葉山博子のレビュー一覧

  • 南洋標本館

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    日本の台湾統治50年。とても長い。それによって生まれる歪みは、人々を翻弄する。それでも植物学者たろうと生きる陳と琴司。おもしろい。もうちょっと陳の米国での葛藤も読んでみたかった。

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    2025年11月15日
  • 南洋標本館

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    著者のアガサ・クリスティー賞受賞後第一作。在台日本人と台湾生まれの本島人の男性二人が共に南洋探険と植物学研究を志すも、一方は戦争のために、もう一方は本島人というアイデンティティゆえにそれぞれの壁にぶつかっていく、というストーリー。
     
     物語の展開もさることながら、歴史的背景のディティールが現在の研究の水準に拮抗するレベルで精緻に、かつ生彩ある形で書き込まれていて、著者の力量を感じさせる。中でも著者は、在台日本人・琴司のパートよりも、本島人・陳永豊のほうにより焦点を当てていく。陳(台湾語読みで「タン」と読ませる)の実父は台湾民主国のリーダーのひとりで、彼はその父の最期を知る本島人の通訳によって

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    2025年11月02日
  • 南洋標本館

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    前作「時の睡蓮を詰みに」で感動し、待ってました、この作品!もう圧巻!これほんとにフィクションなの?そいでお一人で書いてるの?…凄すぎる。今1番気になる作家さんです!語彙力なくてすみません。日本人必読。やっぱり学校の歴史って公平に教えてないのだなと思う。いやそれはどの国も仕方のないことか…。ただただ戦争は起こらないでほしいと、みんな仲良くしようぜ…と祈るだけのへなちょこ日本人です…。お会いしてみたい。ダ・ヴィンチあたりで特集してもらいたい。そして、個人的に当たりの本はいつも坂野公一さん装幀だ!

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    2025年10月18日
  • 南洋標本館

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    戦時中の出来事は全然知らないので少しずつ知識を深めていきたいと思わせるような小説だった。1週間もかかって読み終えた2人の植物学者のドラマは波瀾万丈でお金があってもこの時代、占領下にあったらなくなってしまう。生きていくのにお金ではなく意志の強さ、情熱が必要でしぶとさもなくてはいけない。すごく考えさせられる内容と分厚さで久々に長く付き合った一冊だった。
    でも諦めずに読んでよかったし、途中でやめることができないぐらいに没頭した。

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    2025年09月21日
  • 南洋標本館

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    〈「琴司君、どうだろう。きみはこれから内南洋の植物を究めて、僕は外南洋を究める。そうしていつか、僕らで南洋植物専門の標本館を作らないか?」〉

     父親を不当に処刑されて、富豪の陳家の貰い子となり、陳永豊と名乗るようになった台湾人の少年は、大正十一年、総督府高等学校尋常科に入学する。ほとんどが日本人が占める学級内で、夏目漱石を愛読し、清らかな日本語を扱う陳と同級生になった台湾で生まれ育った生田琴司は友情を育んでいく。植物を愛するふたりにとって、植物をひたむきに追いかけ続ける人生こそが、一番の望みだったのかもしれないが、戦争の暗い影はそれを許してはくれなかった――。

     彼が陳永豊と名乗るまでの壮

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    2025年07月18日
  • 時の睡蓮を摘みに

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    なんて素晴らしい!相応の知的レベルを求められるが、頑張りました。素晴らしさを伝えるためには、絶対に漫画か映画になさったほうが良いかと思います。漫画は大和和紀先生イメージ!学のない一般人から申しますと、、それぞれの方の人生の続きが読みたかったなです。歴史、戦争を学ぶため軽いうわべだけの多様性?を叫ばれる今こそ、たくさんの方にもっともっと読まれるべき。ベトナムにへらへら旅行した自分を恥じました…。

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    2025年06月08日
  • 南洋標本館

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    全然思った話と違ってびっくりした。
    植物学者の話だけど、
    これは歴史の話だ。
    台湾が日本の統治下にあったと知識としてはあるが、
    それがどういうことなのか、考えさせられた。
    当時の人々の感情に想いを馳せられる、
    これが文学の力なのだと思う。

