EMI WEBBERのレビュー一覧
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ふたりの姉妹が、戦後親戚中をたらい回しにされながら、歯を食いしばって、時にはすれ違い、生きた物語。
香坂さんの姉妹は大きなお屋敷でふたりで住んでいる。桐子さんと百合子さん。桐子さんが元教師。青葉が香坂家を訪れて二週間後、二人の訃報を聞く。桐子さんは心筋症、百合子さんは脳卒中。
夫のDVに千絵は五歳の祐太郎を連れて家を出る。電車を降りる時、祐太郎がリュックを忘れた。香坂桐子が駅員と交渉してくれて、駅まで荷物が戻ってくることになった。そして家に来いと言う。明後日は土曜日だから、明日中に市役所に行って、住む場所の相談をしておいでと言われる。
桐子は社会科の歴史を担当している。祖母が長野に残したボロ屋を、貸別荘にリフォームして不動産投資することにした。百合と夫の洋次は夫の実家からのお手当で暮らしている。
今年は東京オリンピック。百合子は夫を作業所に送る。桐子と百合子は一歳と三歳で両親を亡くしてから、親戚をたらい回しにされていた。二人は家を持ちたかった。最初は桐子に洋次との縁談を持ちかけられたが、百合子が替わりに受けた。
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老齢の姉妹の人生を20年ずつ振り返って進む物語。
誰だって幸せになっていいはずなのに、どうしてそれを求めるのがこんなに難しいんだと、もどかしく苦しく感じながら読み進めた。
お互いを思いやりながらも、だんだんとすれ違ってしまう。
どちらも間違ってないのにどうしてゴールが違ってしまうのか。
いつの間にか2人の夢は1人の夢になっていた。
それがどうしようもなく切なかった。
けど、切ないけれど、悲しいことなのかな?
月日の流れとともに考え方や矜持、過去の捉え方などは変わるもの。
その時その時を2人は2人なりに一生懸命生きて、なりたかった自分を手の入れたんだと思う。
最後の章で笑い合う登場人物たちにそれが込められてると思った。
どう見えるかはともかく、これが2人の2人なりの人生でどちらもハズレなんかではない。
自分の努力次第で未来は良くできると、限られた範囲ではあってもその中で自由を楽しみ、今ある幸せを享受する百合子は柔軟で素敵だし、
理想の幸せを享受するために、完璧な自由と居場所を手に入れるために、日々を闘うように自分らしくまっすぐに生きる桐子は強くかっこよかった。
幸せは決まった形じゃなくていい。
ずっと追い求めるものだって、そのかたちを変えていいし、そぐわなくなっても変えたくなければ変えなくたっていい。
『間違いを許さないのではなく、どうしたら間違いじゃなくなるかを考える』
懸命に柔軟に自分らしく生きる尊さが詰まった物語だった。
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御殿のような大きな家の庭に立つ二人の女性が、暖かな春の陽射しの中、満開の桜を見上げている。
これは一瞬で目を奪われた表紙に描かれているイラスト。
二人の女性は香坂桐子と百合子、高齢の姉妹だ。
姉の桐子は元教師らしく厳しさがあり、妹の百合子は柔和でお茶目な雰囲気がある。
この見た目も性格も違う姉妹は、いったいどんな人生を歩んできたのだろう。
二〇二四年の初夏、二人の姉妹がこの御殿で同時に亡くなる場面から物語は始まり、時を遡って姉妹の過去が描かれていく。
戦後という時代背景もあり、辛く厳しい人生ではあるけれど、幸せになることを夢見て…
同じ夢を見ていた桐子と百合子はそれぞれの人生を歩み始めると、いつの間にかスレ違いが生じていく。
ぶつかり合い傷つけ合う事もあれど、根底には互いを思いやる優しさがあると分かる。
他人には理解されなくても、二人はそれぞれの方法で幸せに辿り着いたのではないだろうか。
プロローグがとても良かった。
最後まで読み終えてすぐにここに戻って読み返した文章がある。
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この家は、私そのものだ。
見てくればかり大きくて、偉そうで、でも中に住んでいるのは老いた女が二人だけ。
それでも他人は知らない。
私たちが、何を積み上げてきたのか。
この大きな家に守られるだけの力を得るために、どれほどの痛みを感じてきたのか。
そしてそこに、どれほどの幸福があったのか。
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私にも妹がいるが、離れて暮らす月日が長すぎてお互いをよく知らない。というのが正直なところかも。
妹の思う幸せとは何だろう?
じゃぁ私は?
