住田祐のレビュー一覧
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松本清張賞
直木賞候補作
直木賞候補作ということで読む。
比叡山延暦寺に今でも残る北嶺千日回峰行という過酷な仏道修行。
これを満ずれば、大阿闍梨という高僧の称号が与えられる。
もし直木賞候補にならなかったなら、仏教の難しい言葉にひるんで読むことはなかっただろうが、意外に読みやすい。
北嶺千日回峰行についても、わかりやすく書かれている。
主人公とその弟子のいがみあいや葛藤、比叡山の高僧たちのいやらしさがこれでもかと著されていて、文章もうまく、なるほど直木賞の候補となったのもわかる気がした。残念ながら選ばれることはなかったが。
これがデビュー作というのも驚いたが、このまま書き続けられる人か見 -
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第174回直木賞候補作の中で、最後に読んだのが『白鷺立つ』でした。
そして読み終えた今、はっきりと言えます。
最後に読んで、本当によかった。
しかも、著者の住田祐さん、会社員でデビュー作とは!!
小説の完成度もかなり高いのですが、プロフィールにも驚きを隠せません!!
ちなみに、「白鷺」とは文中にこのように説明がありました。
”白鷺とは、叡山における回峰行者を指して用いられる比喩である。”
物語の舞台は江戸中期。
比叡山・北嶺千日回峰行を軸に、二人の僧侶――恃照と戒閻の、静かで激しい憎悪劇が描かれます。
比叡山の修行が苛烈であることは、以前から耳にしていました。
けれど、この小説で描かれ -
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ネタバレ憲雄は恃照に戒閻という人生の張り合いを持たせたのだと思う。憎んでいる人間の一挙手一投足というものは、好きな人間のそれと同じくらい視界に入るものである。だが作中でも恃照が言うように、憎むべき存在の戒閻に、心のどこかでは羨望の眼差しを持ち、彼の行く末を見届けたいと言う思いがあったとも考えられる。戒閻がいなければ、恃照は早い段階で自死していたかもしれない。
戒閻は恃照を嫌い、また憎んでいたけれども、それは彼に己を重ねていたから。同じ血を流しながら、阿闍梨になれず、また死ぬこともできず、ただ残りの人生を消費しているだけの人間に、己の運命を重ねて見てしまった。故にこれまで途絶していた恵光坊流を復活させ -
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これはちょっととんでもない作品を読んだかもしれない、と読後、感嘆の息が漏れてしまいました。
物語は十八世紀末頃からはじまります。平安朝前期に明王堂を開基した相應和尚以降、千年の歴史を持つ天台宗の荒行、北嶺千日回峰行にひとりの僧が挑むものの、行の途中で倒れてしまう。僧の名は恃照。大行満大阿闍梨にその名を刻むための行において、最後までやり遂げられなかった者は、自らの命を絶つ、という決まりがあったが、恃照には周囲には言えないある出自の秘密があり、特例として『汚名』とも呼べるような『名誉』を授かるとともに、死ぬことが許されなくなってしまう。やがてそんな彼は、ひとりの弟子を持つことに――。
荒 -
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死出紐を腰に付け山野を駆け巡り、失敗したら死ぬしかないという千日回峰行に以前から興味があった。
いつだったか、新聞の書評でこの本を知り、手に取った。
険しい行者道に丸太や大きな岩が転がっているように所々に特徴的な読み方をする用語が転がっていて、それを跨いでくぐって読み進めねばならないが、しかしストーリーはまさに行者が山野を駆け抜けるが如く、緊張感とスピード感のある筆致で、ぐいぐいと引き込まれてほぼ一気に読み切った。
千日回峰行という密教の秘儀をわかりやすく説明しながら、ストーリーを展開するのは難行だったのではないかと推測するが、膨大な取材に裏打ちされていることを感じさせつつも説明っぽさや理 -
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自らのアイデンティティのために命を懸けて苦行に挑む2人の仏僧を描いた作品で、重厚な歴史人間ドラマとして堪能させてもらった。
聖職者であるにもかかわらず、千日回峰行を満行して名声を得たいという、煩悩以外の何物でもない欲望を隠そうともしないキャラクター設定が面白い。
デビュー作で熱量たっぷりにこれだけのものを描ききったのは凄いことだと思う。
しかし読後は意外なほど印象に残らず、なぜかと考えたが、2人が憎しみ合う理由が出自と私怨というプライベート寄りの内容で、感情移入しにくかったところがあったためかもしれない。
それは自分が時代小説を読み慣れていないからかもしれず、時代小説好きの読者であれば印象は