井上慎平のレビュー一覧
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仕事に翻弄されて日常生活が営めないほどに支障をきたす、いわゆるバーンアウトになる人は周囲にも何人か観察している。意外なのは、バリバリ仕事をこなしていて周りからの評価も高いあの人がまさか、ということが多いのである。
本書の著者も、まさに仕事にコミットし続けることで限界を超えてしまった当事者である。当事者の視点から、誰もが社会からふるい落とされる危険をはらんでいる構造的な分析と、内省的な感情の発散とを交わりながら綴っていく。
資本主義社会での「できる人」になることが、唯一の正解ではない。頭では分かっているけど納得できない葛藤を、著者は受け入れる態度に希望を見出す。いい悪いで二分できるほど人間は単純ではないし、その性質を認めて用という心持ちが大切なのである。
具体的な内容では、「コミュ力」の過剰な称揚への視点が新しい気づきだった。個人に内包される絶対的な能力ではなく、環境や相手によって変動するものである。コミュ力がないと特定の場で相手を批判している当人は、その場でたまたま優位な立場で周りが気を使っているだけなのかもしれない、という認識が足りず独りよがりになっている状況が思い起こされた。
一方個人的に腑に落ちなかったのは、今とは違った生き方があったかもしれないという後悔である。著者はきっと自分への期待値が高いのだろう。そのために、自分の限界値を超えた無理も気づけずけないことが多いかったのだと推察される。私としては、幼少期の環境の影響からか、自己効力感が以上に低い。なので、今何とか社会で仕事をし自立して生きていけていることが出来過ぎている、という自覚である。資本主義社会にはあまりハマらない性質なのだろうなという自己評価である、そのくらいの心持のほうが大きく精神を崩さないのかなとも思う。
著者は読書家である。本書は著者が様々な文献をあたり、双極性障害となった自分と社会を見つめなおす試みの記録である。過去に読んだ本も参照されているし、まだ知らない分野とも出会えたことが副産物である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「『自分は謙虚だ』という自信こそ最大の傲慢だったのだ」。この一行で背筋が伸びました。本をよく読み、いろいろな立場があると理解しているつもりの人ほど、その理解自体を手柄にしてしまう。実践を軽んじる傾向にある私には、思い当たる節しかありません。ついでに、「腹落ちした」という便利な言葉を用いるとき、本当に理解していることなどあっただろうかと考えさせられました。むしろ、「本当に理解する」という状態に到達できると思っていること自体が、傲慢さの表れかもしれません。著者は自分の傲慢さを見つけるたびに書き留めていて、その手つきがとにかく率直です。著者のように「立ち止まって考える」ことを止めない姿勢は苦しさを伴うものですが、見習うべきだと思いました。考えすぎは、毒とも思いますが・・・
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著者の人生の苦しみを表現されており、読み進めていく中で私の中の苦しみとのズレを感じた。それが何か?ということに割と考えさせられた。最終的にはポジティブな方向な結論になるところは同じだが、ベクトルの違いはあった。そう言う意味では意見の相違があり、すごく新鮮だった。
そのズレというのは、合っているかわからないが、弱さと言うのは、著者は自己否定の戦いであり、私の弱さは従属するとなる。あまり自信はないが、現象としての弱さと構造としての弱さの違い。うまく説明できない。
私の弱さはミルグラム実験やアイヒマンのような、悪の凡庸さ。ここに屈しるかどうか。魂まで受け渡すかどうか。悪意ある行為に対して、私はただの部品です、と言って従属するかどうか。その境界線に立たされた時に、その人の弱さが試される。
ただ、同意した結論としてはプロセスとして引き受ける、まさに責任を取るでなく、負う。ここはいまこの瞬間瞬間の判断を引き受けることに対しては同じ。
弱さへの考え方の違いはあるが、結論は同じと言う意味でとても考えさせられた本であった。
最後に私がどこかで聴いた話。地雷を作る会社で働いている人が週末の教会で平和を祈る。こういう生き方はまさに従属。人生の最後に後悔すると思う。 -
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一度鬱になった人って似た考えにたどりつくのかな。私と同じような考え方をしていた。レールから外れた人の生存戦略って感じだわね
社会人になってから友達を作る方法として、敢えて「友達になってください」っていう発想はなかった。参考にしたい
会社は負債と競争から成長を強いられ、人間も成長を強いられる。
コミュ力などの能力は、誰を相手にするかということでしか測れないのでモノではない。外部からリソースを持ってきてどう活かすかっていう点に焦点を当てるべき。
評価というテストがあることで、未来のために今をどう使うか、今の自分を手段としてしまっている。
著者なりの生存戦略を書いた本ですね。輪るピングドラム好きな人は好きそう -
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ネタバレ働き過ぎで双極性障害を負った著者だからこそ、それまで自分が描いていた「ビジネスパーソン」たるものの像から、それは偶々がもたらした像だったと気づくまでの軌跡。実感がこもっており、共感した。
結論として、(1)人生とは偶有性に翻弄されて続ける中で生きること。であるならば、自分の理想と現実が合わなくても、それをまずは引き受けるしかない。あがらうのではなく、偶々そういう役回りが自分に振られた と淡々と受け止める。(2)そうであっても、口惜しさは残る。なんで自分なんだ。そのプロセスを、一瞬一瞬を生きる。
