ヘイリー・エドワーズ=デュジャルダンのレビュー一覧

  • 色の物語 青

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    美術館で作品を眺めながら、博物館で展示物を眺めるような、ワクワクとした気持ちになりました。もちろん青色が好きな人にもオススメ

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    2026年06月27日
  • 色の物語 黒

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    21世紀になっても、黒の塗料の開発は進められ、2019年、99.995%の光吸収率の黒の開発がされている。表面の凹凸が分からないというので、軍事兵器にも使われているとか。まじか。
    ニュートンはプリズムの観察から、色は光、闇である黒は色でないとし、アリストテレスの黒を色とする考えを一蹴した。ゲーテはそれに反対して、色は光を暗くし、闇を照らすとしたが、今の理論では間違いであった。
    ギリシャやローマでは意外と黒は使われているが、中世では好まれなかった。暗闇を連想させたから。ルネサンス以降は、黒の価値が見直されてくる。黒によって表現の幅が広がるのである。ウェイデン「善良公フィリップの肖像」、レンブラント「女性の肖像」、ゴヤ「マドリード、1808年5月3日」など効果抜群だな。さらにホイッスラー「灰色と黒のアレジメント第1番:画家の母の肖像」、マネ「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」、サージェント「マダムXの肖像」など黒でなければならない作品だ。スーラ「クールブヴォワ:月影の工場」はキャンバスの凹凸を生かし、コンテによって、黒で光を表した。マレーヴィチ、スーラージュ、カプーア、カルダー、ビュフェ、セラたちの現代組も凄いよな。
    ちょいと豆知識。フレスコ画の漆喰だが、水分が蒸発すると、石灰に含まれる水酸化カリウムが表面に浮き上がり、空気中の二酸化炭素と接触して炭酸カルシウムに変化。これが顔料を下地に固着させる。顔料とバインダー(固着剤)からつくられる絵の具と違い、フレスコ画は顔料のみで描かれる。

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    2026年06月07日
  • 色の物語 ゴールド

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    私にとってこのシリーズを読むことは、高級チョコを愛でることに似ている。
    各テーマに沿った選りすぐりの作品が世界中から集められ、まるで一つの箱に収められているよう。一粒一粒が珠玉で、我々の目を楽しませてくれる。
    青・ピンク・黒・赤、そして今回遂に「ゴールド」まで辿り着いてしまった…!

    ゴールドといえば、私はまず「金の茶室」といった権力の誇示を連想する。
    昔からゴールドは神の色と相場が決まっていて、神殿といった宗教施設に多用されてきた。また、世界中の権力者たちはそうした神聖な色にあやかろうとするかのごとく、自身の周りをゴールドで固めてきた。
    最初に登場する「ツタンカーメンの黄金のマスク」(P 16)が、良い例かもしれない。

    本当にいつ見ても滑らかな黄金!これぞ永遠の輝き・美しさ…!「2枚の金板を重ね、槌で打ち出して作られ」ても、こんなに滑らかになる?
    悲劇の少年王を思って丁寧に設計されたんだなーと、一人歴史ロマンに浸っていると、「別の人物のために作られていた説」が本文の隣で浮上していた…。
    歴史ロマンやなくて、歴史ミステリーやん。

    権力でいえば、「侯爵夫人マリア・セッラ・パラヴィチーノの肖像」(P 72)も抜きん出ていた。ただ本作は威圧感というより、圧巻なんだけど妙なとっつきやすさを感じたんだな。
    1606年に描かれたイタリア貴族の肖像画で、女性自身ではなく、正真正銘彼女の身分を描いている。しかし、ゴールドの装飾が施されたドレスを纏っていながら、表情は柔和で、畏まった様子が見られない。
    何だかゴールドを上手く手懐けているみたいで、「やっぱ一流は違うなー」と、自動的に感心していたのだった。

    「金は、わたしたちの失敗であり希望であり、現実であり、恐ろしい幻想なのです」(P 8)

    日本からは「黒樂茶碗」(P 80)と「鳳凰図屏風」(P 82)が「出展」されている。
    本書の著者はフランス人だが、日本人以上に、茶器の価値を理解しておいでだと思う。ざっくり言うと、黒地に金の富士山が浮かび上がった見栄えなのだが、それを「何事にも動じない静かな心」と的確に表している。
    前述の権力とは違えど、ゴールドはここでも揺るぎない存在だった…!

