ロビン・ダンバーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
特定の宗教の成り立ちを論じているのではなく、ヒトという生き物が宗教というものを必要としてきた歴史を解き明かしている。
著者自身が開拓してきた進化心理学・進化人類学の知見のみならず、あらゆるジャンルの研究を横断的に分析し、人類の共同体拡大の歴史と宗教の密接な関係性があらわになってゆく過程が見事だった。まさに「巨人の肩の上に立つ」喜びを最初から最後まで提供し続けてくれる。
そもそも、霊長類研究に端を発し進化心理学において偉大な業績を残してきた著者の関心が最終的に「宗教」に結び付いたことが面白い。本書終盤の記述通り、宗教の役割が後景化したように思えても、宗教の代替物は見つからっておらず、宗教が不要となる世界が長続きすることは立証できない。それ故に宗教は、偉大な研究者をも惹きつける研究対象としての魅力に溢れているのだろう。
その事を裏付けるかのような長谷川眞理子氏の解説に登場するエピソードも非常に良かった。個人的体験の域を出ないはずのエピソードが、本書を読んだ後だと非常に示唆的で意義深いものに見える。 -
Posted by ブクログ
キリスト教の本質を読んだあとにきになっていた本。紹介文でアニミズムやシャーマン文化について触れていたのが手に取るきっかけだったのだけれど、宗教が脳の発達や増えすぎた人間の適応の結果であることや、人間の社会的集団の人数の限界についての考察が面白い。宗教がある一定の信者数を超えると分裂することがわかり、それを超えないようにしている宗教があることなどタイトルからは思いもよらなかった内容に驚いた。
集団人数についてパーティーに置きかえると、予々思っていた大規模になりすぎると野暮な客や調和しない客が混ざって雰囲気が損なわれることが多々あり、適切な規模のやや閉ざされたパーティーが良いのではないか?と考えていたことと重なる。
カルチャー全体に視点を当てても、パーティー、スケートボード、キャンプ、釣り、などなどあらゆるカルチャーの一般化により、かろうじて保たれていたカルチャー自体の反社会性が多数の人の流入により崩れたことも頭をよぎる。
SNSが普及した今はもう受け入れるしかない事態なのだけれど、これらの問題が社会的にに問題になった後の再構築はどう為されるのか。
結びで宗教は人間の本質であり、宗教に取って代わる何かの存在を証明するのは難しいとあるが、日常のストレスを和らげ共同体の結束を強くするパーティーは現代の宗教だなと思う。
宗教の起源を読んで様々なことに思いを馳せることになった良書でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなぜ組織の人員が増えると物事がうまく進まなくなるなるのか、について事例や研究結果を交えて答えてくれる本。
組織が成功する要因を、目的、文化、学習、価値観、帰属意識、つながりの6要素とするスライブモデルを提案している。
噛み砕いてしまえば、居心地の良い職場、気のおける同僚を作ろう、一緒の空間で仕事をしよう、ということだが、
それを丁寧に解説、理論立てて説明している。
読んでいて面白く、職場に対する気持ちが変わる本。
生来のコミュ障にはかなり辛い内容ではある。コミュ障はメンタライジング能力低いか、ダンバー数の上限が人よりも低いのだろうか。 -
Posted by ブクログ
宗教は人間の脳が大きくなるにつれ、共同体の規模が大きくなるにつれ、必然的に生まれた。
宗教の最大の意義は共同体を安定的に維持すること。
人間が親密さを持って接することができる人数の上限は150人前後。共同体の人数がこの数を越えると帰属意識が薄れていく。それを防ぎ共同体を継続して維持していくために儀式を伴う宗教で人々を団結させる必要があった。儀式や歌は人々を高揚させトランス状態に導く。トランス状態に入ることで巨大な共同体につきものの人間関係のトラブルはリセットされる。
周囲と一体感を得ることでエンドルフィンが分泌され幸福感が起こり、NK細胞が活発化して免疫が高まり、利他的な気持ちになって共同体の結束を高める効果もある。宗教すごい。調査によると信仰心のある人の方がない人より健康で幸福な傾向にあるという。
集団が150人規模を超えると人間関係の緊張度が増すと何度も繰り返し述べられる。やはり人間にとって他人はストレスの源なのだとの感を強くした。phaさんや鶴見渉さんによる「集団を閉鎖的にしない」「常に外にゆるく開いておく」という工夫やサードプレイス概念の正当性を裏付けている。
カルトの創始者は統合失調症と類似の精神的傾向があるという。幻視や幻聴といった神がかり的な体験が病いの症例とたしかに似ている。イエスやブッダもそうだったのかもしれない。
宗教は衰退していると言われるがそれはあくまで一部の先進国に限った現象であり、経済格差が大きい国では裕福でない層を中心にさかんに信仰されている。人間の営みで宗教に代わるものはなく、時代とともに中身は変わったとしてもなくなることはおそらくない。 -
Posted by ブクログ
まず翻訳本にも関わらず日本語が非常に読みやすい。記述されている内容も興味深く、実社会でも役に立ちそうなことが多い。最も興味深いのは社会脳仮説と「ダンバー数」で、これは会社の組織にも当てはまるのかもしれない。組織のまとまりに対して分裂・崩壊しようとする力が働くのに対して、エンドルフィンの分泌を促すような行動が組織の構成員の社会性を促し、組織を強固にする働きがあるという。その行動が一緒に歌を歌ったり、笑ったり、食事をしたり、宴会をしたり、そして宗教行事に参加したりすることであるとのこと。これはまさに昭和のサラリーマンの「飲みニケーション」であり、またブラック企業がどこか宗教じみているのも同じ説明が十分説得力ある。