【感想・ネタバレ】宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのかのレビュー

あらすじ

科学が隆盛を極める現代においても、
宗教は衰えるどころかますます影響力を強めている。
ときに国家間の戦争を引き起こすほど
人々の心に深く根差した信仰心は、なぜ生まれたのか?
そして、いかにして私たちが今日知る世界宗教へと進化したのか?

「ダンバー数」で世界的に知られ、
人類学のノーベル賞「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した著者が、
人類学、心理学、神経科学など多彩な視点から
「宗教とは何か」という根源的な問いに迫った、
かつてないスケールの大著。待望の邦訳刊行。

■ ■ ■

集団内に協力行動を生みだす信仰心も、
集団の外に対しては反社会的行動の原動力となる。
宗教的アイデンティティが国家に利用されるとき、悲劇は起こる。
――フィナンシャル・タイムズ紙

宗教と人間の生活のあり方は、かくも複雑なのである。
本書は、その両方を進化的ないきさつから説明しようと、
真に大きな考察を展開しようと試みる大作である。
――長谷川眞理子(進化生物学者、総合研究大学院大学名誉教授/「解説」より)

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Posted by ブクログ

社会学、哲学、人類学、宗教学などの様々な立場からの宗教研究について、具体的な世界各地の宗教や信仰を例示しながら解説している。索引も細やかで再読しやすい。

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2025年07月11日

Posted by ブクログ

キリスト教の本質を読んだあとにきになっていた本。紹介文でアニミズムやシャーマン文化について触れていたのが手に取るきっかけだったのだけれど、宗教が脳の発達や増えすぎた人間の適応の結果であることや、人間の社会的集団の人数の限界についての考察が面白い。宗教がある一定の信者数を超えると分裂することがわかり、それを超えないようにしている宗教があることなどタイトルからは思いもよらなかった内容に驚いた。
集団人数についてパーティーに置きかえると、予々思っていた大規模になりすぎると野暮な客や調和しない客が混ざって雰囲気が損なわれることが多々あり、適切な規模のやや閉ざされたパーティーが良いのではないか?と考えていたことと重なる。
カルチャー全体に視点を当てても、パーティー、スケートボード、キャンプ、釣り、などなどあらゆるカルチャーの一般化により、かろうじて保たれていたカルチャー自体の反社会性が多数の人の流入により崩れたことも頭をよぎる。
SNSが普及した今はもう受け入れるしかない事態なのだけれど、これらの問題が社会的にに問題になった後の再構築はどう為されるのか。
結びで宗教は人間の本質であり、宗教に取って代わる何かの存在を証明するのは難しいとあるが、日常のストレスを和らげ共同体の結束を強くするパーティーは現代の宗教だなと思う。

宗教の起源を読んで様々なことに思いを馳せることになった良書でした。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

私が改めて述べるまでもないような名著。人間の脳のサイズから、集団が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限(約150人)を示したロビン・ダンバー。彼の名を取ったダンバー数という言葉もよく聞くが、本書ではそうした考察を基礎とし、宗教について考える。

宗教といっても大きく「シャーマニズム宗教」と「教義宗教」ということで本書では区別して定義され、前者は道徳的な戒律が必ずしもあるわけではなくロールプレイを基礎とした儀式が主となるが、後者は、道徳的な戒律、聖書や仏典のような書物、教会のような空間、ロールプレイを規定した儀式がパッケージ化されたものだ。この教義宗教において、独自の「解釈」が誕生してカルト化する。本書ではキリスト教もユダヤ教のカルトから誕生したかのような言説だ。また、時にこの道徳観念は歪曲され、行き過ぎた禁欲主義になったりと、必ずしも現代の価値観に当てはまるわけではない。

生者を律するために、死後の世界を利用する。死後の世界は、生者には分からないから、この部分が最も共同幻想を作り上げるには効率的だった。想像でしか埋められない部分を利用し、その空白に対して物語を当てはめる。その物語を仮説として共有する事で、社会が成立していく。しかし、徐々に暗闇に光が当たり、私の死後の世界とあなたの死後の世界が異なるという、その突き合せによっても、欺瞞性が露見していく。

