衣刀信吾のレビュー一覧
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法曹界でミステリーを愛好する仲間が同好会として発足した法曹ミステリークラブが、クラブ設立十周年を記念して主催する短編公募に集まった四つの短篇リーガルミステリー。掲載号に原稿を載せているひとたちが集まり、その四つの短篇を俎上に載せた選考会がはじまる。『内縁の妻が内縁を解消する前に入籍をしたい理由』『死因によって相続相手が変わる遺言』……それぞれの短篇を読むうちにちいさな違和感が浮かび上がってきて――。
ということで、デビュー作『午前零時の評議室』を読んでからずっと二作目が楽しみだった衣刀信吾さんの第二作目です。文章の端々を疑い深く読んでも絶対(と付けてもいいくらい)に騙されてしまうほど、作中作や登場人物のやり取りにさりげなく隠された仕掛けの数が膨大で、それが明らかになっていく終盤の畳みかけが圧巻でした。実際に作者がどんな方かは分からないですし、あくまでも作品から受ける印象としてですが、『ミステリが好きで好きで仕方なくてミステリ作家になったひとが、たまたま法律のプロだった』という感じがすごく魅力的に思います。フィクション性を大事にした先の読めない傑作リーガルミステリーでした。 -
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第28回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。余りにも最初に構築されたプロットを一生懸命伏線貼って回収に勤しむところや、行間を読ませず語り過ぎな点、主人公の実帆のキャラの統一性の無さ、力技が過ぎる舞台設定の不自然さ等々、ツッコミどころは満載ではあるが、それらのウィークポイントを差し引いても、終章のどんでん返し(ここも喋り過ぎだけど)はなかなか素晴らしく、読後の納得感もそこそこあり、完成度は低い(新人賞なので当たり前)が、今後の期待も込めて評価:5で。著者は弁護士出身の方らしいので、本格でなくてもいいので細部がひかる法廷ものを読んでみたいものだ。
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裁判員に選ばれた男女が集められた評議室は閉ざされ、タイムリミットが与えられた。彼らに課せられたのは、とある殺人事件に対する評議。助かるためには午前零時までに全員一致で正しい答えを出さなければならない。被告人は有罪なのか無罪なのか、そして彼らが集められた目的は。スリリングでトリッキーなサスペンスミステリです。
市民感覚を取り入れた裁判員制度の難しさもさながら、そうでなくても「真相」を見抜くことがいかに困難かということを再認識させられます。証言するのは人間なので、その感情に引きずられることがないとは言えないし。それで他人の人生を決めてしまうのは本当に怖い。だけどそれは、職業として臨む法曹家たちにとっても同じなのでしょうね。それぞれの悔恨がつらい物語です。
ミステリとしてもまったく気の抜けない展開でぐいぐい読まされました。評議の対象となる事件のみならず、評議室で起こる事件の謎もまた魅力的。最後の最後まで楽しめました。 -
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法律事務所でアルバイトをしている大学生の神山実帆のもとに、「補充」裁判員の案内が裁判所から届く。まずは事前のオリエンテーションから参加して欲しいと言われ、裁判所に集まったメンバーが扱うのは、『恋人関係だった女性が別れ話をきっかけにストーカーとなり、ナイフで刺し、丸石で殴打して死亡させた』とされる事件。オリエンテーションがはじまると、元邑判事は十三年の前に、裁判員裁判によって無罪判決の出た事件を語りはじめる。その話をした途端、実帆以外のメンバーの様子がおかしい。そしてそこからが、彼らにとっての地獄のはじまりでもあった――。
というのが、本作の導入になるでしょうか。リアルな法廷小説も書くこともできると思われる(実際、作者は現役の弁護士だそうです)ひとが、フィクションとエンタメに完全に振り切ったすごく気持ちのいい作品、というのが読み終わって最初に抱いた印象でした。
実は最初は人物造形や心理描写に一部馴染めないものを感じていたのですが、慣れるといつしかのめり込むように読んでいて、物語は二転三転し、最後まで読むと、こんなにも様々な仕掛けが施されていたのか、と感動さえ覚える、ミステリを読む醍醐味に満ちた作品です。思い込みによって凝り固まっていた心は逆手に取られて、あっ、と声をあげてしまいそうに何度もなりました。ラストのふたりの対峙シーンも緊張感があって素晴らしかったです。 -
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弁護士事務所でアルバイトをしている女子大生•神山実帆は裁判員裁判の補充裁判員に選出され、オリエンテーションの案内状が届く。
向かった先のビルの一室には、同様に集められた7人の男女。発起人の担当判事はこれから裁判が始まる事件の評議を7人に依頼する。評議にはルールがあり、タイムリミットの午前零時までに正解が出ないと部屋を爆破すると告げられ…
リーガルサスペンス×デスゲーム×本格ミステリ。『十二人の怒れる男』のオマージュでもあり、「裁判員制度」をテーマとした社会派ミステリの要素もある。作者は弁護士(しかも弁護士界隈では大物?)なだけあって、法曹関連用語や裁判員制度についても学べた。
評議室に閉じ込められた裁判員達と外部にいる弁護士が同じ事件の真実を追う構造。クローズド•サークルとオープンド•外界のストーリーが並走する構成のミステリは色々あるが、有名どころでは新本格の代名詞とも言えるあの作品が思い起こされる。ということは…むにゃむにゃ
終盤に連続する反転劇と縦横無尽に張り巡らされた伏線の数々は、新人とは思えない完成度。初読時に「これは伏線だろうな」と感じる箇所はいくつかあったが、想像を超えてきた。あれもこれも全然気づかなかったなー、お見事。
日本ミステリー文学大賞新人賞 受賞
リアルサウンド認定国内ミステリーベスト10 9位 -
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メッセージ性が強く意思が明確なリーガルミステリー、裁判員制度の脆弱性に切り込む #午前零時の評議室
■あらすじ
大学生の実帆に裁判員の通知が届いた、裁判の前に事前オリエンテーションが行われるらしい。裁判官元邑の元に集まった裁判員の七名は、裁判員一般の講話や事件の概要を聞き始める。元邑は過去にあった裁判員裁判での評議に憤りを感じているようで…
■きっと読みたくなるレビュー
本作の作者の衣刀信吾先生は新人作家ながら現役弁護士。というか… 元神奈川県弁護士会長、現日弁連の副会長という大御所先生じゃないすか。お忙しいのに重厚な作品を執筆されてるなんて、ひとことスゴイ!
