庄司薫のレビュー一覧
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"若々しさのまっただ中で犬死しないための方法序説"
庄司薫氏の青春論。
傷つきやすい青春、とか、そういった類いのはなしはたくさんあるけれど、もしかしたらその中で庄司薫ほど、そんな"青春"をまっすぐ見つめた小説家はいないんじゃないか。
傷つきたくない、傷つけたくないという若々しさ、他者を愛することのむずかしさに向き合い、10年間、悩み考え尽くした結果が"赤頭巾ちゃん"なのだと思うともうどんどん愛しくなる。
その人生をかけて、若々しさという壁を正々堂々のりこえて、他者への愛を語る庄司薫、その切実なドラマティックさにわたしはもうすっかり惚れ込んでしまっているのです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ再読。
薫クンシリーズとしては2番目に出たらしいのですが、
時間的にはゴールデンウィークまっただ中のお話なので3番目。
(『白鳥の歌なんか聞こえない』が3月のお話)
シリーズの他の作品ではつねに余裕綽々であり、
憧れるべき人生のセンパイとして描かれる
薫くんより1世代上のお兄さんとその仲間、
さらにその1世代上の先輩達が、「男が人生の夢にやぶれる」
ということがどういうことなのかを見せてくれるお話です。
薫くんはそれをいつもの透明な目で見つめ、あわてふためき、
傷つき、怒り、おびえるんですが、それでも、
いつか自分もその負け戦しか待っていないんじゃないかという
「悲壮な戦場」へ出ていくという覚悟を決めるのです。
かっこいいね、薫くん。
この「男が人生の夢にやぶれる」事象ですが、
本が出た時世的に学生運動が深くからんできます。
ここが後年の読者である私などにはちょっとつかみづらい。
とにかく、そういう時代があったのだな、と納得して読み進みました。
この本の出色としましては、
ノンちゃんとアコという相当に魅力的な女の子達が出てくるところ。
(幼馴染みの由美は旅行中で、1回休み・笑)
彼女達を見つめる薫くんが女の子に対して抱く感慨というか感想は
本当にすてきで、ほれぼれするし、山王神社の石段でしゃべったり、
プリンスホテルの高級レストランで(お金を)無理しながら食事したり、
という青春はじける3人の若者のシーンもたいへん魅力的なのですが、
上に述べた主題をめぐる話の流れ的にはちょっと浮いてます。
そこがいいとも思うし、冗長かなとも思いました。 -
Posted by ブクログ
定番青春小説と呼ばれるので読んでみた。面白かった。ストーリーは、東大入試中止になった年に高校三年生だった主人公が今年は大学を受けないことを決意し、そういう決断をした自分について考えながら、ガールフレンドや友達やおばさんとかいろんな人に会って、悩んですっきりする話。まず、あの女医のシーンがエロイ。軽く起き上がってしまった。そして感受性の強い18歳というものの描き方が巧いと思う。最後の一連のシーンだけど、どうでもいいことを無理やり自分にとって重要な出来事に変えてしまう、この青さはなかなか書けない。30年くらい前の本だけど、今読める度が非常に高い。
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庄司薫、青臭くて面倒臭くて好きだ。青春論なんだけど、何も若さの特権とか、逆に若気の至りを説いているわけじゃない。庄司薫は生涯ずっと青二才かもしれないし、むしろ読者としてはそうあってほしい。人間として大切な純粋さや誠実さは、年齢に関係なくいかに獲得してきたか、いかに失ってきたか、それによって決まるものだと。オイラは後悔しない代わりにあまり反省をしないけど、自己否定のきっかけとして時々は反省しようと思った。
それにしても70年代に書かれたものにもかかわらず、いま読んでもまったく違和感がないことに驚いた。「大きな大人」は2019年でも増加中だ。情報洪水と言っていたけど、いまは自分からそこに飛び込んでいる人の方が多い。電車の中を見たらゾッとする。通学中の子どもも通勤中の大人もケータイでゲームしてるし。個人売買やYouTubeとかでプロとアマチュアの違いがなくなってきた部分があるけど、子どもと大人の違いも曖昧になってると思うな。
『赤頭巾ちゃん気をつけて』が「男の子」いかに生きるべきか、って十年間考え続けた成果だったというのは嬉しかったな。だから夢中で読めたんだな。「これぞ男の生きる道」とは、みんなの幸せを考えること、そしてそのためには強さに支えられたやさしさとでもいうべきものを育てること。赤頭巾ちゃんが教えてくれたんだよね。だからお袋さんの「自分のことは自分でしなさい」「人に迷惑かけちゃだめよ」の教えをしっかり守って、やっぱり面倒くさい由美にもやさしかったものね。しかしこの歳になっても18歳の薫が考えることに違和感がないとうのはどうなんだろう。これを純粋さと自分では言い難いもんなぁ。 -