    「鳳凰図屏風」は北斎作らしいが、初見だ。それもそのはず、現在はボストン美術館蔵との事…!(「黒樂茶碗」は大英博物館蔵)
    ゴールドを背景に極彩色の鳳凰が屏風の中を舞うという、何ともダイナミックな演出。良いものはすぐ買い取られちゃうんだな…正直、もっと多くの日本人に知ってほしい作品である。

    P 56の”The Golden Calf”が未だに頭からこびりついて離れない。ダミアン・ハーストの作品で、何とゴールドで縁取られたショーケースに本物の子牛がホルマリン漬けにされている。
    2ヶ月前に読んだ内澤旬子氏の『世界屠畜紀行』を思い出す。かつて生きていた動物を作品にする行為って、食べるのと同じくらい考えさせられないか…?

    何とも刺激的で、矛盾した味わいを持つ「チョコたち」だった。
    神の色ねー…栄光をもたらしたり溺れさせたり、我々を弄ぶ罪な色の間違いなんじゃないか?

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    2025年06月11日
  • 色の物語 青

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    絵画での青の顔料を取り上げ、その変遷と青を顕著に使った絵画、美術品を様々に紹介している。
    青の植物由来の天然色素は、木藍、パステル(ウォード)、鉱物由来の天然色素は、ラビスラズリ、アズライト、合成色素は、エジプシャンブルー(エジプト)、ウルトラマリンブルー(フランス)、コバルトブルー(フランス)、インディゴブルー(ドイツ)、プルシアンブルー(ドイツ)。
    古代エジプトで既に合成色素のエジプシャンブルーが作られていたのには驚いた。スフィンクスの置物が鮮やかな青なのである。ジョットが高価なラビシラズリを使うことができずに、アズライトを使っていたとか。おいおい、教会は資金を出してやらなかったの?葛飾北斎がドイツで1706年に開発されたプルシアンブルーを、あの神奈川沖浪裏に使っていたそうな。ほうほう。オランダから輸入したやつなんだろうな。
    様々な絵画が紹介されているが、青という色彩が持っている清冽さや神秘性、静謐さなどが徐実に現れていて感心する。フリードリヒ、ホイッスラー、ルドン、スタールなどにとってはかけがえのない色だろう。ホックニーやホッパーの絵の青は、なんだろう、虚無の厳しさ、圧力などを示していて、強烈だ。

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    2025年05月04日
  • 色の物語 赤

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    原色オブ原色!赤は特にお気に入りで、今履いているルームソックスも赤だ。

    本書曰く、赤は人間の視覚が最初に捉えることのできる色調で、人類が最初に命名した色でもあるとの事。そんな由緒正しきお色だからか、ある時は権威、またある時は不道徳の象徴だったりと、実に様々な意味合いを赤は含んでいる。
    本書で取り上げられている作品群の雰囲気も、今までのシリーズと比べると、アップダウンが激しかった。元は同じ赤なのに、ここまで印象が違うもんなの!?的な。

    副題の「ポンペイからロスコまで」。
    ポンペイの街を襲った悲劇には心が痛むが、火山灰が残してくれた遺産はミラクルと断言して良い。建物や彫刻は原型を留めているし、『秘儀荘』(P 20)のような壁画も、当時のカラーのままで残っている。
    …と言いたいところだが、実はこの『秘儀荘』で使われている背景の赤は、元々は黄土色だったという説があるらしい。何でも、火山ガスと画に使用された鉛と水銀が反応し、赤へと変色したのかも?…って。
    鉛と水銀を使用していた絵師さん?たちの健康状態を心配しつつ、むしろ変色後で良かった!と感嘆した。