これまで多くの弁護を経験され、生業にしてきたからこその濃い内容になっており、メッセージ性が強く、意思が明確なリーガルミステリーになっていました。
そして内容もかなりエグイんですよ。やりたい放題、ぎゅうぎゅうに詰め込んでます、うんうん。でも私は嫌いじゃないですよ、まさかリーガルミステリーにデスゲームをぶち込むとは… 発想力に完敗しました。
特に裁判員裁判、議論のシーンなんか最高ですね。映画『十二人の怒れる男』や『12人の優しい日本人』のオマージュが詰まってて大好き。例えばあのセリフとかさー、アプローチは同じですよね。細かいネタにニヤニヤしちゃいました。
謎解き部分はしっかりと本格ミステリーなんですよ。事件の要諦では本格ならではの怪しい手がかりが提示される。裁判員の議論のなかで色々推理が展開されるのですが、これが思った以上に粘着質があるんです。こういうことかーでは終わらないんだよね、新人先生の作品とは思えません。
物語の展開も十重二十重に色んな仕掛けしてくるし、特に終わり方のイメージがつかなかったんです。どうやってオチつけるのかしらと思ってたんですが―― なるほど、しっかりと作者の想いが伝わってきましたよ。
キャラクターでイチ推しなのは主人公の実帆ですね。学生で人生経験の少ない彼女が、裁判員という他人の人生に足を踏み入れた時、世界の見え方はどのように変わるのか。後半からの飛躍っぷりには惹きつけられましたね~、これからも彼女の成長していく姿を見続けたいと思いました。
さて裁判員制度が始まって15年くらいは経過してますが、法曹界や国民での評判はどうなんでしょうか。ひろく国民が参加するという点、またその人の人生経験、良心をもとに評議するという点で、個人的には良い制度だと思っています。
こういった作品が読まれることで、あらためて裁判員制度を考える機会が増えるといいですね。
■ぜっさん推しポイント
私も社会人生活が長いので、本作で語られているような課題だったり、当事者の葛藤なんかはよく理解できます。物事には筋ってのがあるのは分かってるんだけど、物事を進めるには筋よりも優先させなければいけないこともある。
さらに立場、粒度、レイヤーごとにも、それぞれの筋があるから、より複雑化してくるんですよね。
特に法曹の皆さんは他人の人生に大きく影響を与える職業ですから、ご心労痛み入ります。でもだからこそ法律家の皆さんには、胸を張って職務を全うして欲しいと思いました。 -
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ネタバレとっっても面白いミステリーでした!
話が二転三転、こっちに決まったと思ったら
それが覆されて実は…!と最後の最後まで真相が分からず急いで読み進めてしまいました。
裁判員制度で集まった(集めた)人々に復讐することが目的かと思いきやそれは土台で、
本当の相手はさらに…と驚かされっぱなしでした。
また、最初の実帆の印象は私の中でそんなに気の強くない女の子、といった印象でしたが物語が進むにつれ、推理力・思考力のすごさや物怖じせず答える場面があったりと、強く賢く優しい人だなと感じるようになりました。
これは想像ですが、佐藤のお母さんと似ているような気もしました。
実帆のその後が知りたいです。 -
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評議室に集められた裁判員たち。とある殺人事件の評議を"真摯におこない"、"答え"を出さなければ爆殺される。リミットは午前零時─
弁護士が書いた本格ミステリ。おもしろかったです。閉ざされた評議室での会話劇と外部で調査する弁護士の動きが同時に進行する中で少しずつ謎に迫っていく。法廷もの、密室劇としての枠組みだが大オチまでしっかり本格ミステリとして組まれているのが良し。
最近の新人賞は弁護士か医者が多い気がしますね。こういう専門知識が元になったミステリもいいけど個人的にはなにかの専門家じゃない"ただのミステリ作家"の書いた"探偵ものでしかない"ミステリのほうが好みだな、とあらためて思いました。
いや、本作は本格ミステリとして充分おもしろかったです!本業が忙しいかもだけど次作も楽しみに待っております。