ルーシー・ウッドのレビュー一覧

  • 潜水鐘に乗って

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    『潜水鐘に乗って』
    著者 ルーシー•ウッド
    訳者 木下淳子 

    この本は、ルーシー・ウッドの出身地である、英国コーンウォール地方のさまざまな伝説や伝承を元に紡がれた12の短編集になっています。
    イングランドのコーンウォールという、その国、その地、独特の物語があります。
    装丁画の持つ雰囲気と解説に惹かれて購入し、ゆっくりと時間をかけて読み進め、堪能しました。
    静けさの中に、時を生きた人々の想いを感じられるお話が心に残ります。

    【目次】より。
    潜水鐘に乗ってー48年ぶりに夫と再会するため、
        旧式の潜水鐘で海にはいっていく老婦人。
    石の乙女たちー身体が石になる予兆を感じた女性
        が過

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    2024年07月19日
  • 漂着物、または見捨てられたものたち

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    冬曇りの孤独な海が好きなので、タイトルと装丁に惹かれて手に取ったらば大当たり!
    コーンウォールを舞台に語られる短編集は、そのどれもが寂寞と、停滞と、焦燥とに満ちている
    ここではないどこか、豊かな何か、愛せる誰かを求め続けていながら、あと一歩が踏み出せず、荒い海風や冷たい荒野に囚われ続けている登場人物達がとてもリアルで愛おしく、美しい情景描写も相俟って、まるで私まで冷たい潮風や細かい砂の匂いを間近で嗅いだような気がした

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    2025年10月01日
  • 漂着物、または見捨てられたものたち

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    向かうべき所を見いだせず、かといって留まるだけの確たる故もない。積み重ねた記憶だけが土地にしみ込み込み溶けあってゆく。
    読み耽っていると、ふとそんな言葉が浮かび、いつしか胸に満ちてゆく。
    夏の陽光を求めて押し寄せていた観光客が一斉に引き上げた後の、閑散とした海辺の町を舞台として語られる物語は、寂寥感を滲ませながら翳りゆく波間にちらちらと鈍色の美しさを放つ。

    ルーシー・ウッドのシンプルで静謐な筆致の見事さと共に、細い糸がピンと張り詰めたような緊張感がどの物語にも漂い、惹きつけられてやまない。
    親愛の情と相容れなさを併せて飲み下そうする父と息子、過ぎた時間が作った隙間を思いがけず乗り越えてゆく姉

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    2025年07月01日
  • 潜水鐘に乗って

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    短編集12編
    イギリス,コーンウォール地方の伝承などを元にして幻想と現実が混じり合ったような味わいの物語.家に住み着く精霊や変身譚など変化に富む内容.少しわかりにくいのや,単に認知症なのでは?というのもあるが,面白かった.
    鐘の潜水艇に乗って50年も前に海の底に沈んだ夫を探す表題作,孫オスカーと洞窟に住む祖母との交流を描いた「浜辺にて」が良かった.

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    2024年10月02日
  • 潜水鐘に乗って

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    イギリスの幻想小説ですね。
    作者はルーシー・ウッドさん、イギリスのコーンウォール出身。この作品がデビュー作です。サマセット・モーム賞、ホリヤー・アン・ゴフ賞を受賞。
    訳は木下淳子さん翻訳家。
     木下淳子さんが、原書を読まれて是非とも日本で出版したいと形になった本です。木下淳子さんは訳出するにあたって、コーンウォールを訪れた事が無いので、井村君江さんの『コーンウォール 妖精とアーサー王伝説の国』を参考にされたそうです。情熱と愛着の結晶ですね。
    「ルーシー・ウッドが故郷の自然や風土、そこに息ずく伝説を愛情深く生き生きと描き出していることがわかった」とあとがきで記されています。
     十二編の短編は、伝

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    2024年08月04日
  • 漂着物、または見捨てられたものたち

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    文章が詩的で寂しさと寂寥感を掻き立てられる内容でした。
    人間は停滞していたくても一つの場所にはいれない。そう思わせられました。

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    2025年11月16日
  • 漂着物、または見捨てられたものたち

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    デビュー作の『潜水鐘に乗って』(未読)でサマセット・モーム賞とホリヤー・アン・ゴフ賞を受賞した作家の第2短篇集。13篇を収録している。
    うーん、これは苦手なタイプの作品集だった(^_^;)。映像的ではあるのだが、そこからなにを感じればいいのかがわからない。ただ文章を愉しめばいいのかとも思うし実際それで愉しめたけれど、中には内容がまったく理解できない作品もあった。
    解説によれば、出身地のイギリス・コーンウォールを舞台にしているそうだが、そもそもこの地についての知識が皆無なので、理解の助けにはならなかった。

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    2025年06月21日
  • 潜水鐘に乗って

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    ネタバレ

    ディケンズの「大いなる遺産」のピップの故郷が思い浮かぶような背景で描かれる「魔犬」が特に印象に残った。孤独な雰囲気をまとう父と娘が、ある夜、寒く暗い荒地を歩いて流星群を見に行く…その情景が切ないほど美しいと思った。

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    2024年12月19日
  • 潜水鐘に乗って

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    理屈で読んではいけない一冊。「浜辺にて」くらいまではあまりの謎世界ぶりに混乱してばかりだったが、訳者あとがきを読んでようやく、英国風の妖怪奇譚と捉えればよいのだとわかった。それにしてはどれもこれも、人間の女性の寂寥感に溢れすぎているのだが。

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    2024年07月31日
  • 潜水鐘に乗って

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    ネタバレ

    ルーシー・ウッドの短編集。本邦初訳。
    表紙が良く、ジャケ買い。

    ジャンル的には幻想文学か。コーンウォールに伝わる伝承が日常に溶け合っており、不思議な余韻を残す短編が多い。
    非常に良い作品もあったのだけど、いかんせん文章が入ってこないことが多かった。霧の中を彷徨う読み応えなら良いのだが、どちらかというと泥の中を歩く感じ。なかなか時間のかかる読書になった。以下、作品ごとの感想。

    ◎潜水鐘に乗って
    48年前に生き別れた夫に会い、海の底へ向かう老婆の話。沈んだ船にまとわりつく死霊なのか精霊なのか。相手が死んだ時のまま変わっておらず、自分だけが年老いたため声をかけずじまいの最後が切ない。

    ◎石の乙

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    2024年01月28日