衣刀信吾のレビュー一覧
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裁判員に選ばれた男女が集められた評議室は閉ざされ、タイムリミットが与えられた。彼らに課せられたのは、とある殺人事件に対する評議。助かるためには午前零時までに全員一致で正しい答えを出さなければならない。被告人は有罪なのか無罪なのか、そして彼らが集められた目的は。スリリングでトリッキーなサスペンスミステリです。
市民感覚を取り入れた裁判員制度の難しさもさながら、そうでなくても「真相」を見抜くことがいかに困難かということを再認識させられます。証言するのは人間なので、その感情に引きずられることがないとは言えないし。それで他人の人生を決めてしまうのは本当に怖い。だけどそれは、職業として臨む法曹家たちにと -
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法律事務所でアルバイトをしている大学生の神山実帆のもとに、「補充」裁判員の案内が裁判所から届く。まずは事前のオリエンテーションから参加して欲しいと言われ、裁判所に集まったメンバーが扱うのは、『恋人関係だった女性が別れ話をきっかけにストーカーとなり、ナイフで刺し、丸石で殴打して死亡させた』とされる事件。オリエンテーションがはじまると、元邑判事は十三年の前に、裁判員裁判によって無罪判決の出た事件を語りはじめる。その話をした途端、実帆以外のメンバーの様子がおかしい。そしてそこからが、彼らにとっての地獄のはじまりでもあった――。
というのが、本作の導入になるでしょうか。リアルな法廷小説も書くこと -
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メッセージ性が強く意思が明確なリーガルミステリー、裁判員制度の脆弱性に切り込む #午前零時の評議室
■あらすじ
大学生の実帆に裁判員の通知が届いた、裁判の前に事前オリエンテーションが行われるらしい。裁判官元邑の元に集まった裁判員の七名は、裁判員一般の講話や事件の概要を聞き始める。元邑は過去にあった裁判員裁判での評議に憤りを感じているようで…
■きっと読みたくなるレビュー
本作の作者の衣刀信吾先生は新人作家ながら現役弁護士。というか… 元神奈川県弁護士会長、現日弁連の副会長という大御所先生じゃないすか。お忙しいのに重厚な作品を執筆されてるなんて、ひとことスゴイ!
これまで多くの弁護を経験さ -
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ネタバレとっっても面白いミステリーでした!
話が二転三転、こっちに決まったと思ったら
それが覆されて実は…!と最後の最後まで真相が分からず急いで読み進めてしまいました。
裁判員制度で集まった(集めた)人々に復讐することが目的かと思いきやそれは土台で、
本当の相手はさらに…と驚かされっぱなしでした。
また、最初の実帆の印象は私の中でそんなに気の強くない女の子、といった印象でしたが物語が進むにつれ、推理力・思考力のすごさや物怖じせず答える場面があったりと、強く賢く優しい人だなと感じるようになりました。
これは想像ですが、佐藤のお母さんと似ているような気もしました。
実帆のその後が知りたいです。 -
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とある殺人事件の裁判員として集められた七人の男女。オリエンテーションと称して集められたが、「正しい評決をできなければこの場に仕掛けられた爆弾を爆発させる」と。
法廷ミステリとデスゲームの融合。いい感じにきれいにまとまっていて面白かったです。デビュー作みたいですが読みづらいということもなく最後までサクッといけましたし。
ただ、なんだろうな?奇麗にまとまりすぎていて謎があって真相なのか、真相ありきの逆算で謎や伏線がつくられたのかそんな気にもなってしまった。
あとは被害者の悪辣っぷりへの同情や言及がやたら少ないのとか、依頼主のしたたかさみたいなのは現役弁護士さんだからこその視点なんだろうなあ。こち -
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第28回ミステリー文学大賞新人賞受賞作(この賞は、光文社の関連団体である光文文化財団が主催している。正賞・副賞のほか、受賞作が光文社から出版されることになっている)。
女性容疑者が過去の交際相手を殺したとされる事件。裁判員裁判となることが決まっていた。事件の裁判員に選ばれた面々が、「オリエンテーションがある」と、とあるビルに呼び出されていた。折しも外は大雨で、交通にも影響が出る可能性があるほどだった。
主人公・神山実帆(こうやまみほ)は、補充裁判員として選ばれた。欠員が生じた場合のための要員だが、裁判には最初から参加することになるため、オリエンテーションにも来てほしいと請われた。
ところが、 -
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ネタバレ裁判員裁判への問題提起。
裁判員裁判をちょっとでも知っていたら、舞台設定が不自然なのがわかる(弁護士事務所でアルバイトしている実帆がそこに気づかないとか…)が、そこはスルーしないと話が進まない。
裁判の対象になっている事件と、それを巡って集められた人たちの事件と、二つの事件を扱っている。
復讐、なのだろうが、最も悪い相手(=事情もわからなずバッシングしてくる外部者)には復讐できないジレンマがある。
言論の自由をはき違えている輩にはそろそろ黙ってもらいたいものだが、諸刃の剣なので難しい。マスコミにはプロの矜持を見せてもらいたいものだ。