白石正明のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「ケア」と「編集」には類似性がある。
それを述べていく本だとのことだが…
著者の白石さんについてはまったく知らなかった。
福祉系の出版社から医学系の出版社に転職。
雑誌「精神看護」、ケアをひらく〉のシリーズを立ち上げた、とある。
〈ケアをひらく〉といえば、東畑開人『居るのはつらいよ』、国分功一郎『中動態の世界』、伊藤亜紗『どもる体』…。
えっ?この本にも、この本にも関わってるの?と、何度も驚いた。
カリスマ編集者じゃないか。
しかし、文体は軽く、読みやすい。
医学とケアは方向性が違う。
原因を取り除き、将来の治癒、改善のために現在に(時に苦痛を与えて)介入するのが医療。
一方、ケアは現在志向。
患者が今を乗り切ることに注力する。
医学系出版社で、看護(医療領域だけど、ケアを担う)や、介護の本を企画するという特異な立ち位置にいる人は、こういう違いに敏感になれるのだろう。
「編集的思考」は、たとえば図と地のずらし(編集はこういうことをしばしばする。松岡正剛さんの編集術でもこれにふれていた)によって、ある問題に別の角度から光をあてる。
本書でもこのような見方の転換により、ある心の病に苦しむ人に対し、病巣を取り除くことより、その病があなたを成り立たせているのだから、あなたと環境の組み合わせを変えればいい、と考えることになる。
筆者にこういう気づきを与えたのは、統合失調症の人たちの作業所、浦川べてるの家の実践にあるということだった。
驚きの思考方法。
一瞬、それは問題を弥縫しているのではないか、と思うのは、やはり自分が一般人でありながらいつのまにか「医療的編集」に取り込まれているからなのだろう、か。
が、老化のように、原則として治ることが期待できない症状には、この考え方は必要だと理解できる。
もうひとつ、新たな視点を与えてくれたところがあった。
依存の話だ。
本書でも出てくる熊谷信一郎さんが「自立とは依存先を増やすこと」と書いているのを、以前どこかで読んだことがある。
本書では、その話を延長して、「依存症は依存が足りない」という。
つまり、依存できる先が一つしかないのが依存症だというのだ。
しかし、これを「弱さを克服する」物語に当てはめていくのではなく、視点を変えて弱いことを肯定すると、周りを巻き込む力を見つけ出していけたりする。
現場を知らず、本を通してしか知らない自分にとっては、実感を持った理解がどこまでできているか心もとないが、視点の転換が世界を変えることの可能性を信じてみたい気持ちになる。 -
Posted by ブクログ
ノンフィクションでおすすめされていた記事を読んで。
ケアをひらくのシリーズの編集者さんだったのか。なんで岩波新書?と思っていたが、あとがきを読んで納得。むしろ、ずっと残るだろうから単行本よりも正解かもしれない。
様々な価値観のあるジャンルで、自分なりに都度咀嚼して見解を綴れる人がそもそもすごいと思う。
本も映画も飲食店ですら、口コミを見て、引っ張られてしまうことも多い。すごくいいなと思った本でも、酷評されていたら、モゴモゴと仲間内にしか勧められないこともある。
とりあえず、ケアをひらくで読めていなかった「逝かない身体」を読んでみたいと思った。ALSの方の話がこわくて辛そうでこれまで読めなかったので。
あと、本作では、パニック障害の方などのフラッシュバックの時間軸の話がとても参考になった。
友人から体験を聞いたことはあったけど、まさに「過去に水平移動」しているイメージだった。
日常的な時間の流れの下層に、トラウマ的時間も同時に流れていて、レイヤー(層)が異なるように、穴に落ちるように垂直的な一瞬の変化なのではないか、という。
それで、いつレイヤーがひっくり返るかと思っていたら日常生活もおぼつかないだろう、というところで、ようやく友人の話がクリアになった気がした。