軽部謙介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
金融エリート集団の日銀が金融素人集団のリフレ派に人事と権力を奪われていく過程がわかり面白い。
改めてリフレ派とは物価や経済活動は”所詮資金の量で如何様にもコントロールできる”信じる宗教集団だということが本書を読むとよくわかる。
以下、印象に残った箇所をメモ。
・黒田総裁2期目は「ワーストではなくワースの選択」だった。実は黒田以上に過激なリフレ派に日銀をのっとられるくらいなら、と黒田を推薦したのが当時の財務省だった。
・当時の財務省は安倍の政治的な強大さの前に、人事の重要性を認識しても、戦いを挑むことができない状況をあきらめと言っていた。
・そもそも財務省はリフレ派に対して極めて懐疑的だった。ある次官経験者はこう話す。「リフレ派は明らかにドグマ的であり信仰に近いものがある。したがって財務省はリフレ派には懐疑的。そのようなやり方で日本経済がデフレから脱却して正常化することはありえないと考えていた」
「財務省の中で、リフレ派については基本的にネガティブな見方が大勢だ。資金供給量を増やすことで物価上昇を実現しデフレ脱却を目指すという政策論としてのリフレ政策を追求すべきとの考え方を省内で大真面目に議論しているのを見聞きした覚えがない。財務省としてリフレ派の是非について経済思想的な立ち位置に照らしながら真正面からまとめたのも記憶にない。リフレ派の主張はその程度の扱いであったということだ」 -
Posted by ブクログ
【混沌からの落穂】2012年の総理就任と同時に,安倍政権の目玉政策となったアベノミクス。その政策の成立過程を追いながら,現代日本の政治システムの内側を垣間見た作品です。著者は。時事通信社で解説委員等を歴任した軽部謙介。
これは名著。政策決定プロセスを考える上でももちろん有益ですが,特に後半に描かれる,政権と日銀の距離感に関する記述と考察が白眉です。新書というとコンパクトかつ軽めの媒体という印象も与えられてしまいがちですが,本書は日本政府の内側にぐりぐりと迫った力作だと感じました。
〜政権がつくられるとき,その政党は特定の政策を実施しようとする。そして,その政策をつくるという意思は,首相→各閣僚→各省庁という形でおりていく。国家意思の貫徹だ。日銀はこのような政治家の意思が貫徹していくべき対象なのか。〜
帰国に伴って久しぶりに読んだ紙の本☆5つ -
Posted by ブクログ
ノンフィクション小説のような出来だ。基本的に、筆者のいうとおりアクター(それも政財界エリートの個々人)中心の分析・描写。よくここまで細部にわたり取材しストーリー状に上手く繋ぎ合わせたものだ、と脱帽してしまった。
前半は凋落の日々を送る民主党政権と、その下で「裏切る」官僚たち、彼らと取引する自民党幹部。中盤以降は、アベノミクス(の「2年で名目物価上昇2%」)に抵抗する最期の砦たる日銀と、前線で戦う財務省。財務省の持ち帰った妥協を睨む内閣府や政権上層部…。本書には登場しないけど、個人的には当時の日経一面の「白から黒へ」見出しを懐かしく思い出した。後半では、陥落した日銀の次に厚労省が登場。年金基金を国債だけでなくより活発に運用せよ、と包囲攻撃される。いずれも非常にドラマチックで、何だか「シン・ゴジラ」を思い出した。
著者は、優れた小説家にもなれるだろう。やはり、ジャーナリストによる新書というのはエンタメ的な面白さがある。
したがって、当然ながら、政治学や経済学などの学術的な分析(制度的・構造的分析含め)を目的とする書物でない。通常は、因果関係の厳正な究明という観点から本書に価値を見い出そうとすることはなく、あくまで事実確認のための一参考資料の程度に留まるだろう。
アベノミクスは金融政策とトリクルダウンを念頭に置いており、新自由主義的側面がある。ただし、アベノミクスには財政政策や賃上げへの国家介入などの側面もあり完全な新自由主義でもない・・・といったことを思い出しながら読んだ。 -
Posted by ブクログ
安倍政権が終わり、今まで表に出すことが出来なかった政権の内実がいろいろと表に出てきているが、それらの中でも、本書は詳細さと読みやすさともに秀逸である。
「官製春闘」についても、連合と経団連の戸惑いと動き、内閣府と官僚の思惑など、当時の新聞で知り得なかったことが息づかいまで分かるように思えた。