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    2025年09月28日
  • 南洋標本館

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    台湾は2回しか行ったことがないが、とても好きで、これからも何度も行きたいと思っている。
    台湾は親日とか言うけど、どうなのか、日本人がそんなこと言っていいのかとは思っていた。
    ただ、植民地下で生きた現地の人のことをしみじみ考えることはなかった。
    この小説を読んで初めて、植民地で生きるということはこういうことなのかと細かく実感できてとても良かった。
    本人にはほとんど意志的ではない波乱万丈の人生の中で、植物学が芯になり、どれほどの苦しい境遇にあっても一筋の道を生きられたことは幸運であった。このようなものがあることは重要なことだった。
    それと対比する形の人生を送った琴司。彼は彼なりの苦労をしたとしても

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    2025年09月16日
  • 南洋標本館

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    舞台が戦前の台湾と戦中のインドネシアということで、非常に興味深く読んだ。
    特に台湾では、本当人の思いがよく理解でき私の中にあった失われたピースが埋まった気がした。
    しかし物語としては冗長で、理屈っぽく、必ずしも共感出来なかった。その意味でとても残念に思った。

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    2025年11月26日
  • 時の睡蓮を摘みに

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    戦時中の仏印を舞台とした物語り。この時点で知らないことばかりで好奇心がくすぐられる。さらに天然ゴムを巡るエコノミクス、中国における日本人捕虜の扱い、憲兵の生態、塩見聖策、汪兆銘襲撃など、興味深いトピックが満載だった。
    ただ、モチーフが多すぎて、逆に焦点がボケてしまった感じがある。1つか2つを掘り下げてストーリーを作っていたらもっと良かった。

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    2025年10月13日
  • 南洋標本館

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    戦時中の激動の時代の中で生きた2人の植物学者の話。日本支配時代の台湾のことなんて全然知らなかったし、インドネシア統治のことも、資料や教科書で読むのと、小説で読むのとでは大違い。その時代をリアルに感じられるのが小説の役割だよな…と考えさせられました。陳の激動の人生、最後は幸せだと思えたのか…。植物への情熱が生きる原動力となり得たのか。生まれた場所が、時代が違えば、彼はもっと簡単に優秀な学者として世界的に活躍できただろうに。他国を支配する、侵略する、戦争する、その行為の末にどれくらいの人の人生が壊れるのか、思いを巡らせた作品。

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    2025年09月20日
  • 時の睡蓮を摘みに

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    ミステリの大家の名を冠する文学賞を受賞しながらも、些かミステリらしからぬ作品でした。確かに資料を読み込んでいるのは解るのだけど、それ以上のものを感じません

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    2025年09月04日
  • 南洋標本館

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    日本統治下の台湾で皇民として生きなければならなかった本島人の陳(タン)と、台湾生まれの内地人琴司のアイデンティティのひずみを巡る苦悩は読んでいてつらくはあるのだけれど、奇跡的な平和の中で、生まれた土地と国籍が一致している私がそれを“分かる”と感じ読んでしまってもいいのだろうかと、少なくない後ろめたさに似た感覚をおぼえもして、読み終わったいまも咀嚼した物語をすべて飲み込み「面白かった」とただ手を合わせるのには微かな躊躇いが有るにはある、それくらい考えさせられる核をもっていた。境界線、文化、そしてそこにある人々の生活と続く人生を無慈悲に捻じ曲げた戦争という圧倒的な暴力によって流れた夥しい血が直接の

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    2025年08月22日
  • 時の睡蓮を摘みに

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    膨大な資料から書き上げた作品だとは思うのだが、歴史の流れに傾倒するほど物語が不鮮明になっていた。

    主人公の鞠が奔放であるようで無自覚な部分は好きになれなかった。
    いつの間にか植田が立場を逆転させていたりするのも、変更の過程や中身がよく分からなかった。
    後半の前島の生い立ちは彼の人となりを表して好感がもてたが、彼と鞠の関係は全く必要がないようにも読めて、散漫な物語に感じた。

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    2025年03月31日
  • 時の睡蓮を摘みに

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    植民地、戦中の
    人々が感じていたのでは、
    ということがリアルに書かれいて
    興味深いが、小説としては
    主人公が途中で交代して
    明かされないままの謎が
    あったり、今後に期待、という感じ

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    2024年04月28日
  • 時の睡蓮を摘みに

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    戦前、1936年からの仏領インドシナを舞台にした物語。アガサクリスティー賞受賞と言う事で期待して読み始めたが、なんと途中から主人公が鞠ではなく前島なのでは?と思った。歴史小説と言えばその様なテイでありミステリー性は低かった。皆さんが感想されている通り、結局何が語りたかったのか植民地政策の非常さなのかが不明。が文章はとてもこなれているので残念だった。

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    2024年04月20日