死刑囚と家族、命の物語… 少しだけ感情の扱いや選択を間違えてしまった人々の未来 #死刑執行のノート
■あらすじ
死刑囚であるアンセルは、間もなく執行の時を迎えていた。彼は刑務官と通じており、直前に脱走する計画をしていたのだが…
同時になぜ彼は死刑囚となってしまったのか、出生から現在に至るまで、家族
...続きを読むや様々な人との関わり合いを描いてゆく。果たして脱走は実現するのか、そして関係者たちにはどんな未来がやってくるのか。
■きっと読みたくなるレビュー
家族や命を実直に描いた作品。心の奥底にある善悪の価値観と、欲望、不安、恐怖といった人間の裏側にある感情が、静かに書き記されています。
死刑囚なんて言うと自分には関係のない話と思いがちですが、作品内の登場人物は決して特別ではなく、どこにでもいる普通に人々。少しだけ感情の扱いや選択を間違えただけ。
読み進めるのにパワーがいる作品ではあります。しかし人間が生きるとはどういうことなのは、なぜ裁かれるような罪を犯してしまうのか、覆い隠された部分を知ることができるのです。
本作は筋書きよりも人の感情をつぶさに描いた純文テイストに進行してゆく。登場人物の苦しみや葛藤が丁寧かつ表現豊かに書かれていますので、じっくりと味わってもらえると思います。ひとりひとりのキャラクターがあまりに切なすぎるので、一言ずつコメントを寄せてみました。
〇ラヴェンダー(死刑囚の母親)
つい彼女が悪いと思ってしまいがちだが、物語の最後まで読み進めてゆくと、彼女こそ救ってあげなければならない人だった。子を想う母の気持ち、愛情が痛々しく涙が止まらない。
〇サフィ(死刑囚の幼馴染であり、現在は刑事)
人生で失望することも多いですが、これほど辛いシーンもあまり見たことがない。ただ親友クリステンの存在が大きく、これからの人生の希望になってほしい。
〇ブルー(死刑囚の姪)
彼女がいたおかげで、死刑囚も読者も救われる。しっかりと現実を受け止め、人生に糧として学び、明るく生きてほしいです。
〇ヘイゼル(死刑囚の妻ジェニーの双子の妹)
ずっと端から関わってきた女性、心の奥底からの叫びが聞こえてくるし、実は一番死刑囚の気持ちと近い人物かもしれない。姉とは別の人生を歩めて本当に良かった。
〇アンセル(死刑囚)
世の中には恵まれない環境で育った人はたくさんいる。それでも幸せな家庭を気づいたり、社会に貢献している人もいっぱいいるということを知って欲しい。ただ幼い頃の愛情不足、青年期における成長不足が犯罪に繋がってしまう。他人事だと思わずに、社会全体で支えなければなりません。
■ぜっさん推しポイント
罪を犯せば罰が与えれれる。
世の中の秩序を保ち、すべての人々が幸せに安心で暮らすためであり、被害にあった人や家族にとって償いのひとつでもある。しかし亡くなった人は帰ってこないし、事件の関係者たちも辛くやりきれない思いが残るだけ。彼らは必死にその時その時を生きているだけで、幾分かの選択肢などないし、行為自体にも目的も善悪もないのだ。
果たして誰のための罰なのか。
ただ自分の人生に責任を持っていけなければならないという教訓が、しっかりと胸に刻まれる。人生にやり直しはきかないし、苦しみながら人生の終わりを迎えるのは絶対に嫌だからだ。