― 全員と知りあいになることは不可能なので、代わりに目印が必要になる。そのひとつが言語だ。民族誌学では、部族とは同じ言語(普及範囲が広い言語の場合は方言)を共有する集団と定義される。特定の単語をどう発音するか、あいまいな言葉の意味を知っているかどうか、いわゆる「シボレテ効果」によって、口を開いた瞬間同じ部族かどうか判別できるのだ。

物語により、言語の壁を超える事で、集団はさらに大きくなる。しかし、物語の違いにより、また新たな壁に突き当たる。宗教論争は、この状態に近いのだろう。物語の壁を超えるため、人類を共同幻想から、共通ルールの世界観に当てはめて階層化することで、仮初の世界市民を形成する。それこそが資本による競争社会だ。だが、戦争はなくならない。

なぜ戦争はなくならないのか。それは、政治範囲の違いにより世界市民が国家単位にディセントラライズされているからだ。なぜ、国家単位に上限が定まり、それ以上の融合は行われなくなったのか。それは、文化的、言語的、歴史的な違いである。そしてこれらの違いが国家のアイデンティティを形成し、他の国家との融合を難しくする。つまり、未知の世界を物語化する事で集団化を目指す過程で、自ずと過去が蓄積していって物語化される事でジワジワと集団化の足かせとなりキャップがはまる。バックキャスティングとフォアキャスティングが対立するように、全体融合を目指す教義宗教に対し、シャーマニズムが土着のアイデンティティを形成して対立する。「目指す物語」と「根差す物語」の対立とも言える。

150人の壁を超えるための仕掛けは既に多様にあるはずだが、結局、過去がしがらみとなり、我々は属する集団を擬人化して収まってしまっている。それはまるで、個体として生きる人生の上限のようだ。個体や国家は根差す物語としての系譜や歴史をもつ。世界市民は世界平和や博愛を目指す物語とするのだが、利害が噛み合わない。

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2025年03月07日

Posted by ブクログ

宗教がなぜ生まれてきたのか、脳内でのエンドルフィンの分泌作用、人口増加による集団の防衛、集団の統率など、様々な実用的な目的で発達してきたという仮説。

神秘的な観点ではなく、必要があったから生まれてきたという客観的な根拠にも依拠する説明は目から鱗が落ちる読書体験でした。

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2024年03月22日

Posted by ブクログ

かなり読みやすく、それでいて深い知見を得られる素晴らしい一冊。宗教そのものというより、私は、同じ志によって行動する組織──つまり、会社のような組織に応用できる考察はないかと思って読んでいたが、その期待を裏切らなかった。
ダンバー数が圧倒的に正しいと信仰するかどうかは別にしても、一定の尤もらしさや、組織マネジメント論に比して検証なされている人類学の共同体に関する研究について、人々と関わり、字義通り目に見える実利以外の効果を期待する場合、宗教の起源について学ぶことの意義は小さくない。

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2024年03月17日

Posted by ブクログ

宗教について、人間というかむしろ生物の起源にまで遡って、行動心理などを通して科学的に考察した良書。
宗教の集会などが、大麻やマジックマッシュルームなどによるある意味今のドラッグパーティーのような感じだったんじゃ無いかとも感じ、独特の高揚感が人を呼び込み、また極端な集団行動の生まれる理由にもなるんだなと。
日本からも天理教などの起源にも言及されてますが、日本の宗教観は世界からすると独特なんだなと改めて。

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2024年03月08日

Posted by ブクログ

宗教について、進化的、身体的な側面も重視して考察する内容で、端的に言ってすごい本。群淘汰を前提にしているかも。

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2024年03月01日

Posted by ブクログ

ダンバー数(=人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限、150人)を提唱した筆者が、宗教がなぜ人間社会に生じたのかを宗教の各構成要素を切り口として考察した本。
久しぶりにこういう本をドシッと読めて楽しかった。

「コミュニティの規模が増えると統治が難しくなり、そのコミュニティを維持するためのストーリーが必要になる。それが宗教」というよくある語り口を丁寧に解説していく。
そこに追加して人間が持つ特異なメタ認知能力が、ストーリーの納得感を高め、宗教の発展に寄与したという視点が新鮮でよかった。

