井上勝生のレビュー一覧
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2021年8月1日幕末・維新☆☆☆井上勝生
近現代史はかくあるべしという一書 少なくとも大学では必読 歴史は暗記科目ではなく、人間の営みが歴史を紡ぐ不思議さ・面白さ
1.歴史も科学 政治的思惑で歪曲されがち 権力者が歴史を書く 本書は日本史の教科書の通説を検証し、「権力バイアス」を修正する
ex 江戸幕府は無能 国益を害し 天皇・大名を蔑ろetc
江戸幕府官僚は優秀 しかし時代の変化には不適合 歴史の不思議
あれだけ世界情勢に通じ、対策を講じながら 裃・ちょんまげ=身分制度は不変
開国も貿易の拡大(生糸・茶)は経済にプラス
2.「国民皆兵」は革命 武士=士族体制の否定
身分制度をリセットす -
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岩波新書の「シリーズ日本近現代史」は吉見俊哉『ポスト戦後社会』,成田龍一『大正デモクラシー』についで3冊目。
先の読書日記でも書いているが,北海道の近代化について勉強し,さらにはその内容で講義をするにあたって,日本自体の近代化についての知識不足を痛感し,急いで読んだ1冊。このシリーズは岩波らしい著者の選出で,一般的な広範な知識の伝達よりもより突っ込んだ歴史の本質を追究するようなところが面白い。といいつつ,先に読んだ2冊はその特徴故にか,いまいちな読書感だったのに対し,本書はなかなか楽しめました。
私は西川長夫氏の近代国家論で日本の近代化について知った気でいましたが,改めて読み返してみると,細か -
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ネタバレ幕末、ペリー来航から始まるこの本が記してくれているのは、明治時代の西南戦争くらいまでの国家の混乱状況である。僕らが普段中学・高校で学ぶ日本史と言うのは、外国に脅かされる日本。英仏の実力の前に屈服する薩長。大政奉還、そして突然現れる明治天皇、程度ではないか。
しかし、非常に複雑な利害関係の中、幕府・朝廷・藩がそれぞれに暗躍するわけだが、実際は当時の欧米から見ても全く遜色ない外交により、諸外国の影響を抑える幕府と、血統などやや浮世離れした主義主張により攘夷を掲げる孝明天皇という構図が見える。そこに長州や薩摩などが複雑に絡まる。
面白かった!特に、江戸時代のシステムがいかに合理的かつ近代的だっ -
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ネタバレ勉強になりました。
世界から見た幕末、明治維新の日本が描かれています。
よくある明治維新の概要を見ると幕府が何も考えずに不平等条約を結んだという理解になってしまうことが多いと思います。実はそうではなく、当時の幕末の現場には優秀な人がたくさんいて、その人達の努力によってできる限り良い内容になるよう交渉し条約を結び、結果不平等になった面もある、ということだったんだなと理解できました。現場の人たちの働きぶりがよく描かれており、イメージが沸きました。
その時日本はこうしたけど、世界の情勢から見ると実はこういう状況だった、という事もありました。やはり常に世の中に目を向けていくということは重要だなと -
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自分のすぐ近くにある物語との出会いは、嬉しく、また有難い。これをお貸し頂いたのは仕事の古く永い先輩であると共に、ぼくの中に北海道愛を最初にインジェクトしてくれた方である。本書の作家・浮穴みみも千葉大仏文科卒だが北海道生まれの作家である。本書は北海開拓に纏わる人たちを絡めた美しくも逞しい短編集である。
『楡の墓』タイトルにもなっている最初の短編は、札幌市に堀を引いた初期開拓の責任者である大友亀次郎。札幌市東区に彼を記念する郷土資料館があり、それを偶然にも先月だったかぼくは訪れている。また大友がトウベツの開拓に関わろうとした経緯など実に興味深い。
『雪女郎』続いて北海道神宮にゆくとガイド -
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<目次>
はじめに
第1章 江戸湾の外交
第2章 尊攘・討幕の時代
第3章 開港と日本社会
第4章 近代国家の誕生
第5章 「脱アジア」への道
おわりに
<内容>
岩波新書の歴史シリーズの近現代史編の第1巻。購入は2006年だが、たっぷりと醸造していました…。
しかし、江戸時代の社会の成熟を評価し、尊攘派の理論が「感情」以外に何もない、幕府側の方が大義名分もあったとする考えや、明治政府への従来の評価=近代国家を作り上げた、も一方的で、成熟していた農村社会を「西洋」の近代国家にするために犠牲にしていった(それも薩長閥の考えていた皮相的な西洋近代国家観で)ことがわかった。
江戸時代のまま -
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歴史ものの新書全般に言えることですが、本書もノンフィクション以上研究書未満という感じで、やや歯ごたえのある内容です。
実証史学の方法に基づいて、ペリー来航から西南戦争までのプロセスを描きだしており、よくまとまった良書であると感じます。
特に、これまでの通説に疑問を投げかけ、検証によって異なる結論を提示してゆく方法はまさに「史学」であり、興味のある方にはお勧めしたい本です。
しかしながら、その分ノンフィクションを読むような面白さには欠けており、薩長同盟の成立や勝海舟と西郷隆盛の会談などのいわゆる歴史上の「名場面」についてはごくごくあっさりした事実のみの記述に留まるため、人によっては小難しく -
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本書を読み終えた方は、この「幕末・維新」の時代を、学校で教わった時とは違った印象で見るようになるのではないでしょうか。
開国に端を発した尊王攘夷運動は、「古い体質の旧幕府側」と「天皇を中心として新しい日本を作る維新側」という二つの勢力が対立しているという構図で見られがちです。この本では、その裏側で幕末、朝廷、雄藩がそれぞれどのような思惑を持ち動いていたかがわかりやすく描かれています。
幕府側の堅実性と朝廷・雄藩側のムチャクチャぶりを見ると、明治維新が「現政権を転覆させる革命」だったということがよくわかります。
日米和親条約の幕府側の意図、明治維新の薩摩長州の策略など、「そういうことだった -
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歴史はドラマではなく、
主人公や英雄が物語を紡いでいくのではない、ということ。
それぞれの側面から見れば愚かな事であったり
誠の行いであったり。
きれいな美しいだけの歴史はこの世界には無く、
それぞれの命や血や呪詛や正義や願いの流れなんだろうな、と。
新政府のやった事を否定したり賛成したりする前に、
もっと詳しく歴史を知らないとなあ、と思った。
この歴史書は側面だけでは見え方が偏りますよ、
と、言ってるようにも思う。
でも、前から少〜し思ってた事は、新政府って、
「侵略」を断行し過ぎてる、でしたが、
あながち間違ってなさそうな気もする。
あれほど日本各地で一揆が起こっているのだし。
あとも