    「色と形の関係のようなことには興味がありません。わたしが関心を持っているのは、人間の基本的な感情、悲劇、陶酔、破滅を表現することだけです…」(マーク・ロスコ、P 52)

    マーク・ロスコって画家の名前は初耳だったけど、『Untitled』(P 52、1961年)の赤は、視界がじんわりと温かくなった。
    いわゆる抽象画で、朱色がかった赤が二段に分かれてキャンバスいっぱいに塗られているだけ。なのに本書の中では好きな作品の部類に入っている。
    今までのくっきりとした赤を見慣れていたせいで、このトマトスープのような優しい赤に惹かれているのかも。

    権威的なものでいうと、中国の鼻煙壺(びえんこ、P 74)が強く印象に残った。
    上流階級が嗅ぎタバコを嗜む際に用いる壺で、フタについた小さなヘラでタバコをすくい、親指の爪の上に乗せて吸い込むという。
    とにかく、ビジュアルがおどろおどろしい。ほぼ全面赤の漆器で、その光沢は高級感よりも毒々しさを引き出している。一体、お貴族様たちはどんな顔して吸っていたのか…どうしても平穏な光景が浮かんでこない汗

    日本人枠では、草間彌生と塩田千春が選ばれていた。
    草間彌生(P 56)の”Red Dots”(2011年)は、彼女の代名詞とも言える水玉模様が、これまたキャンバスいっぱいに散りばめられている。集合体恐怖症だが、勇気を振りしぼり目を凝らしてみると、水玉同士がくっついていたりなど色々と発見があった。
    塩田千春(P 104)は、現在ベルリンを拠点に活動されていて、ご出身は岸和田とのこと。
    無数の赤い糸がボートに絡み付いていて、私にはたぎる血のように思えた。(だんじり祭りの時のような笑) ボート単体では無機質だけど、そこに糸が加わることで、ボートが生きているような錯覚すら覚える…。


    それにしても、原色オブ原色の作品なんて、この世にごまんとある。他のシリーズもさることながら、その中から一体どうやって作品をセレクトしたのだろう?
    インタビューできるんだったら、真っ先に聞きたい!

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    2025年03月31日
  • 色の物語 ゴールド

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    色の物語シリーズ第5弾。全シリーズ読みたいのですが値段も値段なので。ゴールドの作品や歴史と言えば、ツタンカーメンやクリムトの接吻がパッと浮かびますが、ちゃんと載っていました。まさかの出会いはジェフ・クーンズのマイケル・ジャクソンとバブルス。こんな所でバブルスくんが見られるなんて。

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    2025年02月01日
  • 色の物語 青

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    借りたもの。
    副題通り、古代エジプト(エジプシャンブルー)からイヴ・クライン(IKB/インターナショナルクラインブルー)まで。
    青という色を得る事の困難さ。
    木藍(インディゴ)などの天然資源に頼らざるを得ず、鮮やかな青はラピスラズリやアズライトといった宝石・貴石類が原材料だったため、高貴な身分ないし宗教的なものに使われていた。
    1704年に初めて合成された人工化合物・プルシアンブルー(紺青)の登場がいかに画期的であったか……
    葛飾北斎《神奈川沖浪裏》についても言及されていた。
    日本人としては嬉しい限り。
    そしてこのダイナミックに誇張された波のインパクトは「なるほど(海外にとって日本の)ポップアイコン(となっているん)だなー」と、納得というか感心?してしまった。藍と比較して紺青の鮮やかさは、本当に目を惹くだろう。

    合成色素で容易に手に入るようになり、風景画では壮大な空や海を描く事に大活躍し、19世紀末以降は、リアルな表現をするための色から精神性や感情を表す色へと変化していったという指摘に納得。ピカソの青の時代とか。

    前半の解説の後、青が効果的に使われている美術作品、工芸品について、個別の解説がされている。
    現代に近くなればなるほど、心象風景の世界に、作品が移行していくような掲載順。

    写真で掲載されている、イヴ・クラインの作品は、青が暗いような印象を受けたけど……
    前に何かで見た作品は、背景の金と相まって、輝くような鮮やかな青の印象だった。顔料もそんな感じがしているのだが、それは私の思い出補正か?

