葉山博子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
台湾は2回しか行ったことがないが、とても好きで、これからも何度も行きたいと思っている。
台湾は親日とか言うけど、どうなのか、日本人がそんなこと言っていいのかとは思っていた。
ただ、植民地下で生きた現地の人のことをしみじみ考えることはなかった。
この小説を読んで初めて、植民地で生きるということはこういうことなのかと細かく実感できてとても良かった。
本人にはほとんど意志的ではない波乱万丈の人生の中で、植物学が芯になり、どれほどの苦しい境遇にあっても一筋の道を生きられたことは幸運であった。このようなものがあることは重要なことだった。
それと対比する形の人生を送った琴司。彼は彼なりの苦労をしたとしても、やはり陳よりは相当楽だった。
80年はあまりにも遠いけれど、この小説を読んで考えるに、アジアの国に対する日本人の思いは、相手の国より相当薄いような気がする。いじめっ子はとうに忘れている出来事を、いじめられた子は大人になっても全く忘れられないという関係にも似ているのかもしれない。その時代のことを知る人が双方で全員いなくなった時、どういう形で、どういう思いで歴史の事実は捉えられていくのか。
そうは思いつつ、2人がまた再会して南洋標本館を作るみたいな夢の結末を期待していた自分は、まだまだわかっていないと反省した。
「どうして人はより愚かな存在に惹かれ、低い物を高い所に置いて崇めようとするのか。自分の心に嘘をついてまで愚者を礼賛しつづけるのか?」 165ページ
-日本人である僕の三十七年間の幸福は、きみを三十七年間抑圧し、あらゆる不条理と我慢を強いることによって成り立っていたものだ。僕らは、日本の台湾支配は合法的だったと言い、あらゆる苦痛と哀しみを合法化してきた。 494ページ
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Posted by ブクログ
見誤った。
てっきり植物図鑑的な解説本だと思ってた。
とんでもなかった。
小説だった。それも500ページ以上の。
それも、大東亜戦争下、日本に併合された台湾で、
日本軍人に何の罪もなく殺された台湾人の子息が、
富裕層に引き取られ、学び、
医学の道に進むべく東京の大学に入り、
しかしなぜか植物学を学び、インドネシア、ニューギニアに赴任し、
いつしか戦争に巻き込まれていく、、、
実は斜め読みでそんなに筋を覚えていない。
登場人物も誰が誰やら。
ただ、戦争に翻弄された台湾人が、
戦後軍事裁判にかけられ、ある証言のおかげで無罪となり、
というくだりは緊張感があった。 -
Posted by ブクログ
日本統治時代の台湾に生まれ育った、台湾人の陳(タン)くんと日本人の琴司くん。植物学に魅せられた2人の人生。前半はインドネシア諸島への植物採集探検、後半は戦争。
戦中のインドネシアについてよく知らなかったので勉強になった。興味深く、読んで良かったと思えた本。
読みながら様々なことを思った。
読み始めは台湾が舞台だったから凡そ25年前に親交のあった台湾人の友人を思い出した。
彼はおばあちゃん子で、日本語を話す祖母から「日本人には優しくしなさい」と言われて育ったと言った。私は申し訳なくて謝った。
読み進めていくうちに、私は日本人であることが恥ずかしくなって、居た堪れなくなった。戦前戦中の歴史小説を読む度にそう感じる。
愚かで厚顔無恥な権力者が政を為す日本だった時代に行った極悪非道の数々。
情けなくて、日本人であることが恥ずかしくなる。 -
Posted by ブクログ
日本統治下の台湾で皇民として生きなければならなかった本島人の陳(タン)と、台湾生まれの内地人琴司のアイデンティティのひずみを巡る苦悩は読んでいてつらくはあるのだけれど、奇跡的な平和の中で、生まれた土地と国籍が一致している私がそれを“分かる”と感じ読んでしまってもいいのだろうかと、少なくない後ろめたさに似た感覚をおぼえもして、読み終わったいまも咀嚼した物語をすべて飲み込み「面白かった」とただ手を合わせるのには微かな躊躇いが有るにはある、それくらい考えさせられる核をもっていた。境界線、文化、そしてそこにある人々の生活と続く人生を無慈悲に捻じ曲げた戦争という圧倒的な暴力によって流れた夥しい血が直接の戦場描写はなくとも行間を確かに伝い落ちている。南洋の島々での採集探検のシーンでの噎せ返るような湿度や草熱れなども含めて、見えないものをちゃんと見せてくれる文章だと思った。