川北省吾のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『新書 世界現代史』は、地政学が好きな私には、期待通りに面白い一冊だった。
特に中東問題やロシア・ウクライナ戦争についての分析は鉄板。ニュースでは出来事だけが報じられがちだが、この本では、それぞれの国がどんな歴史や事情、国益を背景に動いているのかが分かりやすく整理されていて、日本にいては理化しにくい、彼らの行動原理を学ぶのに役立つ。
その中でもアフリカ系移民の影響で白人が駆逐されるという「人種置換」の話はかなりインパクトがあった。日本ではあまり意識することのないテーマだが、欧米では移民問題や政治にも大きな影響を与えている考え方であり、世界で起きている出来事の背景を知るうえで興味深かった。また、中国が歴史的に周辺国に対して優位性を示そうとする背景についても理解が深まり、現在の外交姿勢を改めて理解するのに役立つ。
気になる所として、民主主義の揺らぎやアメリカ一強時代の終わりを感じさせる論調が強い。確かにそのような世界の潮流ではあるが、私はまだアメリカの本質的な強さは簡単には揺らがないと思っている。経済力や軍事力だけでなく、イノベーションを生み出す力や世界中から人材を引きつける力を考えると、アメリカに並ぶ国は当面現れないのではないのでは?
この本は、国際情勢を善悪だけで語るのではなく、「各国にはそれぞれの論理がある」ということを今さらながらにおしえてくれる。タイトル通りの内容に、満足度は高かった。 -
Posted by ブクログ
なぜ世界はこんなにも急に「力こそ正義」へ傾いたのか——その問いに正面から答える一冊。国際ニュースの「なぜ」を腰を据えて整理したい人におすすめ。
著者は共同通信社の国際ジャーナリスト・川北省吾氏。ブリュッセルやワシントン、国連担当などを歴任した実務家が、政治学者・評論家・政治家らへのインタビューを重ね、ウクライナ侵攻・移民排斥・権威主義国家の台頭・トランプ2.0といった現象を、断片的な事件ではなく「構造的な原因」としてつなぎ直していく。
個人的に刺さったのは、アメリカ・ロシア・中国・グローバルサウスをそれぞれの「物語」(覇者の驕り、大ロシア再興、百年国恥、南の逆襲)から描く視点。さらに「2060年に白人の割合が44%に落ち込む」という予測を背景にした人種置換の不安や、SNSと情報工作が民主主義を揺さぶる構図にまで踏み込む。一つの正義ではなく、各国の被害者意識と歴史認識が衝突している、という整理が腑に落ちた。
ニュースを「点」で消費して疲れている人ほど、世界を「線」で捉え直せる。エピローグの「19世紀へ向かう歴史」という見立ては不穏だが、だからこそ今読む価値がある。 -
Posted by ブクログ
なぜかといえば、米国が勝ちすぎて調子こいて我は正義の価値観を力づくで押し通そうとして、散財しすぎて「警察」できなくなったこと。
自らも、綺麗事の理念で、崩壊しつつあること。
その隙に、いろんな「失地回復」が頭をもたげてきた。
結局、ルールって強制力がないと役に立たないということ。
ロシアはまだわかってやってるが、Chinaという異形が、台頭して来たこともあるのではないかと思う。
WW1当時の、勢力圏という考えに近い世界になったきた。
著者の、政治的な傾向がふっと見えるところに辟易するところはあったが、読みやすいしわかりやすい。
アメリカが、鼻持ちならない厨二な脳筋で敵と味方を常に間違えるような国なのだが、他の似たような国に比べれば時々ふっと正気を取り戻すので、まだマシなんだとは思っている。
日本は、持ち堪えられるだろうか。本当に心配。 -
Posted by ブクログ
ニュースを見ているだけでは真相は分からないと言われますが、ニュースを見ているだけでも、第二次世界大戦後に、平和を願って作られたとされる「国際連合」が役になっていないと感じます。
もっとも、国際連合とは日本での訳語で、英語でも中国語でも「連合国」のままですから、連合国のための組織なので、特に常任理事国が問題を起こしたら解決できないのは仕方のないことなのでしょうか。
この本のサブタイトルにあるように、第一次世界大戦の頃のような「力こそ正義」という時代になっているようです、この本ではこの本の著者の川北氏が、現代の世界史を解説しています、この本を頭に入れつつ、毎日のように飛び込んでくるニュースの解釈が自分なりにできるように努力していきたいものです。
以下は気になったポイントです。
・ 2013年9月10日の 「アメリカは世界の警察官ではない」という宣言は プーチンや 習近平 への 誘い水になったとの見方を示す (p18)
・アメリカ東部のワトソン 国際公共問題研究所の調査によると 9.11以降 テロとの戦い の対象は 80カ国を超え 戦費の総額は 8兆ドル(1230兆円)に上る、これは日本の 国家予算の ほぼ10倍である(p33)
・1991年にソ連が崩壊した時、 ウクライナ・ ベルラージ・ カザフスタン には大量の核兵器が残されていた、ロシアは 核兵器を引き渡せば、米英両国 とともに3カ国の試験や領土を尊重し 武力行使を控えると約束した、 そして3カ国はロシアを信じ 1994年に覚書に署名した、ところが20年後 ロシアは約束を反故にしてクリミアを併合した(p37)
・アメリカでは冷戦後のグローバル化に伴い 繁栄を支えてきた 労働者を中心とする中間層は痩せ細り 一握りの勝ち組と失業者に代表される大勢の負け組に 二極化していった、 転落したのは多くは社会の主流を歩んできた白人 であった(p58)