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    2024年09月19日
  • 色の物語 黒

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    このシリーズ、ジワジワ好きになりつつある…。
    一つの色を軸に、古今東西のアート作品を鑑賞していく「色の物語」シリーズ。作品の感想をひたすら並べたりと大したレビューは書けていないが、何が観られるのか毎回楽しみにしている。
    記念すべき第3回目は「黒」。

    自分が黒と聞いてまず思い浮かべるのは、「無難で目立たない色」のイメージである。
    ファッションに困ったらとりあえず黒を着ておけば間違いないし、悪目立ちしない。芸能人の私生活スナップも黒を中心とした暗色を纏っていることが多い。

    しかし読後の現在「黒ってあたたかい色なのかも」と、自分の中の固定概念がちょっぴり揺らいでいたりする。
    「夜、不幸、死など実体のないものを認識するため」に利用されてきた黒色が、何故自分には「あたたかい」と映ったのか。きっかけとなった作品を振り返っていきたい。同時に、また個人の鑑賞ノートになってしまうことをお許し願いたい…。

    《生誕》ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1648年)
    「あたたかい黒」の代表作をいきなりここで出すという…。
    暗がりの中で蝋燭に照らされた聖母マリアが、幼子イエスを抱いて微笑む画。蝋燭は煌々と灯っており、闇はオレンジがかった黒に、人肌はシルキーに映し出している。暗がりに浮かぶ人影なんて不気味なはずなのに、一切それを感じさせない。検索して観ていただけたら幸いである。

    《画家の母の肖像》ジェームズ・ホイッスラー(1871年)
    最初に飛び込んできたのは、全体のコントラスト。
    グレー地の壁と並行して座る、クラシカルな黒衣の老女。その前方にはネイビーのカーテンがかかっている。著者曰く、彼女の足置きは日本製・ネイビーのカーテンは中国製で、前衛的な雰囲気の部屋とは対極をなしているという。コントラストはここにもあったか。
    ドレスもマットな黒なのに、周りの配色にうまく溶け込んでいて、陰湿な雰囲気は皆無だ。

    《カーネーション》アンリ・ファンタン・ラトゥール(1877年)
    グッズで欲しい…というちゃちいコメントはさておき、色とりどりの花が我々を出迎えてくれる本作。印刷の関係か、背景は茶色がかったような黒。美術館だとまた違って見えるのかな。
    薄々勘づかれている方もいると思うが、対象物によって黒のキャラクター性は変わってくる。《カーネーション》では、黒は花の「引き立て役」として成立している。かといって「目立たない色」でもないのが評価すべきところ!

    《女たちの夢》ロニー・ジャンピジンパ(1991年)
    アボリジニの点描画だが、観ていてとても心地良い。
    美術以外でも言えることかもしれないが、何かを鑑賞する上で重要なのは「何を感じたのか」「自分の体内で、何か巻き起こったか」だと思う。それをなるべく忘れないようにすることも。
    モノクロで構成された曲線を追っているうちに、気の巡りが良くなっていく気がした。「人間って直線よりも曲線の中で生きている方がリラックスできるんです」という恩師の言葉が思い出される…。

    目立たず、どこからかそっと包み込んでくれる。
    こうしてまた一つ、色の概念がアップデートされた。

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    2024年09月06日
  • 色の物語 ピンク

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    BLEU「青」に続き、今回はROSE「ピンク」の系譜を辿っていく。
    著者曰く、ピンクのフランス語は”rose”「薔薇色」で、薔薇の花が持つ豊かな色合いを意味する。(あくまで個人の感覚だが)ブルーと違ってピンクは濃淡の幅が広く、場合によっては電灯の色に溶け込んでしまう。
    本書では≪ヴィーナスの誕生≫(P.18)etc...といったアート作品に、幅広いピンクのイメージが散りばめられている。そのためなるべく外が明るいうちに、自然光が降り注ぐ場所で読んでいただくことをお勧めしたい。

