助けにならないものも支えになるものもある。
晴奈の苦しさが堆積していくようで常に疲労感や徒労感を覚える。大人たちの態度の方が分かってしまえてつらい…意図が“通じない”時の力が抜ける感覚はとてもリアル。
発売日が3月初旬だったのは粋。 -
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。主人公の晴奈は、海沿いの田舎町に住む高校三年生。10年前に高校三年生の姉「小春」は、突然行方不明になった。家出か事故か事件か、何の手がかりも得られなかった。そして、小春は神隠しにあったという噂がひろまり、一家は周囲から避けられるようになっていった。さらに小春の失踪が原因で母親は心を病み、父親は妻と小学生の晴奈を残し家を出ていってしまった。
晴奈は家から出られなくなってしまった母親の面倒をみながら、二人でずっと暮らしてきた。晴奈は学校でも疎外されるなかでも勉強に励み、生徒会の活動に参加するなどして、大学の指定校の推薦枠を獲得することができた。町から出たいがためにである。高校卒業が迫る中で、晴奈は海沿いの公衆電話が鳴り出したのに気づく。それは、姉の小春からの電話だった…
読んで感じたのは、主人公の父親がクズであること。病気の妻と小学生の娘をおいて家をでるなんて、これはもう犯罪だ。生活費を送ればいいという問題じゃない。作中には、ろくな大人が登場しないのだが、晴奈の友人だった美久と関係が戻ったのは良かった。そして、小春の元カレの学も町に戻って来たのだが、いまいち頼りない。しかし、学の婚約者として町に来た頼子は、その名のとおり頼りになるまともな大人である。
本書の題名は、「はるを呼ぶ」だが、春と漢字にしていない。これは「はる」には小春と晴奈の両方の意味を持たせているからだと思う。また。表紙カバーの隅の方にある英題名"Calling for Spring"だが、"Call"には「呼ぶ」と言いう意味も「電話を架ける」という意味もある。 -
Posted by ブクログ
初読みの実石沙枝子さん。
10年前に突然失踪した姉の小春。言い伝えから、「神隠し」にあったのでは?と噂されるようになる。
父は家を出ていき、精神が不安定になった母のお世話を主人公の春奈がすることに。閉鎖的な田舎町では誰もが一家との距離を取っていて、春奈は孤立状態に。
「こんなひどいことある?」と、想像がつかない状況に困惑してしまった。
周りの大人達が無責任過ぎて、ムカつきながら読んだ。
大人で唯一ともいえるまともな人が頼子。名前の通り頼りになる存在で、この人だけは信用出来そうだと思った。
皆さんの評価は高めだけど、私はちょっとイライラしてしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこれはヤングケアラーのお話しなのだろうか?
小学生の頃から10年間も村八分状態の中誰にも頼れず生活するなんて…。
病んでしまった母親は行方不明になってしまった姉の名前で自分を呼ぶ。この子こそ壊れてしまってもおかしくなかったのではないか?
許せないのは逃げた父親!
探し当てた末に家に訪れた時の呑気さ!
『おとうさんだよー」
じゃないよ!と、ムカムカしてしまいました。
行方不明の姉にそっくりの女性が姉の元彼氏の今カノとしてやってきた。
その彼女が初めての頼れる大人になってくれた。
もっと小さい頃から助けてもらえたら良かったのにね。と、思ってしまう。
最後はハッピーエンドで終わって良かったけれど、結局姉は何故行方不明になったのだろう?
ガスが充満する裏山で亡くなった?
でも、失踪後にきっと捜索隊が入ったよね?
ちょっとそこのところがわからなかったのでモヤモヤします。