フアン・ルルフォのレビュー一覧

  • ペドロ・パラモ

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    文体と物語、過去と未来、生と死、全てが渾然一体となっている。独特の読み味に病みつきになって、いつまでもコマラから出たくなってしまう恐れがあるので注意。

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    2021年06月02日
  • ペドロ・パラモ

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    初読は高校の課題図書。

    メキシコの片田舎、父を探して主人公がたどり着いたのは死者の町だった・・・といった話なのだがストーリーは当時全く意味不明。ただ、砂ぼこり舞う真っ白な道、陽炎に揺れる怪しげな街、という描写は異様に頭に刷り込まれている。
    「燃える平原」にひっくり返り再読。

    2017年12月14日付The Economistによると、魔術的リアリズムの元祖でもあるルルフォは、実はフォークナーの影響を受けているらしい。あれだけ土俗的なラテン・アメリカ文学が北米の作家の系譜に連なるのも意外と言えば意外。

    “The reader gradually realises that all the

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    2019年01月03日
  • ペドロ・パラモ

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    2008年11月27日~28日。
     結構な数の登場人物。男も女もいる。ほとんどは死者。そんな死者が時空をあっちこっちヒョイヒョイと駆け巡る。語り口も一人称からいきなり三人称に変わったりする。最初は面喰う。
     それぞれの断片が大きな流れになって物語を織りなす。そして最初に戻る。終わらない。ウロボロス。
     ちょっと気を抜くと振り落とされるか迷子になるかおいてけぼりを食らう。でも心配はない。一度はまってしまえば気を抜くことも許されない。
     間違いなくもう一度読み返すだろう。久しぶりに心底面白い作品に出会えた。

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    2018年01月06日
  • ペドロ・パラモ

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    「たくさん悪いことをしたこの地上からあの男を連れていってくださった神様に感謝しよう。いま天国にいるかもしれないが、ま、そんなことは問題じゃない。」

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    2017年03月11日
  • ペドロ・パラモ

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    ネタバレ

    ささ‐めき【私=語】
    ささめくこと。ひそひそ話。ささやき。また、男女のむつごと。
    「貴妃の―、再び唐帝の思ひにかへる」〈海道記〉

    初めてこんな言葉を知ったが、これほど的確にこの小説を表す一言はない。
    ささやく。ひそめく。
    まずは翻訳の文体の素晴らしさ、語のセレクトの素晴らしさ。
    少ない文字数から滾々と湧く抒情。

    次に構成のしかけ。
    ただシャッフルしているのではない、ひとつの言説が連想を呼び過去を掘り起し広がり深くなる。

    最後に語られる内容。
    極悪な奴なのにスサナへの思いが、たまらなく切ない。
    すべてを手に入れようとしてそれだけ手に入らず。

    これだけの男の行き詰まりは街の行き詰まりを呼び

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    2014年02月13日
  • ペドロ・パラモ

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    ネタバレ

    奥深い、底知れぬ物語。
    死んだ男をめぐる噂話が、死んだ人間たちの間で語られ、死んだペドロ・パラモの人物像がうすぼんやりと形作られていく。伝え聞きの集合体として物語が建設されており、それらを細胞に、町の盛衰が語られる。鮮やかな小説。
    ガルシア=マルケスに「百年の孤独」を書かせた小説という、ある意味で究極の評価を得ているようだが、そういう文学史的注釈を抜きにして面白い。

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    2016年07月03日
  • ペドロ・パラモ

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    死者が埋葬され土と石に帰るのなら、私たちは堆積した死者の上に生きているのではないか。彼らの記憶も積み重なり、それは時間の進行という枠組みを超えて断片的に交差する。本書が南米文学の起源であると同時に到達点だと言えるのは、決して循環する構造が故だけではない。土地と血縁、そして革命と血生臭いモチーフが用いられているのにも関わらず、それらが全て断片的な構成として提示されるからこそ幻想的な魅力を帯びてくる。死者の記憶に耳を傾け続けることが生者の努めだとするならば、本書はまるでレクイエムそのものなのだと言えるだろう。

    (2013/10/08追記)
    再読。積み重なる死者の記憶が印象的な故に初読時はレクイエ

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    2013年10月08日
  • ペドロ・パラモ

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    どういうわけか、自分の周りに大きい鳥が無数にいて、ばさばさと羽をばたつかせ風で煽られているところを想像してしまった。そのばたつかせた羽から向かってくる風が本作で扱われる「死」のようであり「時」のようであり、鳥菌やら砂埃やら乗せてばさばさと私の顔やら体やらにぶつかって過ぎ去って行く。鳥は無数にいるのであちこちから風はやってくる。それは一定のリズムを保っていない。顔にも風はくるので、つい顔をしかめてしまう。しかめると言っても不快だから、というのではなく奇妙だからである。鳥菌にやられてお熱。

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    2011年03月03日
  • ペドロ・パラモ

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    ラテンアメリカ文学において、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』と並ぶ傑作だそうで。

    そこまで分量があるわけではない中篇だが、夜中に読み始めたにもかかわらず、どうしても止められなくて一気に読み切った。

    読むのを止められなかったのは、複雑な構成なので間を開けたくなかったこともあるが、何よりもこの独特の世界観に浸り続けたかったからだ。

    会ったことのない父親ペドロ・パラモを探して訪れた田舎の街でのファンに起こる出来事を中心に描かれるかと思いきや、話は過去にも飛ぶし、目の前で話している人間が読み進めていくと死者だったりする。

    70の断片からなる物語だそうだが、その断片は時間軸も、生死の境も、すべ

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    2011年01月03日
  • ペドロ・パラモ

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    何度読んでも心が震える。この物語が終わってしまうのがもったいなくて、ゆーっくり、ゆーっくり読む。訳も素晴らしいと思います。映画化されているそうですが、この世界をどのように映像化しているのかという興味はあるものの、こわくて観られません(恐怖ではなく)。