    最近は疑問視する声もあるが、少し前までは「ブルー=男性」「ピンク=女性」の色と(いつの間にか)定められていた。
    しかし女性の色であると決めつける以前に、ピンクは古来より様々な場面で重宝されている。何ならフランス革命以前は男性王族・貴族の衣服にも用いられており、豊かさの象徴であった。(著者がフランス人でその基準なのは仕方がないにしても、世界的にはどうなのだろう)

    ≪軍神マルスに扮したアンリ4世≫(P.22)は初めて見たけど衝撃的!ピンクの鎧を纏うアンリ4世。
    現代人目線だと、誇らしげであろう笑みがチャーミングに映ると同時に、猛々しい印象のマルスがある意味塗り替えられたような感触を覚えてしまう…。

    他に驚かされたのが肌の色。
    ピンクは肌の色に抑揚を与えるといい、 本書でも≪アヴィニョンの娘たち≫(P.46)や≪6人の踊り子≫(P.90)等、ピンク肌を強調した絵が多数取り上げられている。肌に注目しながら鑑賞していくと、ピンクの採用率が高いことに驚くだろう。「ローズ・ドゥ・ナンフ」(妖精の肌を思わせる色)なんて種類もあるほど、ピンクと肌は切り離せないようだ。
    ふと、昔通っていた英会話クラスの教材を思い出す。塗り絵を通して色を学んでいく章で、白人男女の肌から矢印が引っ張られた先には”pink”と書いてあった。ピンク色の肌を持つ人がいるとは信じられずにいたが(イギリス人教師は”pink”と言って聞かなかった)、これでようやく合点がいった。

    時代や文化によってピンクの持つ意味が変わってくるのも興味深い。
    前述のフランスでは豊かさの象徴であった傍ら、イギリスでは「堕落」を意味する。古代ローマ皇帝が大量の薔薇で招待客を窒息死させるという事件を描いた≪ヘリオガバルスの薔薇≫(P.40)は、植民地で栄華を誇っていたヴィクトリア朝を皮肉っているという。

    同ヴィクトリア朝時代の作品≪ポプリ≫(P.86)にも大量の薔薇が描かれているが、かたやこちらは堕落というよりも憂いが浮き彫りになっている。ポプリ作りをする女性の儚げな後ろ姿。赤髪も相まって、映画「タイタニック」のヒロイン ローズ(奇しくも!)を彷彿とさせた。
    どちらの作品も、「薔薇色」が決して喜び一色を表すものではないことを教えてくれる。「絵」は口ほどにものを言うってか。


    陽気で余裕があって、時に浮いてしまうピンク。
    その種類同様、幅広い層から受け入れてもらえると良いな。

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    2024年07月12日
  • 色の物語 ピンク

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    中世・ルネサンスまでは、いわゆるピンクは淡い赤と認識されていた。ピンクが意識的に使われるようになったのがロココ。ピンクそのものがひとつの色として言及されたのが1837年。
    昔から、絵画においては、いわゆるピンクは絵画の中での効果をちゃんと意識して使われていたのであろう。信仰、喜び、権威、美を表すものとして。ロココはもちろんエロスでしょう。でもねえ、こうやってこの画集でピンクが目立つ形で使われている絵画を見ていくと、はっきり言って違和感の方が多いなあ。ロココやドガが女性を表現するのに使っているのはそうでもないのは、ピンクは女性的な色という固定観念があるのかなあ。ローレンス・アルマ・タデマの「ヘリオガバルスの薔薇」のピンクは主役の異常性を表すのにはふさわしいと感じる。オキーフのピンクもなんかエロチックだ。こういうちょっと特異な絵にはふさわしいと思ってしまう。