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2024年02月29日

Posted by ブクログ

宗教の起源について、人類学と進化心理学の専門家である著者が迫った。そもそも霊長類は外敵脅威から身を守るため集団で結束して生活するが、その集団の規模は脳の大きさによって決まっており、人間の場合は身近な共同体や個人の社会ネットワークには150人という上限が存在する。それを超えた集団を作ろうとすると、規模の拡大に合わせてストレスや集団内の暴力を減らす方法が必要になるが、宗教はそのための効果的な仕組みとして発達したとする。
宗教の起源へのひとつの明快なアプローチであった。

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

歴史の解説かと思って読み始めたが、科学解説だった。
人間が親密性を感じながら生活できる集団のサイズの上限は150人で、それを超えると分裂が始まる。それにより大規模な宗教には必然的にカルトが生まれる。
解説によると、その150人という数をこの本の著者の名前からダンバー数というらしい。

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2023年12月16日

Posted by ブクログ

宗教は人間の脳が大きくなるにつれ、共同体の規模が大きくなるにつれ、必然的に生まれた。

宗教の最大の意義は共同体を安定的に維持すること。

人間が親密さを持って接することができる人数の上限は150人前後。共同体の人数がこの数を越えると帰属意識が薄れていく。それを防ぎ共同体を継続して維持していくために儀式を伴う宗教で人々を団結させる必要があった。儀式や歌は人々を高揚させトランス状態に導く。トランス状態に入ることで巨大な共同体につきものの人間関係のトラブルはリセットされる。
周囲と一体感を得ることでエンドルフィンが分泌され幸福感が起こり、NK細胞が活発化して免疫が高まり、利他的な気持ちになって共同体の結束を高める効果もある。宗教すごい。調査によると信仰心のある人の方がない人より健康で幸福な傾向にあるという。

集団が150人規模を超えると人間関係の緊張度が増すと何度も繰り返し述べられる。やはり人間にとって他人はストレスの源なのだとの感を強くした。phaさんや鶴見渉さんによる「集団を閉鎖的にしない」「常に外にゆるく開いておく」という工夫やサードプレイス概念の正当性を裏付けている。

カルトの創始者は統合失調症と類似の精神的傾向があるという。幻視や幻聴といった神がかり的な体験が病いの症例とたしかに似ている。イエスやブッダもそうだったのかもしれない。

宗教は衰退していると言われるがそれはあくまで一部の先進国に限った現象であり、経済格差が大きい国では裕福でない層を中心にさかんに信仰されている。人間の営みで宗教に代わるものはなく、時代とともに中身は変わったとしてもなくなることはおそらくない。

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2023年12月04日

Posted by ブクログ

タイトルに魅かれて読んだ。
私自身、特に信仰している宗教はない。
だからこそ、何故人々は神を信じ、信仰するのか。何故、宗教は存在するのかと常々疑問に思っていた。
著者の考察は大変興味深かった。
著者は、宗教には大きな二つの流れがあると考える。一つは、連続的共同体で実践される慣行体系と位置づけて、儀式などの慣行が果たす実用的な役割、つまり「行なうもの」。
もう一つは、より哲学的で、心理的な観点から、宗教を包括的な世界観ととらえる。共同体のなかで、さしたる証拠もなく受けいれられている一連の信念であり、この場合の宗教は「信じるもの」である。(p18)

特に興味深かったいくつかの項目を挙げる。
まず、グルーミングについてだ。
社会集団を拡大する必要に迫られたとき、一度に多くの人との信頼関係を構築するために(身体的接触なく)多くの人にグルーミングを同時に行う方法はないかと考え獲得されたものが、笑うこと、歌うこと、踊る事、感情に訴える物語を語る事、宴を開くこと、そして宗教儀式だ。(p124)
つまり、宗教儀式が集団の結束を生み出す。

