上田和夫のレビュー一覧
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小泉八雲が外国人だったと最近になって知った。
内容は日本なのに文体が訳書なところが、「外国人が日本を舞台にして作ったゲームに感じる違和感」に似て趣があるというか、独特で面白い。
私は「茶碗の中」が特に好き。
ミステリー的な面白さがありながら、丁度続きが気になるところで尻切れ蜻蛉…前につんのめるような感覚。茶碗の中の男が何者なのか、何が目的なのか…何も分からないまま。
今の時代「分からなさ」を「分からなさ」のままにしておくことはあまり歓迎されず、明快であることが大きな価値基準とされている。それはそれで良いのだが、こういった「どうにも消化できない澱」というのは忘れ難く好ましい。
電灯の届かない不 -
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ネタバレ作者である小泉八雲先生が残した作品集から選び抜かれた作品がまとめられた今作。日本の19世紀の日常の生活や民族習慣、民話や伝説さらには怪談など様々なものが描かれている。
怪談話には、聞いたこともある話がたくさんあり、そのモチーフや最初になった作品なのかな、とも思えた。
また、「日本人の微笑」はとっても興味深い作品であった。これは、小泉八雲が感じた日本の習慣や良いところ、国民性を描いているエッセイみたいなものだった。その中で欧米の価値観である人権の意識や資本主義が導入されると日本人の伝統的な価値観が失われ、貧者への圧倒的な義務を課す社会となるだろう、と予言しており、実際にそのような社会になっている -
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何度読み返しても素晴らしい。上田和夫の訳も好きだ。「影」「日本雑記」「怪談」などの短編集から選ばれた作品集である。英国人だった八雲は妻の節子から怪談話を聞き、それを英文の本にまとめた。その意味で彼は小説家ではなく翻訳家であって、ほとんどの話に出典があり、他の作家も文章に書き起こしているものも多い。有名な「耳なし芳一の話」も元ネタはあるが、似た話は西日本に多く残る昔話で柳田國男は徳島の「耳切り団一」の話を書いていた。私が好きな話は、未完で終わるが故に謎と恐怖が最高潮のままで余韻を残す「茶碗の中」と微笑む日本人の謎について語るエッセイ「日本人の微笑」でしょうか。
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今年読んだ本、イサム・ノグチの評伝や、『坊っちゃん』の時代シリーズなどいくつかに、ちらちらとその気配やうしろ姿を垣間見せていた小泉八雲。
これはどうやら呼ばれているらしいぞということで、この夏の課題図書に個人的に選定し、お盆の時期を狙って読みました。
小泉八雲には多数の著作がありますが、この本はそれらの中から数点ずつ選んで編集されたもので、前半は怪談話が、後半は日本人論が主となっています。
怖い話がめっぽう苦手な私ですが、しかも時期が時期でしたが、これはあまり怖くはありませんでした。
一つ一つの作品が短くて、物語のエッセンスの紹介という体であったというのが1点。
そして、怪談にいたるまでの -
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小泉八雲文学忌、八雲忌
さてと、今年の新潮文庫の100冊に何故か
小泉八雲集。
きちんと分類された短編集で、久しぶり再読の短編もあり、全くの未読も多々あり。
印象的な作品は、日本人の微笑について書かれたもの。決して、日本人の微笑を卑下することなく
悲しみも微笑で表す繊細な状況を理解している。
せっかくなので、再読しなくて良いように覚書多めとなりました。
「影」1900年(明治33年)
今昔物語や御伽百物語に題材をとる。
⚪︎和解(京都)
困窮した若侍は妻を捨て、新たな妻と伝地へ向かう。やがて別れて戻ると、そこは屍の家となっていた。
⚪︎衝立の乙女(京都)
恋い慕った衝立の絵の女が、現実 -
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【一言感想】
曖昧なモノゴトに対して目を向けていくと
感性が成長していく
恐怖の裏にある日本古来の道徳観や教訓、文化、情念などが含まれる怪談に興味を持ったギリシア人から帰化して日本人となった小泉八雲氏が記録・世界に紹介したものの中の代表作を収録された一冊
小泉八雲氏は西洋の利己的な側面が強いことを嫌っていたらしく、物質主義に傾倒しすぎると自分や他人を型に嵌めたがってしまい、感情に対しては薄情となり、道徳観や幸福感も低下してしまうと本書の中でも指摘をしていました("日本人の微笑")
曖昧なモノゴトに対して目を向けていくことで、一つの型に当て嵌めようとはせずに、捉え方の幅 -
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小泉八雲の本を読むと
言い知れぬ女心が、殿方たちを恐れへと
誘っていたのかな。。。
などと、人の心の恐怖へ誘われるけど。。。
本当は日本女性の純粋さ
想い人を遺して先立つ哀れさ
儚い約束を信じて旅立つ哀れさ
その切ない念が小泉八雲を通じて
悲しい運命の女心が切々と綴られていたのが
なんとも心が締めつけられる思いだった。
時代背景から心中が多かったこと。
その理由もこの本から知ることができた。
だから、明治以降の文豪たちの作品には
叶わぬ恋ゆえの悲哀が多いのかな。。。
小泉八雲さん
日本は随分と変わりましたよ。
現代の日本人を、どう書き残してくれるかな。。。
どんな神々の音楽を聞くことがで -
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ネタバレ和解 京都
衝立の女
死骸にまたがる男 大宿直村(おおとのい)
弁天の同情 京都 大通寺
鮫人の恩返し 近江の国石山寺 瀬田の長橋 三井寺
守られた約束 播磨の国加古の村 富田城
破られた約束
果心居士のはなし 信長 清水寺 近江八景
梅津忠兵衛のはなし 出羽の国横手
漂流 焼津新屋地区 紀州の九鬼 荒坂 金毘羅さま 小川の地蔵さま
骨董 伯耆の国黒坂村 幽霊滝
茶碗の中 江戸本郷の白山
常識 愛宕山
生霊 江戸の霊岸島
死霊 越前の国
おかめのはなし 土佐の国 名越
蝿のはなし 京都島原街道寺町通
雉のはなし 尾州の国遠山の里
忠五郎のはなし 江戸の小石川
土地の風習 九州
草ひばり こ -
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2016年、32冊目は、小泉八雲。主に、隙間読書で読んでいたもの。
明治23年、39歳で来日したラフカディオ・ハーン。彼が記し、日本を欧米に紹介した作品の、音楽で言うベスト盤的もの。
小泉八雲と言えば、「耳なし芳一」と言われるような、民話などに根ざした怪談系の前半。日本(人)の精神性、宗教感や風習、等を独自検証を交えた後半といった印象。
近代化の中で、その後の高度成長期によって、現在では、絶滅危惧種と化した、彼の心を動かした「日本的」なもの。その復興、復活を声高に言うつもりはありません。しかし、歴史の流れを切り取ったものとして、西洋人ではなく、現代人に紹介したものと考えて読むコトも出来ま