百合子のように〝私は私の場所で〟
幸せを見つけるのが良いのかな(•ᵕᴗᵕ•)
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全然存じ上げなかった作家さんでしたが、可愛い表紙に惹かれて♡
地域福祉課に赴任してきた青年の青葉が この人には会っておくといいと紹介されたのは豪邸に住む、老齢の桐子と百合子姉妹だった。
来た事なんかないはずなのに なんとなくこの豪邸に懐かしさを覚える青葉。
そんな出会いの後すぐ、桐子と百合子が2人揃って同じ日に亡くなっているのが見つかった。
え?ミステリー?と思ったけど、そうではなかった。
戦争孤児であった2人の人生を20年毎に 遡って紐解いていく物語。
夢を追いかけて飛び出し、人の幸せのお手伝いばかりして生きてきた姉、決められた道でささやかな幸せを見つけ生きてきた妹。
淡々と穏やかに語られるけど、時代背景もあって決して穏やかではなかった二人の人生。
幸せの形は人それぞれだけど、桜の咲く豪邸で二人で過ごせた僅かな時間は やっと手に入れたかけがえのない幸せだったんだろうな。
ボキャブラリー少ないので 上手く言葉であらわせないのだけど、なんだか胸が熱くなってホロっときてしまった。
とても良かった♡♡
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戦争孤児で親戚中を転々とし、ひっそりと力を合わせてきた姉妹。
世話をしてもらった家の障がいのある次男との結婚を促される姉、だがその代わりに妹が結婚することに
姉は身代わりになった妹とその不幸から逃れる為に教師として自立しお金を貯めて理想の家を建てる事を目標とする。
可哀想に思っていた妹は実は夫との生活の中で幸せも見出せるようになると、理想の家の為に走り続ける姉と歪みが…
不遇な子供時代を取り戻す事が目的だった理想の家、と姉妹、その姉妹を取り巻く人々。
それぞれにみんなが幸せになる事を目指し、思いを寄せて、妹の百合子の作るいなり寿司も良い味が出ていると感じた。
姉の桐子、妹の百合子、タイプは違うけれど二人とも好き。好きなお話でした。 -
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2024年、豪邸に住む老姉妹。2人の死から物語は始まる。そこから20年、更に20年、又20年、と時代は遡り、姉妹の歴史が明かされる。幼い頃の数年の記憶や経験はその後の人生にかなりの影響を与えるんだなぁと、自分自身を振り返っても共感するところが多かった。けど、例え苦しい時代を共に過ごした姉妹であっても、人生はそれぞれ。環境や生き方が異なってしまえば、価値観も変化してくる。それでも姉妹それぞれがお互いを大切に思いながら、自分自身の幸せを模索していく。姉妹がお互いを思う気持ち、姉妹だからこそ言えない言葉、気持ち。姉という責任、妹という役割。あぁ、もどかしい。
ご縁のあった親子が絡んで、とても興味深く読みました。じんわり温かな気持ちになれる作品でした。良かった。
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豪邸に住む、高齢な姉妹。何不自由ない暮らしをその齢まで続けてきたのかと思いきや。。
姉妹の一生を20年ごとに振り返っています。千絵の章では、姉妹の強さや優しさがよく伝わってきて、なぜここまで皆に慕われているのかが垣間見えます。
その強さや優しさがどんな風に形成されてきたかが、読み進めるにつれわかってきます。恵まれた環境とは言えない中で必死にもがき、どうにか自分なりの信念や幸せを見いだしていく。
姉妹に課された究極の選択には絶句しました。昔だったら、けっこうあり得る話だったんだろうと納得できるくらいなのが、リアルで残酷でした。私だったらどうしたのだろうと考えました。どうにか姉妹に押し付けて、でもその事実に一生苦悶しながら生きるのでしょうか。。 -
Posted by ブクログ
2024年をスタートに、その後20年ずつ3回遡りながら進められる二人の姉妹の物語です。最初に結果が有って、その原因が少しづつ明らかになって行くミステリー的手法。「まだ若い作家さんがこのようなテクニックに頼るのは如何なものか」と思いながら読み進めて居ました。その位、序盤はあまり見るべきところが無い。
ところが終盤、姉妹の心理的葛藤が描かれ始めたところから、グッと締まってきます。自分の為に妹を犠牲にした姉と、意外にもその生活に安逸を見出した妹、という表層から一歩踏み込めば、"妹の為"という隠れ蓑の下で結局は自分の希望を追い求めた姉。そしてさらにその裏には・・・・そんな葛藤が見事に重層的に描かれます。これが普通なら露悪的に成りがちですが、見事に善人の物語として描かれます。
冷たい素振りを見せながら人を幸せにしようと手助けする姉と、厳しい境遇の中でも自分の幸せを見つけてしまえる妹。互いに相容れぬものを持ちながら、最終的には信頼感で繋がったき姉妹の心地良い物語でした。 -
Posted by ブクログ
戦争孤児の姉妹の物語。
厳格な姉と素直な妹。時代が違えば屈託のない人生が送れたであろう二人。でも、苦労の多い人生が幸せではなかった、とは言い難く。厳しい生活ゆえに得られた幸せというものが丁寧に描かれており、じわじわと胸に迫ってくる。現代でもDVに苦しむ女性を描き、時代が変わっても女性を取り巻く困難に目を向けている。しかし、作中の人物に語らせているように、フェミニスト的な視点ではなく、不当な扱いを受けている人がいることが許せない。という根源的な感情から物語が出発している。そして最後にはかっこいい生き様だった、と二人の生き方を肯定しており、読後感もよい。
時間の切り取りも上手く、読み応えのある作品だった。