それにしても国家と経済の運営というものは、実に巨大システムであるがゆえに単純ではなく難しいものであると思った。
結果的に官製春闘では賃上げは微々たるものに終わったわけだが、賃上げの必要性は認識していたということなのだろう。政権後半では賃上げに言及することもなくなっていたと記憶しているが、本書の「政策が選挙戦略として使われていると考えるとわかりやすい」との証言には脱力した。
本書を読んで思ったことは安倍・黒田氏には芯となる哲学がないということだ。やはりそれなりの地位にあるエリートには自らの言葉に責任をもってもらいたいものである。 -
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「アベノミクス」という経済政策がどのようなプロセスで形成されたのかを克明な取材により明らかにした『官僚たちのアベノミクス』の続編であり、2013年半ば以降の「その後のアベノミクス」の軌跡をたどっている。具体的には、政府による賃上げ介入、内閣人事局の設置、消費税増税の延期、為替市場への介入未遂などについて取り上げている。
前作に引き続き、第2次以降の安倍内閣の経済政策がどのように形成されているのか、その舞台裏を垣間見ることができる貴重な一冊である。本来、黒衣でありなかなか表に出てこない官僚(特に財務官僚)や日銀職員の動きを具体的に知ることができたのはとても興味深かった。
本書は、内容が克明であり真に迫っているとともに、読み物としても面白く、著者のジャーナリストとしての取材力、文章力に敬意を表する。 -
Posted by ブクログ
周囲に本好きの人は多いが、N先輩はその中でも群を抜いている。
どんな本を読まれるのかお聞きしたら、歴史から医学、財政、福祉、ノンフィクションまで、幅の広さに圧倒されてしまった。「面白そうだから読んでるだけ」と謙遜されるが、忙しい職にあっても新しい本に挑戦される姿勢は見習いたいものだ。
N先輩からご紹介いただいた1冊。
安倍内閣の経済政策アベノミクスは大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の3本の矢からなる。本書は、第一の矢である金融緩和が、自民党の選挙公約から日銀の政策となっていく過程を、2012年9月の自民党総裁選から翌13年3月の日銀総裁辞任まで辿ったノンフィクションだ。
印象的なことが二つある。
一つは、言葉の扱い方が丁寧なことだ。金融緩和して達成すべきインフレ目標を政府・日銀の共同声明としてまとめるにあたり、財務省と日銀の担当者が協議する。目標2%の明記や達成時期、日銀の説明責任といった点について言葉一つ一つ議論を重ねる。そのやり取りは、似た仕事をしている立場からみても非常にリアルだ。交渉当事者に丁寧に取材し、彼らの意図を正確に理解しなければ書けないと思う。
二つ目は、官邸と日銀の間では結局、実質的な政策議論はされなかった点だ。首相の意思を実現しようと圧力をかける内閣府と「インフレ達成は日銀の仕事ではない」という立場に固執する日銀。もう少し日銀が政権の意図を理解し柔軟に対応していれば、もう少し官邸側が日銀の役割に配慮していれば、違う結果になったと思う。本書の守備範囲ではないが、首相の意向実現のため官邸職員が担当省庁に圧力をかける手法が常態化したことが後日、数々の疑惑を生む土壌につながったのではないかと思う。
いずれにせよ、本書はアベノミクス自体の是非ではなく、その形成過程を記録するスタンスを貫いたことで、政策決定に携わる人間にとって優れた参考書となった。N先輩に感謝。 -
Posted by ブクログ
アベノミクスの開始から5年。やっとインフレ2%目標の旗を下ろした。マネーの流れを変えるだけではデフレを抑えるのは無理だった。
残されたのは日銀の大量の国債の保有、国の大借金。景気は少し良くなったかもしれないが、富の集中が進み、庶民の大半は景気の改善の実感がない。
確かに失業率は改善されたが、非正規雇用者が拡大しただけ。この低所得者層は何の蓄えも無く、将来の生活保護受給者予備軍でもある。
特定秘密保護法や安保法などの悪法が推進され、オマケに安倍は憲法改悪を掲げ、総裁3選が確実視されている。
こんな安倍に国民の多くは消極的な支持をしている。もっと真剣に日本の将来を一人一人が考えないといけない。