と書かれていて、竹田青嗣の解釈によるニーチェの永劫回帰思想。「もしこれが永遠に繰り返されても、私はこの人生を愛せるか?」と自分に問い続けることで、「一瞬の喜びのために、全宇宙を肯定する」。
この強烈なまでの生の肯定が、ニヒリズムを突き抜けた先にある「超人」のあり方だとされています。
ニーチェの超人思想との差が感じられた。
キュブラー=ロス「死の受容の5段階モデル」とも似ていて、人生のままならさを受け入れることの大変さを感じた。
ヴィクトール・フランクルのロゴセラピーの「私が人生に何を期待するかではなく、人生が私に何を期待しているか」と同じ変換が起きて、こんな私だからこそできることをやる。それで十分という思いも伝わってきた。 -
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それほど期待せずに手に取ったのだけれど、自分にとって非常に重要な本の一つになった。
自分という人間が、いかにほくらの時代特有の経済的な価値と自分の価値を同一視するという短絡的な価値観に囚われているのかに気づくことができた。自身の中に内面化している偏った価値観の存在に気づくことができた。これはとても大きなことだと思う。
また一つ大きな気づきだったのは、能力主義に囚われている自分の価値観と、そのあやふやさ、そしてもし能力主義を手放したとして、他の価値観を尺度として持ってきた場合には、結局能力主義と同じ過ちを繰り返すことになるのだということ。つまり、能力主義を全面的に否定すべきではないということだ。 -
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とてもよかった。ビジネスパーソンには、調子のいいうちに読んでおいてほしい1冊。
メンタルの話なんだけれどもふわっとせず、タテヨコの視点を使って辻褄合う形で説明してくるので、確かにいまの日本人としての私ってこうだなあ、と納得させられた。それに考えが浅くない、鬱になって何度も何度も自省したんだろうなと、その時間の長さに思いを馳せた。
著者の井上さんは編集者をやってたことがあるそうで、担当の『転職の思考法』読んだことあるあるー。この本のタイトルもいいよね、手に取っちゃう。
そして本書内で引用される本、厚さの割にとても多いので、本当に本をたくさん読んでるんだなあと思った。
いろいろと考えたり思い出しながら読んでいたけれど、途中からホグワーツレガシーのセバスチャン・サロウのことを思い浮かべていた。彼、目的のためにひたすら一生懸命で無力な自分を責めるキャラクターなので、この本読んで楽になってくれよと思った。 -
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早くも今年一に出会いました。
経済の論理と個人の思いとのアンバランスさをとても分かりやすく書いてくれています。
読むと救われる人しんどくなる人いると思います。
そこに「弱さ考」の弱さがあります。弱いから書ける、弱いから言える。ある章にも書かれていましたが、双極性障害を発症したからこそ言えることがあります。
そしてそれに共感できるからこそ、感じたことを言えることがあると思いました。
本気でノートを書きながら読んだからか、身に染みている感覚がある。これほどまで自分に浸透している本はいまだなかった。と言うか、浸透させようとしてなかったのかもしれない。 -
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うつを経験した著者が経験を元に社会や経済について俯瞰した考察をしていて、自分ももやもやする考えを言語化してくれた本。
一部同感した部分を紹介
・強い人になる「未来」のために「今」を使う…
・流動性が高い市場で同じことをしてはいけない、流れについていける人が強さにつながる社会
・能力は固有ではなく、環境とのマッチングによる
・日本のムラ社会では、生存するための衝突回避が必要。いつでも「出ていける」文化とは異なる
・「相手の気持ち」を考えると「目的達成」にねじれが生じる(日本)。「結論ファースト」の効率重視(アメリカ)。
・自由と責任、自由意思をコントロールできているのは思い込み
・ネガティブ感情は誰にもある、でも、その感情が存在する自分をダメと二度傷つくことは避けたい
社会的に強いと思っていた筆者が病気をきっかけに自分と社会を関係性を深掘りしていく。流れが早すぎる社会に対応できなくたって大丈夫。もはや、対応なんてしきれないんだから。国際化による統一化だけではなく固有化するものも尊重し合える世界になればいいよね。 -
Posted by ブクログ
タイトルや目次の印象と、実際に文章を読んでみての感想が大きく異なる本。
ニュースピックスのエリート社員としてバリバリやっていた著者が、
燃え尽き症候群的な?躁状態の限界からか?ドーンと落ち込んでしまった、
というエピソードから始まる本。
まずここで違和感。
もっとその躁から鬱への切り替えを語ってほしかった。
なんだか急に鬱になっていた。
そしてそのあと。タイトルはなぜそうなってしまったかの分析のように見えるのだが
書いてあることは、よくある話ばかり。働く上での。
こういう体験をした著者ならでは、というものではなかった。教科書的。
まあ敢えて、自分の体験を裏付ける文章を綴ったのかもしれないが、
よそいきな気がした。
いまいち
第1章 強さを求めて、弱くなった
・「優秀なビジネスパーソン」になりたくて
・「経済」という言葉のもどかしさ
・「弱さ」とは、「社会に求められる人間」になれないこと
・ガードレールを殴りたい
・「うつになる」とはどういうことか
・「能動的」に悪くなる
・「何もできない地獄」で学んだ3つのこと
・ある末期がん患者との出会い
・人生は逆算できない
・復職に向けて
第2章 成長のレースからは降りられないのか?