宗教出現の地域についても興味深かった。
強大な世界宗教はすべて、熱帯地方のすぐ上に位置する北半球の亜熱帯地方という、非常に限られた緯度帯に出現したということだ(p219)
それはなぜか。
熱帯地方が病原体進化の温床であるからだ。
死を招く病にかかるかもしれない人の数を減らすには、交易や異なる集団との婚姻の数を減らすことが重要だが、それには隣人たちとちがう宗教を持つのがかんたんだ。つまりよそ者との交流を最小限に減らして、社会生活を部族を中心とした小さな共同体に限定するのだ。熱帯地方ではそれでもやっていける条件が整っている。一年を通して作物を栽培できることだ。年に何回も収穫があるので、よその集団と交易しなくても自給自足できる。
そして、病気がおよぼす影響と食料生産能力のあいだに、明らかなトレードオフが見られる(p223)
その関係を考えた時、栽培期間が充分に長く、感染症の負荷が小さい―人口急増の条件が完璧に揃っているのが、亜熱帯地方とその境界周辺なのだ。(p226)

宗教は小さな共同体を取りこむ形で進化してきたので、友情の七つの柱から派生した「私たちVS.あの人たち」というヒトの自然な心理を巧みに利用する。これがとても小さな共同体でとりわけ有効なのは、強烈な帰属意識を生みだすからだ。構成員は共同体に対しての誠実さを保ち、たがいに協力しあって物事を首尾よく進めることができる。(p282)
帰属意識を高めることはいいのだが、それにより他の宗教との対立が生まれるというのも至極当然の帰結なのだろう。

宗教を信じている人の方が、幸せだと感じる傾向にあるらしい。それは、自分がある集団に帰属していて、その構成員であると思うことで得られるようだ。
神を信じることよりも、自身の居場所があると感じることが信仰による幸福の理由だとしたら、それは意外であり、宗教の教えよりも集団としての価値の方が高いのかもしれない。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

難しかったけど面白かった。
まず翻訳はとても自然で、翻訳による読みにくさはほぼない。

「宗教は何で生まれたのか?」「なぜ人間は宗教を信じるのか?」「宗教はどうやって他人に共有されるのか?」「宗教はいつ生まれたのか?」といった、宗教に関する根源的な問いを考察している。
そのアプローチが物凄く幅広い。脳科学、文化人類学、地理学、進化論など、様々な分野を一冊で横断している。「ん?これって宗教の話だったよね?」と思うほど、各章で宗教ではない分野を深く論じた後に最終的に宗教の話に戻って来る、という構成になっている。

最後の解説が好き。イギリス人の著者が宗教を論じているので、宗教との距離感が独特な日本人がそれを読むというのは、特殊なハードルがあると思う。最後に解説でまとめてくれる長谷川さんは「同調的な行動が大嫌いな性格」で、「未知の現象に対する宗教的な説明は受け付けないし、占いも信じない」という立場で解説を加えてくれている。それが私にとってはバランスが取れたというか、最後に日本人が読みやすくなる良いまとめで終わってくれたなあという読後感になった。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

長谷川眞理子さんが解説してることがきっかけで読み始める。ダンバーっぽい主張してるけど本文にダンバーの名前ないなーと思って読み終わって表紙見たら作者がダンバー本人。リチャード・ドーキンスが感情的に宗教を否定するのに対し、ダンバーは世界中の宗教をいっしょくたにしてドライに片付ける感じ。

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2025年07月03日

Posted by ブクログ

知的好奇心を満足してくれる一冊。社会科学や脳科学を中心に、多くの視点から宗教を解説してくれるのは非常に興味深い。かつての俗説や自身の誤った知識を昨今の研究成果等をもとに指摘してくれるのも有り難い。

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2024年11月09日

Posted by ブクログ

無神論者、いや何でも受け付ける人が多い日本。
私も例外ではないが、宗教は身近で興味はある。しかし、いつ・なぜ発生したは知らない。

古代交流のなかった地球上の各地で、あらゆる自然現象や自身の周りで起こる出来事に対し超人的な何かがあると畏怖する心が芽生え、それが意図せずアミニズムやシャーマニズムにつながり、宗教に至るのは、まるでヒトの遺伝子に組み込まれているようで何とも不思議だ。

