須藤アンナのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
書店で題名と素敵な表紙に惹かれて手に取りました。
主人公のソフィアのが住む町のモットーは「壊れていないなら直すな」
余計なことをすれば話がややこしくなるだけと、見て見ぬが教育方針の大人たち。
支配的な父、見て見ぬふりをする兄と暮らすソフィアには町が灰色に映っていた。
十三歳の夏、向かいの家にナタリー・クローバーが越してくる。
ソフィアは町長から見張りを頼まれる。
ナタリー・クローバーが町の地図を作ると言い出す。
ナタリー・クローバーの地図作りに協力していくうちに、ソフィア自身がしたいことに気がつき旅立っていく物語です。
言葉選びが個性的だと思いました。
例えば、時間がたつのが遅いと感じた -
Posted by ブクログ
思春期ならでは閉塞感、危うさなどその微妙な心理状況を文章でここまで表現することができる言葉の巧みさに驚いた作品でした。良い意味で現代の小説ならではのフレッシュさも持ちつつ、新人とは思えない書きっぷりに脱帽します。
特に面白いなと思った部分は、登場人物は同じなのに一章ごとに登場人物が変わったような、シリーズ物の小説を連続して読んでいる気分になれる、文章のだらけが感じられない読み応えのある所が素晴らしいなと思った。
余談ですが、本のカバーを外して読んで欲しいなと思いました。装丁まで物語の一部、実際の本でないと味わえない良さを改めて感じました。
-
Posted by ブクログ
まず、冒頭部分の抜粋です。
「子供は誰だっていつだって、親にとって一番の自慢でありたいと願う。だって、親は世界のすべてだから。もし期待に沿えなかったら、鏡を見ながら、自分で自分のおでこに、「ダメな子」と泣きながら書かないといけない。~中略~ 子供は何歳になっても親の子供で、自分が粉々に砕け散ってしまうのを覚悟で暴走しない限り、レールから外れることはできない。つまり、わたしたちは生まれを選べないだけでなく、生き方さえもほとんど選べない。~中略~ 十三歳のわたしにとって、世界は霧の町、チェリータウンだけだった。町のモットーは、「壊れていないなら直すな」。 余計なことをすれば話がややこしくなる -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めての作家さんの小説でした。作者の須藤さんは、私と同年代ということでたいへん驚きました。
①互いを支え合えるような友だちの大切さを知りました。
私自身、人付き合いが得意な方ではないのですが、本作を読んで、ナタリーとソフィアのようなそんな唯一無二の友人がほしいなと思いました。
②ナタリーを見て、周りに囚われることなく、『自由に生きる』ということの大切さを学びました。
私も、自分のなりたい自分に生まれ変われるように、少しずつ努力をしていこうと思える。
本作は、読んで明日からの毎日を生きるための勇気を教えもらえるような大切にしたいと1冊でした。
また、夏に読んでみたい1冊です!
今後の須藤さ -
Posted by ブクログ
村山由佳、荻原浩、朝井リョウなど、名だたる作家が受賞している小説すばる新人賞受賞作。
霧が立ち込める町チェリータウンに住む13歳のソフィアは、酒場を営む父親の暴力に支配され、母親は5年前に家を出、兄は父親からいないも同然の扱いを受けている。そんな彼女の隣家に1週間ごとに記憶が無くなるという風変わりな少女ナタリーがやって来る。ナタリーとの出会いで、ソフィアは少しずつ自分の本当の気持ちに気づき始め…。
架空の町で異国の物語設定だからか、ソフィアだけでなく、ナタリーの不幸な生い立ちもすんなりと受け入れられた気がする。これを今の日本を舞台にしたら、もっともっと重くて辛かったと思う。
新人さんだけ -
Posted by ブクログ
第37回小説すばる新人賞受賞作。
なんか変わった設定です。場所も時代も明示されていいませんが、雰囲気からして舞台は70~80年代のアメリカ南部の閉鎖的な小さな町でしょう。主人公は父親の抑圧的支配(&暴力)を受ける13歳の女の子のソフィア。母親は子どもを置いて逃げ出し、父親と合わない兄が一人と言う家族。
夏休み、そんなソフィアの前の家に現れたのがナタリ―・クローバー。ナタリ―は『博士の愛した数式』の前向性健忘の博士に似て、1週間おきに記憶がリセットされ別人格になる。彼女は毎週月曜日にそれまでの日記を読み返し「初めまして」とソフィアの家に現れる。そんな破天荒なナタリ―と付き合ううちにソフィアは・・ -
Posted by ブクログ
『当然だけど、わたしはいつも独りぼっち。だから、橋を見る。町の端っこにある、ささくれの目立ったベンチに座って、霧ににじんだ橋の影をにらむ。町では日中、どこからか汚い言葉やヒソヒソ声が湧いているのに、そこだけはいつも静か』―『第一週 お向かいのナタリー・クローバー』
出会い頭に読んでしまう本というものが偶にはあるけれど、残りの読書時間(もっと無駄にしている時間を節約すれば増やすこともできるとは思うけれど、なかなかね)を考えると余り考えもせずに読む本を選んでしまうことは本来避けるべきなのかも知れない。とは言え世の中に出回る読むべき本を全て読める訳もなく、結局のところ一期一会ということなのだろう。 -
Posted by ブクログ
父に虐待されているソフィア。「壊れていないなら、なおすな」と見て見ぬふりがモットーのチェリータウンに彼女を助ける存在は無かった。そんな彼女は父に内緒でお金を貯め、18歳になったら死ぬと決めている。そんな彼女の前に現れたのはナタリー・クローバー、彼の記憶は1週間でリセットされる。その彼がソフィアを救い出す…舞台が日本じゃないこともあるけど、町の雰囲気や周りの感じがちょっと翻訳物、「ザリガニの住むところ」のような感じがする。働かされ、虐待されても、父を愛そうとするソフィア、無関心な町の人たち。誰に縛られなくても「自由」に生きることを教えてくれたナタリー・クローバー。そんな2人の関係性が心地よい良作