・完治していない障害の日常
・なぜ会社は毎年成長しなければいけないのか?
・投資家を魅了し続ける終わらないゲーム
・「脱成長」は実現可能なのか?
・時代の加速と定年まで勤め上げられない僕たち
・「成長には興味ありません」なんて言えない
・いつどこにいても安定できない時代
・「強いビジネスパーソン」と市場価値
・市場経済は厳しいが、その恩恵はもう手放せない
・お金がないと何もできない世界に生まれて
・それでも、役に立たなくたっていい
・なぜエッセンシャル・ワーカーの給与が低いのか
第3章 なぜ「時間を無駄にしちゃいけない」と思ってしまうのか?
・未来のために「手段化」される現在
・「前のめり」の強迫意識
・「分配される時間」と「生成される時間」
・僕たちはもっとゆったり生きるはずだった
・コスパやタイパを無意識に考えてしまう理由
・ちょっと、いったん落ち着こう
・努力とは「癒し」である
・そして勤勉とは「逃避」である
・日本の「努力はいいことだ信仰」はいつから始まったか
・大人になったのにずっと「試験」が終わらない
第4章 能力主義って苦しくないか?
・「敗者」にしか言えないこと
・「コミュ力」など存在しない
・能力は所有できない
・能力は評価もできない
・点ではなく面で考える
・能力は「人と人の間」に生まれる
・そして能力は「移ろう」
・能力主義は「成長」の促進剤である
・正しくはないが「効果的」
・「個人に成長を求めず競争力を高める経営」の可能性
・老いて必ず「能力」は消えゆく
・誰かが生きやすくなった世界は、きっと誰かが生きづらい
第5章 「理想的なビジネスパーソン像」は強すぎないか?
・ビジネスの世界はどんな個人を前提としているか?
・僕たちが強くなりきれない理由
・「いつでもどこでも誰とでも、私は私」な強い個人
・「個人」という概念の起源
・「個人主義」こそ例外的
・個人主義と能力主義は相性がいい
・なぜ日本で「根回し」の文化が発展したか
・「いいえ」とはっきり言えない僕たち
・日本の国語教育に見る「共感のすり合わせ」
・アメリカの国語教育で叩き込まれる「結論ファースト」
・アメリカの歴史教育に根付く「強い個人」の世界観
・日本の教育とビジネスの論理の決定的な違い
・「パチンコ玉的自分」と「ウツワ的自分」
・どこより自然に翻弄されて育った受け身の文化
・「おのずから」と「みずから」
・「やりたいことがある人はえらい、って空気やめてもらえます?」
・ウツワ的に働く
第6章 自分を責めすぎないために
・「誰になるか」を選び続けるしんどさ
・愛ってなんとなく冷めるよね
・「たまたまこうなった」だけの自分
・人は「物語化」しないと世界を理解できない
・この風船がどこに飛んでいくかを誰も知らない
・みんな話をでっちあげながら生きている
・間違ったことを信じるほうが幸せでいられる
・泣くのに理由なんてない
・私とは記憶である
・私は誰かの中にいる
第7章 弱いままにどう生きるか
・休むのではなく「別の行為をする」
・「詩人の目」で見る
・むき出しのネガティブを他人にどう伝えるか
・「戸惑っていること」をそのまま伝える
・「仕事以外の依存先」を増やしておく
・あえて「しがらみ」に飛び込む
・大人になってから友だちをつくるシンプルな方法
・友達づくりに「コミュ力」はいらない
・あらゆる存在と「関係性のセーフティネット」を張る
・逃げられるうちに逃げる
・「よりよい明日」を目指さない
最終章 弱さの哲学
・「わかること」がわかってなかった
・回復の物語から再び転げ落ちる
・理性には限界がある
・学ぶ者の「上から目線」
・「愚かさ」でつながる可能性
・愚かさとは「理性の失敗」である
・傷つけてしまったら「ごめん」
・「余裕がない人」のための思想を
・僕は犯罪者だったかもしれない
・人には人の地獄がある
・悟ったフリはしないでいい
・人生が怖いけど