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    2025年09月06日
  • 色の物語 青

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    青ってどんな色?空や水の色、悲しい涙の色、神聖な色、高貴な色…など、時代でも、地域でも異なる意味を持ち、そして異なる青が用いられてきました。この本では、前半は青の歴史について、後半では青の持つメッセージについて紹介しています。作品によって暖かい、冷たい、明るい、苦悩など全く違った意味を持っていることがとてもおもしろいです。

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    2025年05月25日
  • 色の物語 黒

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    何点か実物を見たものがあり、以前から知っているものも何点かあった。
    なかなか着眼点が良い様に思った。

    腰巻の絵は すみれの花束をつけたベルト・モリゾ 。
    エドゥアール・マネの作品。

    もりぞう じゃねぇぞ! と山田五郎が言ってたぶらぶら美術・博物館も
    終了してからそろそろ1年となる。
    後継番組がないままだ。

    翔泳社ってこんな本も出してるんだ。

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    2024年08月17日
  • 色の物語 青

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    仕事とかで疲れている時に見ると、ウルウル来ちゃうんだろうなー。
    どの青も目に訴えてくるかのように眩しくて、美しくて。「青が目にしみるぜ…」と、「神の色」とも呼ばれた奇跡の前にひれ伏すしかない。

    自然界において青色は、空や海に代表される。本書ではそれが人類の手に渡り、様々な「品種改良」を経て、商品やアートに投影されていく過程が簡単にまとめられている。青色を創り出すための素材や色のバリエーションをサラッと紹介したのちには、古今東西のアート作品を時系列順にディスプレイ。
    まさに、青をテーマにした展覧会場を歩いている感覚だった。展覧会ならではの観覧疲れや、終盤にかけて間延びしている感じがあったのは否めないけど…。

    個人的に興味深かったのが、古代史における青の系譜だ。
    紀元前2,500年頃に「エジプシャン・ブルー」という(何と!)合成色素が開発され、そこから他の文明に青が伝わるまで随分待たなければならなかった。エジプシャン・ブルーが使用されたものでは青いカバのオブジェが有名で、自分は本書のスフィンクスよりも真っ先にカバ君の方を想起した笑
    しかし古代ローマで青色は敵の民族を想起させるもので、野蛮な色だと認識されていたという。確かにローマやギリシャ美術で青を見たことがない…気がする。彼らの文明で青を確認できないことから、「青い色調を判別できない視覚障害にあったのだ!」という説まであったらしい。

    そんな中で自分の目を引いたのが、「ディアナ」というフレスコ画。
    紀元前1世紀の作品で、発掘場所は何とヴェスヴィオ火山の麓!目にも鮮やかな藍色をバックに弓矢を構える、美しいシルエットの女性。この青もエジプシャン・ブルーと言われており、確かに青みがカバ君やスフィンクスのそれと近い。ポンペイは古代ローマの一部だったはずなのに、何故青が使われているのか。交易が盛んな地域だったから、外部から入ったものも自然に溶け込んだのかな?
    考古学者さながらに、ここまで想像力を掻き立てるとは思わなんだ。

    日本人としては北斎のページを見逃すわけにはいかない。そう、富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」だ。(そうドヤっておいてなんだが、今まで正式名称を言えずにいた…)
    フランス人の著者視点では、あの大波が「ポップアイコン」にも映っているのがまた面白い。「都市に暮らす豊かなブルジョワジーの嗜好を満たすために浮世絵が作成された」という見方も独特だなー…と笑

    ワシリー・カンディンスキーの「空の青」(1940年)に描かれているのは、空に浮かぶカラフルなオブジェたち。全体的にビジュアルが可愛いから目に留まったのだが、制作背景は戦時下の鬱屈した世相から来ている。
    何かの手記でひめゆり部隊の女学生が「戦争が終わったら両手を広げて青空の下を駆け回りたい」と遺していたのを思い出し、目の前の「空の青」と重ね合わせていた。

    「天上と地上をつなぐ色と言ったら?ー 青をおいて他にはないでしょう」

    青は神の色。それは時に、地上の苦悩を包み込んでくれる。

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    2024年06月07日