住田祐のレビュー一覧
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ネタバレかつてバラエティ番組で北嶺千日回峰行を目にし、自らの命をかけてまで人を修行へ駆り立てるものは何なのかと気になり、本書を手にした。
命がけで、失敗すれば自害を求められる北嶺千日回峰行の過酷さは想像以上だったが、いちばん心に残ったのは、それを経験した人の心のあり方だった。とりわけ印象深かったのは恃照である。戒閻を疎ましく思い、この修行さえ失敗すればよいと願っていた恃照が、戒閻にかつての自分を重ね、いつしか達成を願うようになる。その変化が深く心に残った。
極限の修行は人をただ強くするのではなく、見たくなかった弱さや醜さも含め、自分のすべてに向き合わせるのだと思う。エピローグで恃照が再び北嶺千日 -
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ネタバレ実家から毎日眺めていた比叡山を舞台にしたお話。
めちゃくちゃ面白い。
仏の道に入り、ともに千日回峰行を為さんとする恃照と戒閻の2人の人物を中枢に、彼らの同族嫌悪に近い厭悪や確執が、叡山という因循姑息な組織の上でどんな顛末を辿るのかを描いた小説。
規則という柵の中で死ぬことが許されず、恥を晒して生きてゆくしかない恃照にとって、出生を近くしながらもずんずんと自らの道を突き進む戒閻がどれだけ嫉ましく厭わしかったか、そしてどれだけ憧れ、堂入りを満することを願ったか。
長きに渡って、確執という殻の中で育まれてきた戦友同士の同情と信頼が一気に弾け出るラストシーンには、胸を打つものが大きかった。 -
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白鷺(はくろ)とは 白い浄衣を纏い 山道を跳ぶように歩く 叡山における回峰行者を指して用いられる比喩である─。
寛政8(1796)年 比叡山 延暦寺。
成し遂げることができなければ “死” とされた〈北嶺千日回峰行〉に挑む32歳の恃照。
彼は ある特殊な生立ちを抱えていた。
そしてその後 恃照は自らと同じ境遇をもつ17歳の太之助を弟子として預かることになる──。
「この世には おらぬはずの者」
恃照と戒閻(太之助)。真逆のようでいて、抱えている屈託は同じもの。
戒閻を目の当たりにすることで 恃照は自らの心の奥底を覗かざるをえなくなる。
俗世から隔離された場所ではあるけれど そこ -
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第32回松本清張賞
圧倒的!!
作中に漂う厳粛な空気や緊張感、僧たちの胸に潜む熱、仏道の世界観に触れる読書体験ができた。
仏教用語や独特の難しい言い回しがあるのに、読みやすく心地よい文章で、前半からこれは!と星5を確信。
一見地味そうな僧の修行の話なのに、ささやかなユーモアもあり飽きることなく没入した。
千日回峰行はとんでもない荒行。
人って、水も飲まないと3日くらいしかもたないんじゃないっけ?
不眠も死んでしまうんじゃないっけ??
医学的に無理だと思うし、そんな危険な修行をすることになんの意味が、、、と全く理解はできないけどすごい世界を見てしまった気分。
寺院と朝廷が深く結びつき、寺院 -
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他には無い、特殊かつ絶対的なルールを持った、閉じられた世界を舞台にした歴史小説なんですけれど、読んでいく内に本書は特別な環境で生きることを余儀なくされている、現代の人たちにも響くものを感じながら、尚且つ生きる勇気が沸々と湧き上がってくる、そんな力があるのだと思います。
江戸時代の比叡山延暦寺にて千年もの歴史を刻み続けており、これを満ずれば大阿闍梨という高僧の称号が与えられ後進の僧侶を導く立場となる、過酷な仏道修行「北嶺千日回峰行」では、大阿闍梨となれるか死ぬかの二択のみで、決して例外など起こり得ないと思われていた中、それが起こってしまったのは『特別扱いされた』という事情があったのです。 -
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叡山の苦行、北嶺千日回峰行を為さんとする2人の僧の物語である。達成できなければ自害という過酷な千日回峰行にあと一歩というところで昏倒し失敗した恃照。女帝後桜町天皇の実子という出自のため、朝廷を恐れて自害を忌避、半行満という待遇を与えられ生き延びた恃照。その恃照の弟子として預けられたのが先帝御桃園天皇のご落胤だという太之助。ともに存在を公にはできないこの世にはおらぬはずの者だった。戒閻と名を改めた太之助もまた北嶺千日回峰行を満行し大阿闍梨となることを望んでやまない。生きた証を求め千日回峰行に囚われる戒閻と師の恃照は半目し憎みあい、しかしやがて共鳴する。
そんなお話。
過酷な修行の描写は鬼気迫っ -
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北嶺千日回峰行は、失敗(行不退)となれば自死が避けられない荒行だ。成功すれば僧侶としての格は上がる。帝の血を引く恃照(じしょう)は比叡の立場としては死んでもらっては困る状況ではあるが恃照は最後の最後で行不退となる。特例で死なずにすんだ恃照である。そしてこの同じく帝の血を引く戒閻(かいえん)が比叡の預かりとなる。反目し合う恃照と戒閻であり、特に戒閻は自分の血を呪うかのように荒行へと入っていく。この二人の関係はライバルと言えるのかもしれないが、なかなか普通には理解できない極限状態の中での人間関係である。そこにもしかすると何かを超えたものがあるのかもしれない。