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    2010年06月17日
  • ペドロ・パラモ

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    顔も知らない父親、ペドロ・パラモを探しに来たファン・プレシアドがたどり着いたのは生者と死者の交わる町だった。町をさ迷ううちにファン・プレシアドも息絶え、墓の中で死者たちは囁き続ける。
    ペドロは冷酷な地主だった。町は発展するが、ペドロが唯一欲したのは、幼馴染のスサナだけだった。30年ぶりに再会したスサナは精神に異常をきたし、父親とは近親相姦にあった。スサナを手に入れたペドロだが、二人はまともに言葉を交わすことも出来ない。スサナの死後ペドロは町を荒むに任せる。数年後、ペドロの私生児の一人がペドロを殺す。ペドロは乾いた石の様に大地に倒れ、その数年後、ファン・プレシアドがペドロを探しに町へやってくる…

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    2020年02月05日
  • ペドロ・パラモ

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    再読&模写。
    これは・・・読めば読むほど言葉を失ってしまう。二回読み、すべて書き写して、断章ごとに分析して、圧倒される。そしてもう一度読む。
    書き写すと、非の打ち所の無い簡潔な文章と精密機械の設計図のような構成が身にしみて感じられ全然苦じゃない。
    何度読み返しても永遠に「発見」し続けることのできる作品。そう断言できるくらい細かいからくりが多い。
    20年かけたという翻訳も凄まじいできばえであるが、この原文を堪能せんがためだけにでもスペイン語をはじめたくなる。
    うわー、ベストなんかなあ、これ、ベストかもしれん!

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    2009年10月04日
  • ペドロ・パラモ

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    ネタバレ

    ラテンアメリカ文学の金字塔的作品。
    ストーリーを断片化させることで、徐々にペドロ・パラモの人物像が浮かび上がらせていく精緻な構成が凄すぎる。
    ガルシア=マルケスの「予告された殺人の記録」と同様、すでに荒廃した過去の街を郷愁を込めて描いている。
    ディズニー映画「リメンバー・ミー」をこの前観たけど、やはりメキシコの死生観(死後も人生は続く)はかなり面白い。
    語り手だと思ってたフアン・プレシアド含む登場人物全員が既に死者だったことに、とても驚かされた。

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    2025年06月14日
  • ペドロ・パラモ

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    すらすら読める本ではない。読み始めは当然のようにストーリーを追おうとしていたけど、早い時点で諦めた。なんせ、語り手がころころ変わるし、時間も脈絡なく切り替わるのだから。でも、それぞれの語り手の語りに身を委ねていたら、なんだか心地よくなってきてしまった。巻末の解説を読んで、なるほどねーと思い、もう一度読んでみたい気もするけど、ちょっと今は気力が出ない。再読リストに入れておこう。

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    2024年09月22日
  • ペドロ・パラモ

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    死者の町コマラ。ペドロ・パラモはとにかく女好きで強欲でけちで、嘘つき。子供も何人くらいいるのか分からない。生者と思ってたひとが死者だったり、前の章で脇役やったりしたひとが次の章で語り手になったりどんどん人が入り交じる感じが面白い。

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    2014年10月18日
  • ペドロ・パラモ

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    すごく不可思議な小説で、構成が最初良くわからず、物語世界に入っていくまでに時間がかかりました。
    解説を先に読めばよかったかも知れない。

    途中からどんどん惹きこまれていって、死者が語るのも気にならず、登場人物それぞれの話しぶりや人柄もわかってきて、勢いがつきました。

    土地勘がないので、そのあたりの自然、たとえば蒸し暑さや風の音を想像するのも難しいのだけれど、映像が目に浮かぶような感じで、なんだか違う世界に連れて行ってもらえたような。
    描写が詳しいわけでもないのに、映画的な作品に思えました。

    ラテンアメリカ文学の多くは、独自のカトリック信仰が底辺に流れているので、その部分を理解できないと物語

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    2014年09月21日
  • ペドロ・パラモ

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     1955年発表。メキシコの小説家、フアン・ルルフォ著。父ペドロ・パラモを探しに母の故郷コマラを訪れた主人公は、死者達のささめきに呑まれていく。七十の断片で構成され、時系列が激しく前後し、死者の会話が入り乱れる。
     不思議な小説だった。まずストーリーは、はっきり言って一回読んだだけではよく分からない。解説と照らし合わせながらもう一度読み返してみると大体の内容は掴める。しかしむしろ、この小説はストーリーではない部分に核がある気がする。淡々とした断片の配置が生み出す浮遊感、まるで当然のことのように交わされる死者との会話、簡潔で不可思議な詩的表現などから醸される雰囲気。円環的なストーリーのせいでもあ

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    2014年01月11日
  • ペドロ・パラモ

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    ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった…。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法によって、紛れもないメキシコの現実を描出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。

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    2010年07月25日
  • ペドロ・パラモ

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    生者と死者がごちゃまぜに入り交じり語り合う独特の世界観。
    緻密で精巧な構成がなされているそうですが、解説を読むまでちょっとからなかった。
    再読することで、味わいが増していく本でしょうか。

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    2009年10月04日
  • ペドロ・パラモ

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    生者と死者、現在と過去が数々の断片になって散りばめられており、ペースをつかむまでは読むのは大変かもしれないが慣れると何とも言えない良さがある。ラテンアメリカ文学らしい、幽霊・・・というか死者の魂がよく出てくる作品で、怪しげな雰囲気が漂いつつも暗くはない。
    ガルシア=マルケスよりは幾分読みやすいので、ラテンアメリカ文学入門にはいいかも。

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    2009年10月04日