ダニヤ・クカフカのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
4人の女性を殺害した死刑囚のアンセルパッカーの死刑執行12時間前から物語は始まる。
彼は密かに刑務官のショウナを抱き込み脱獄の計画をたてていた。
アンセルの死刑までのカウントダウンと彼と関わりを持った3人の女性の過去から現在まで。
・感想
ミステリーだと思ってたからてっきりアンセルは冤罪で3人の女性視点からその事実が浮き彫りになる…的な作品かと思ったら全く違った。
アンセル視点では常に二人称代名詞が「あなた」となっていていて、それがこの物語は「別の世界線の私だったかも」という気持ちにさせられる良い効果をもたらしていたと思う。
絶対的な善人も悪人もなく、灰色の世界の中でこのアンセ -
Posted by ブクログ
死刑囚と家族、命の物語… 少しだけ感情の扱いや選択を間違えてしまった人々の未来 #死刑執行のノート
■あらすじ
死刑囚であるアンセルは、間もなく執行の時を迎えていた。彼は刑務官と通じており、直前に脱走する計画をしていたのだが…
同時になぜ彼は死刑囚となってしまったのか、出生から現在に至るまで、家族や様々な人との関わり合いを描いてゆく。果たして脱走は実現するのか、そして関係者たちにはどんな未来がやってくるのか。
■きっと読みたくなるレビュー
家族や命を実直に描いた作品。心の奥底にある善悪の価値観と、欲望、不安、恐怖といった人間の裏側にある感情が、静かに書き記されています。
死刑囚なんて言う -
Posted by ブクログ
時間経過や視点の切り替わり幾つもの仕掛けでアンセルという人物を探っていく物語。
「実存的恐怖と自信喪失」
最後の謝辞を呼んで腑に落ちた。
この物語はアンセルがいかにも自分自身であるかのように描かれている。ーーーあなたはこう考えた…。
まさにクカフカ自身が感じていた実存的恐怖を体感させられる。
実存的恐怖とは、人生に意味がないのではないか、あるいは自分自身のアイデンティティに混乱を覚える内的葛藤のこと。
アンセルは幼少期に体験したトラウマによって上手く形成されなかった部分をなんとか知識や哲学によって埋めようとしていた。それは恋愛でも殺人でも埋められず、結局は血の繋がりという確かなものを求め -
Posted by ブクログ
コラン・ニエルの『悪なき殺人』やホレス・マッコイの『彼らは廃馬を撃つ』を読んだ直後に、その二つを取り混ぜたような雰囲気の本書を手にして、三つがごっちゃになりそうだとの不安を感じつつ、読み進める。三作とも毒が仕込まれたような作品なのだが、結局、毒性の強さは三作中では本書が一番深かったという気がする。
ちなみに『悪なき殺人』はそれぞれ繋がりがなさそうな五人のキャラクターの短編小説が全部語られ終わって初めて全体像が見えるというような構成の妙。しかも各キャラ間の距離感が大きいのでダイナミックな展開が楽しかった。『彼らは廃馬を撃つ』は、章ごとに挟まれる裁判官の言葉が、本書の死刑へのカウントダウンの -
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ダニヤ・クカフカ『死刑執行のノート』集英社文庫。
エドガー賞最優秀長篇賞受賞作。
死刑囚アンセル・パッカーの46年の人生が何故か終始二人称で描かれるという不思議な風合いの作品。
刑務官のショウナ・ビリングズを丸め込み、密かに進行していくアンセルの脱獄計画は成功するのか。或いはアンセルの犯行は全て冤罪で死刑執行の直前で無実が明らかにされるのだろうか。
死刑執行が迫る中、緊迫の時限ミステリーかと思っていたのだが、結果としてアンセル・パッカーの未来は変わらず、何とも言えない消化不良の作品だった。
死刑執行まで残り12時間となった連続殺人犯アンセル・パッカーの46年の人生が母ラヴェンダー、