黒田明伸のレビュー一覧
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もともとは世界歴史選書の一冊として2003年に刊行。2014年には増補新版が出て、本書はそれを底本とした現代文庫版となる。世界歴史叢書のほうもだいぶ以前に読んだが、今回、あらためて増補新版を読んだのは、先に『銀の流通と中国・東南アジア』を読んだからである。あらためて読んでみて、また非常に勉強になった。
本書は、「あとがき」(p.293)にもあるように「歴史的経験より貨幣の何たるかを帰納する試みである」である。世界史的に広がる貨幣の様々な態様を描きつつ、貨幣理論では常識とされているものが成り立たない世界の方が歴史的には常態であること浮かび上がらせている。現代の我々が当然のように想定している世界 -
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ネタバレ序章貨幣の非対称性
零細額面通貨(銅貨、貝貨)は農村部、高額通貨は都市部で主に流通する。零細額面通貨は地域内で還流し上位へは還流しにくい。零細通貨と高額通貨の交換レートは需給によって各地域で変動しうる
1章越境する回路
アフリカアラビアにおけるマリア・テレジア銀貨は、両替相場や法定相場を超えて諸地域を結ぶ上位層通貨として選好され続けた
2章貨幣システムの世界史
世界史上、制度的な通貨供給が麻痺しても、取引されるべき財が集積していれば、それに変わる地域通貨が自然と(民間で)出来上がる。通貨が貨幣として受領される根拠は、通貨自体ではなく貨幣に媒介される財(商品)の側にある。
地中海・西欧では高