井上勝生のレビュー一覧
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ネタバレ[ 内容 ]
黒船来航から、明治維新へ―激しく揺れ動いた幕末・維新とはどういう時代だったのか。東アジア世界に視点をすえ、開国から西南戦争までを最新の研究成果をとりいれて描く新しい通史。
従来から「屈服」したと言われてきた幕末の外交を再評価し、それが成熟した伝統社会に基づくものであることを明らかにする。
維新史を書き直す意欲作。
[ 目次 ]
第1章 江戸湾の外交(黒船来航 開国への道 二つの開国論)
第2章 尊攘・討幕の時代(浮上する孝明天皇 薩長の改革運動 尊王攘夷と京都)
第3章 開港と日本社会(開港と幕末の民衆 国際社会の中へ 攘夷と開国)
第4章 近代国家の誕生(王政復古と「有司」専 -
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「歴史は勝者の記録」とはよく言ったもので、その勝者の記録に惑わされずに史実を明らかにすることが歴史家の役割と言えば役割なのだが、それがなかなか難しい。この「シリーズ日本近現代史」は、どの巻も従来の歴史観にとらわれずに、日本の近現代史を再評価しているところが特徴だが、この第一巻「幕末・維新」からして、その特徴は明らかだ。
軟弱卑屈、無為無策な幕府外交に対して、正論を掲げる朝廷、天皇が浮上するという「物語」を、様々な史料をもとに「事実と異なる」と一刀両断し、明治維新を無知蒙昧な天皇を担いだ少数派のクーデターであると断言する。勢い、琉球やアイヌの弾圧、台湾出兵、征韓論と江華島事件へと続いていく神国 -
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明治維新は、全くの革命ではない。江戸時代末期の経済の発展があればこそ、その後の貿易の発展があった。民衆からの訴え、合議制度の発達、一揆などにより、民主主義への地ならしがされていた。当時の幕府の外交は国力、軍事力、経済力、国際情勢を踏まえた現実的な判断であった。海外情報をオランダや中国経由で的確に把握していたことも驚きである。維新期の様々な戦乱は攘夷派・開国派の複雑な政治的駆け引きによって巻き起こされたものである。明治政府の政策は必ずしも素晴らしいものばかりでなく、民衆や貴族・士族(華族)に大きな負担を強いるものであり、多数の大規模一揆が発生している。これまでの「江戸時代=暗黒」「明治時代=開明