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薫君4部作に引き続き、庄司薫を読む。
この本は小説ではなく、エッセイだ。1971年の刊行なので、かなり古い本だけれども、僕は庄司薫は小説だけしか読んでいないので、この本は初読。
饒舌な文体で書かれているところは小説と同じなのだけれども、内容は読み取るのにかなり骨が折れる。巻末に素晴らしい解説(萩原延壽と御厨貴の2人)がついていて、この本の読み取り方の素晴らしいサンプルを示してくれてはいるが。
内容の読み取りが浅いことは承知の上で(内容ばかりでなく、論の進め方もまわりくどいという印象がある)、この本の好き嫌いを言えば、あまり好きではない。
解説からの孫引きになってしまうけれども、このエッセイに書いてあることの一部を要約すると以下の通り。
「夢多き青春」を頑張って生きる式の努力は、努力すればするほど結局は他者を傷つけ、自分はその人間らしさを喪失してしまうのではないか。青春の真っ只中で「純粋」と「誠実」を人間の最高目標として求めようとすれば、そのこと自体で「純粋」と「誠実」を喪失するというパラドックスに陥る。このテーゼは、いずれ「自己否定」につながり、「自己否定」の論理を突き詰めていくと、「現実否定」に必然的に激しく転化していく。
「純粋」と「誠実」を喪失しないためには、複雑で困難な状況にも耐えられる強さ・力が必要であるが、その力を備えようとする努力は、結局は他者を傷つけかねない、という堂々巡りになってしまう。
とりあえずは(若々しさの中で、あるいは馬鹿馬鹿しさの中で犬死にしないためには)、そういった問題から逃げておくに限るのだ。
実際に本を全部読んでみないと、これだけでは何のことやらさっぱり分からないだろうけれども、そういったことが書いてある(と思う)。
「自己否定」や「現実否定」にともすれば陥りかねない青春期の心の動きをもって、題名の「狼」と呼んでいる。努力が他者を傷つける、とは、ドストエフスキーの傑作が文学青年を絶望させ、マリリン・モンローの微笑が他の女性を傷つける、といったようなことだ。
そんな馬鹿な、と多くの人が思うだろう。他者との比較、優勝劣敗を競うことが人生の本質ではないだろうと思う。人生とはもっと別なもの、例えば、と考え、例えば「赤頭巾ちゃん気をつけて」の最後の場面のような、と思いついてしまい、これはなかなか一筋縄ではいかないな、と思ってしまった。 -
Posted by ブクログ
死について見つめだした10~20代の男女の群像劇。
あれこれ理屈をこねまわす主人公に最初はいらいらしながら読んでたけど、個人的にあれこれ頭で考えてしまう部分もあるのであまり主人公のことを悪くは言えない。というか確かに高校卒業したての頃の色々考えてしまう脳みそっていう感じ。若い。
主人公の友達や幼馴染みの女の子もあれこれ考えていて、なんだか友達の話を聞いているような気分で読めます。
これまで「純粋=すぐ行動にうつす」だと思っていたけれど、「純粋=あれこれ考えてしまって動けない」という部分もあるなあと思い返しました。
前作の「赤頭巾ちゃん気をつけて」では主人公の内面の苛立ちに焦点が当たっていたけれど、今作ではもっと外側に視点がうつった感じ。
彼らがカッコいいのは、彼らが実際にどういうなりふりをしたかではないということ、つまり彼らがそうなったのは言うなれば必然的な結果というか、彼らがその力を使いつくすためのほんとうに大事なことを別にしっかりと手いっぱいに抱えていたことによる、という点にあるのは言うまでもないわけだ。
なにかに心を動かすたびに用心深く警戒するような感じがいつの間にか身に付いてきてしまうのではあるまいか。
なにしろこの世の中ってのは、どうやらケチつけたり皮肉ったりからかったりしていれば、なんとなくカッコよく颯爽と見えるようにできているのだから。
「それでおれってのは、自分についてもそうだけれど、他人を眺めてもすぐ、そいつはどう死ぬのかなって思うたちなんだよ。それに、そうやって眺めると、どんな気に入らんやつでもおこる気はしなくなるし、いろいろしのぎやすいからね・・・・・・。」
これはまあ、ぼくも含めて男ってのは女の子がそばに来るとなんとなく張り切って頑張るようなミットモナイところがあるわけだが
あれこれと考えて心をつくすことよりも、まずこの腕でしっかり彼女をつかまえてしまうこと、すべてはそれからなのではあるまいか。
死にかけたおかげで愛されるくらいなら、いっそのこと象のようにこっそり姿を消して独りで死んでやる・・・。
「一言で言えば、馬鹿ほど純粋ってことになるみたいだけれど、実際問題として、世の中が複雑で分かりにくくなると、みんな結局は単純で野蛮なものの中に救いを求めたくもなるらしい。」
そしてぼくたちが死んでいくひとに対して、できるだけのやさしい心づかいをすることは確かにとても大切なことにちがいない。でもね、それにしても、あまり心を痛めすぎてはいけないのじゃないか?