著者のロビン・ダンバー氏は、もともとサルの仲間の社会行動を研究する霊長類学者であったが、その後ヒトという生物が持っているヒトに固有の性質、即ちヒトの本性は何であり、なぜこのように進化したのかを研究する、進化心理学者になったとのことだ。
彼は、ヒトが真に親密性を感じて暮らすことができる集団のサイズには上限があり、それはおよそ150人であるという。(=ダンバー数 これが世界的に評価され「人類学のノーベル賞」と称されるトマス・ハクスリー記念賞を受賞)

ダンバーは、もともと、脳の新皮質の大きさから、その動物が処理出来る社会情報の限界を計算し、ヒトの場合は150人だという数字を導き出した。人類の進化史の90%以上において人類は狩猟採集生活をしていたが、この暮らし方では、15人くらいまでの小さなバンドで日常的に生活し、バンドが寄り集まって部族を形成してきた。
そしてその最大サイズは、およそ150人だとわかってきたらしい。

人類は、およそ1万年前に農耕・牧畜を始め、定住生活を始めた。そこから都市が形成され、文明が生まれた。つまり150人以上の数の人々が集まって暮らすようになったのだ。これは脳の自然な認識の限界を超えた数である。それを可能にしたものの一つが、宗教的信条を同じくする人々の結束であったのではないか。
「同じ私たち」という感覚を想起させ、一緒にいそしむようにさせる、それを可能にした重要な要素が宗教だったのではないかと言う。

では、なぜ宗教というものが出てきたのか、なぜそれは広まるのか?それはヒトが持っていた脳の働きに起因すると言う。
ヒトという生物は、自己と他者を認識し、自分の心が自分の状態を作り出していることを認識するとともに、他者も他者自身の心を持っており(メンタライジング、マインドリーディング)、それによって行動を決めることを知っている。そして、自分と他者とを脳の中でシミュレーションすることによって、自分に起こったことではなく、他者に起こったことを、まるで自分に起こったことであるかのように、他者に共感することができる。
また、ヒトは、このような想像とシミュレーションを働かせることにより、あまり原因がよくわからないことが起こった場合に、何か、自分たちとは異なる能力を持った存在がいて、それらの存在がそんなことを起こしているのではないか、と想像することができる。そして、それを他者に伝え、他者もそれに同意することができる。

では自分たちとは異なる能力のある何かが存在する、という感覚はどこから来るのだろうか?
それには、トランス状態というものが大きな役割を果たしている。踊り続ける、歌い続ける、ということをすると、脳内のエンドルフィンなどの伝達物質の分泌が変化し、「奇妙な精神状態」になるのだ。つまり脳がなせる技なのだ。

まとめると、
ヒトには、宗教を生じさせる脳内の基盤がある。しかし、それは、宗教を生み出すことが主眼で進化してきたのではない。物事の因果関係を推論すること、物事の原因として他者の心を想定すること、そのような解釈を、他者と共有すること、などが人類の進化史上、重要だったからこそ進化した。それが集まると、宗教というものがおのずと創発してしまうのだろう。そして、一度そういうものが出現すると、今度は、それが新たな意味を持ち始める。それは大きな集団をまとめる力にもなり、思いを同じくしない「他者」を攻撃する理由にもなる。これは宗教戦争が示している。
宗教的集団は、大きくなると「組織」になり、政治・経済と結び付く。

未来の人類は、あるいは脳は、どう対応すべく進化するのだろうか。

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2024年05月16日

Posted by ブクログ

一定以上の集団を結ぶ役割としての宗教の考察が丁寧になされている。
宗教は何も不思議なものではなく、背景がある。
アメニズム的信仰にも言及されている。
内容は難しい。相当数の宗教分派に関わるワードが多数出てきており、詳しい理解のためには他に勉強の必要がある。
しかし、前段の通り、普遍的な意味での宗教を捉えるには背景知識が多少不足していても可能であり、非常に面白い書籍である。