・1991年12月の初めに KGB も解体され26日にソ連 も 崩壊し 69年の歴史に幕を下ろした、 東西ドイツは1990年10月 西ドイツが 東ドイツを吸収する形で誕生した(p70)
・ 米ロの弾道 弾迎撃ミサイル制限(ABM)条約からアメリカは一方的に離脱する方針を発表した、アメリカは翌年の2002年 通告通り 条約から離脱した、 一方的なアメリカの脱退通告はもはや ロシアを対等に扱う必要はないということを意味していた(p80)
・ ABM条約からの 脱退(2002)、 イラク侵攻(2003)、 そして旧ソ連諸国への自由 拡大、 相次ぐ攻勢に耐えかね、アメリカと袂を分かつ最後のワラとなったのが「 ウクライナと グルジアの NATO 加盟に向けた決定」であった(p95)
・ アメリカの白人は2045年頃には人口の半数を割り マイノリティに転落すると見込まれている その日を見据えて 白人 用語の論陣を貼る人がいる(p185)
・ポリティカルコレクトネスとは、人種や 性別 性的嗜好に関する差別や偏見を避けるため、 言動に気をつける考え方である。政治的正しさ と訳され 特定の属性を持つ人々が不快感や不利益を受けないように配慮する、アメリカでは1980年代末から広がり始めた、 クリスマスの挨拶もメリークリスマスではなく、 非キリスト教徒に配慮して「ハッピーホリデー」と言ったりする、日本でも看護婦は使われなくなり今では 看護師と呼ばれる、 スチュワーデスは「 客室乗務員」と呼ばれる(p190)
・ 1960年代半ばまで アメリカは白人の国だった、 1956年 全人口に占める白人の割合は 89%であった 移民の国とはいうもののその内実は「ヨーロッパ系移民= 白人」の国であった、 移民法の改正により誰でもアメリカに来られるようになった、公民権法と合わせ 白人中心の世界が 瓦解 し始めた(p196)
・ ロシアが ウクライナへ侵攻した2022年 ドイツは260万人を超す 外国人がやってきた、 このうち120万人は出国したが 140万人以上がドイツにとどまった、 出国した 120万人の多くは 高等教育を受けており どこでも暮らせる 専門技術や能力を持った人だという、 ドイツにとどまった人は反対に 教育程度が低く ドイツ語を話せない人も多いと言われている(p211)
・国連憲章は武力攻撃を受けて自衛権を行使する場合を除き 他国への軍事行動には 安全保障理事会の承認が必要 と定めている、 プーチンはこれを意識して特別軍事作戦は「 自衛」のための行動と 演説で繰り返している(p269)
・ トランプを勝利に導いた 2016年のアメリカ大統領選挙は、労働者や農民、 非エリート らによる都市部へのエリートへの反乱 であった。グローバル化の負け組による「レコンキスタ=失地回復」 であった(p302)
・グローバル化はエリート層を潤し中国をはじめとする外国の経済発展に寄与したが、アメリカ国内の製造拠点は 人件費の安い国々に移り多くの 白人 労働者が仕事を失った、 リベラルな東部や 西部の沿岸部と保守的な内陸部の亀裂も広がっていった(p306)
・いくつかの 大国がそれぞれの勢力圏を形成するようになる「 勢力圏の世界」では 法の支配が常に尊重されるとは限らない、 弱肉強食の「ジャングルの掟」 が横行し「 力こそ正義」が、新常態(ニューノーマル)になりかねない (p316)
・アメリカのパワーを背景にした世界の秩序は 1945年から80年の長きにて続いてきたが それは人為的な仕組みであり 自然に 続いていくものではない、 日本は戦後 同盟 体制の一員として かなり うまくやってきたが アメリカが これからの80年も 特定の国々にこれまでと全く同じ保護を与え続けるとは考えられない、 どうすればいいのかということに対しては「 答えは自分自身で見つけなければいけない」ということになる(p318)
2026年8月21日読破
2026年9月26日作成 -
Posted by ブクログ
レコンキスタ(失地回復)をキーワードに、世界現代史を読み解く本。アメリカ、オバマ大統領の世界の警察を降りたと見なされる発言から、プーチンのウクライナ進行、中国の南シナ海への進出、BRICSなど日欧米以外の国の台頭などを描く。そして、そこから来る白人の焦りからトランプによるMAGAの流れを説明する。そして、それらはむしろプーチン、習近平が作り出した路線の延長であると。プーチンはしたたかにウクライナ、クリミア半島進行などで難民を欧州に流し込み、各国の不和、国内の衰退する中間層の極右化、ブレグジット、トランプ当選を演出していったと。
現代のことなので、これは歴史でなくジャーナリストによる取材からの仮説ではあれど、第二次世界大戦、そして冷戦後のバランスが崩れていることを示している。歴史の終わり の終わりから何が始まるのか… -
Posted by ブクログ
世界は長い歴史をとおして、戦争を反省し人権の尊重を学んだ、と思っていたのに、いつのまにそれとは逆に進んでいたのだろう?
本書は点でバラバラに知っていただけの歴史的事実を、線でつなげるように物語を読むようにわかりやすく教えてくれる。同時に、物語化によるわかりやすさが、権力の乱用や差別の正当化に用いられていることも。
民主主義のはずのアメリカと日本で強権政治を支持する人が増えている理由と、支持する人たちが感じている恐怖不安のようなものも少しわかった。賛成するかどうかは、さておき。
他にも、普段あまり情報が入ってこない南半球の国々が協力して力をつけている話も興味深かった。南半球のことより北半球のことが大事とと思いがちな自分に気づかされた。