新井満のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
存じ上げなかったが、「千の風になって」の作詞もした作曲家で、写真を撮ったりとマルチに活躍する人の小説。
中堅写真家の神島は、男性的不能となり、妻と別れてから評価の高い作品を作り活躍している。たまに会う、ボーイッシュな実娘月子や駆け出しのモデルの圭子など、様々な人達と絡む人間模様を描いた、連作短編集。
冒頭の作品が、話途中な感じで突然終わって、ああ、純文学だったのかとはじめて気づいた。そこまで探偵小説か何かと勘違いしていた。その後の作品も、無理に落ちをつけようとせずにふわっと終わるが、比喩をこねくり回して無理やりゲージツ的に描こうというところは、触手が伸びていく部分を除いてほとんど無いため -
Posted by ブクログ
インポテンツがマッチョイズムの喪失に根差すものであるとして
マッチョ否定が戦後民主主義の目指す理想であるとするならば
勃起回復の願望は、マッチョイズム回帰の願望でもあるわけだが
それはもちろん戦後民主主義への憎悪をともなうもので
同時に、それを押し付けてきた女性(母親)たちへの憎悪をも
含むことになる
しかし憎悪は、愛との二律背反として、互いを抑圧しあうことになろう
結果、インポテンツは解消されぬまま
或る象徴的な現象が表出されることになるのだった
「尋ね人の時間」は88年の芥川賞で
ノル森と同時期の作品なんだが手や口を使う描写は無しだ
作者の新井満はのちに
老いと死をテーマにした歌唱作品を