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2024年03月21日

Posted by ブクログ

 ダンバー数という概念をご存知だろうか。そのダンバー数を提唱したロビン・ダンバー氏の著書『宗教の起源―私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』を読んだ。ちなみに、ダンバー数の1つの数値として、「ヒトの自然な共同体の大きさは150人」というものがある。同著で個人的に注目したものは、「宗教の進化的基盤の分析」と「ダンバー数の理論の宗教教団の発展論への応用」の2点。人間の認知の仕組み、集団における心理をもとに、宗教というものがなぜ成立したのかを、さまざまな研究をもとに解き明かしている。

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2024年03月08日

Posted by ブクログ

人間の認識能力と集団生活が宗教を生む。自然や集団の中で起こる理不尽な出来事を感じ取りそれをホモサピエンスの認知能力の力でメンタライジング(目に見えない世界を想像する段階の深まり。普通の人は五次まで扱える)することで超越的な存在を想像してきた。集団的な陶酔もツールとして使うシャーマニズム宗教が生まれる。陶酔感は大脳のエンドルフィン分泌により生み出される。その想像を共有できて互いに関係を持てる共同体はダンバー数の150人くらいまで。これも大脳の認識能力が制限している。人が外敵からの防衛を目的として大きな共同体を作る段階ではシャーマニズム宗教の手には負えなくなる。宗教はよりシステマティックに教義がまとめられて組織化され教義宗教になる。教義宗教はより大きな人数を内包できるが、構成員の帰属意識は低くなる。そのため常に内部に新たな思想の極が生まれ、カルト化する可能性を孕んでいる。
人間の脳の機能により陶酔感、集団意識が生み出されて宗教が成立し、人間の脳の限界により、その規模は制限されて分裂し、カルトが生まれる。しかし人間のメンタライジング能力は超越的な存在をなんとなく求めてしまう。皮肉な堂々巡りのようでもあるけどそれが人生や世界の成り立ちなのかもしれない。

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2024年02月05日

Posted by ブクログ

なんとなく、タイトルと目次を見て読もうと思ってみたのだけれど、
よく見ると、ダンバー数(人間の安定した社会集団の上限はだいたい150人くらい)で有名な著者によるものだったと知り、楽しみにしながら読んでみた。

この本は、タイトルからすると、宗教の考古学的な研究や宗教の歴史研究のように思えるが、そうではない。
宗教の中身の問題ではなく、宗教があることが人間社会においてどのような役割を果たしているのかについての本になっている。

結論から言うと、人間の集団は本来の自然な規模であるダンバー数、100~200人を越えて(ある程度)機能しているわけだが、社会集団を機能させるための調整機能を宗教ははたしている。
また、シャーマニズム的な宗教から、やがてより複雑な教義的宗教が現れるようになってきた過程について、集団の規模が大きくなってきたこと、それにより、より大きな集団をまとめるための方法が模索された結果ではないか、と著者は述べている。
その他、枢軸時代に亜熱帯地域に現在の世界宗教となっているようなものが出現している理由や宗教の中でカルトやセクトなど分裂の起きる理由なども考察されている。

あくまでも個別の宗教の中身、教義の是非を問うようなものでなく、
人類学的、心理学的分析に基づいて社会と宗教の関係を見ていくような本になっていた。

日本人には宗教は馴染みうすいことも多いが、世界は宗教で動いているとも言われる。
そう言った目線で見るのには役立つ本だと思った。

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2024年02月04日

Posted by ブクログ

ひろゆきが最近読んだと言っていたので気になって読んでみた。
六次志向性をこなせるのは成人の20パーセントってのが印象に残った。
小説とか読むとたまにこの六次ぐらいの文章に出会うこともあるけど理解するのに凄い時間かかるし疲れる。
なんかこいつの文章疲れるなと思う時あるけどこれが答えかも。
あと日常会話でも次元高くなると、ん?今誰の何を言ってるの?もう少しゆっくり言ってとなってしまう。
自分でこんな苦しんでるのに、20パーもいるわけないよ!と感じた。
うん、宗教とあまり関係ないクソみたいな感想だね。
でも一箇所印象深かったとこあげるとそこだね。


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2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

感想
宗教の効用。目に見えないものを信じることは進化的に合理的。意識の中に埋め込まれた装置。しかし暴走することもある。それが引金を引く。

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2023年10月05日

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