キャスリン・ペイジ・ハーデンのレビュー一覧
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ネタバレ優生学は、理論的根拠として遺伝学を取り込み、間違った考えや歴史を生み出した。いまだに私たちの無意識にも、そのような悪しき優生思想の片鱗が存在しているかもしれない。
自己責任という言葉もそう言った優生学の考えが下敷きにあるからこそ、出てきて、物事の本質を見ないで責任をその人自身の責任にすり替える言葉だと思う。
この本は、遺伝学をニセ科学の優生学から取り戻すための、挑戦の書である。
親ガチャの呪いから我々は脱却することができるのだろうか?そのヒントがこの書には丁寧に記述されていました。
人はこの世に誕生する時、2種類のくじを引かされる。「社会くじ」と「遺伝くじ」だ。
社会くじは、格差や不 -
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ネタバレ子どもが育つ社会的環境的条件と、子どもの人生には関係があることは前提=社会くじ。
遺伝子の偶然も子どもに影響するか。遺伝子の影響も子どもは選べない=遺伝くじ。
遺伝子の影響を議論すると優生学的とみなされる。
人種間に遺伝的な違いは無い=人種とは、人類が分類したモノに過ぎず、遺伝子的には広汎な選択肢がある。
遺伝子は多様正がある。ふたりの親から生まれる子どもの遺伝型は70兆以上の組み合わせがある。一つの特徴的な遺伝情報は、プールの中の一滴のインクのようなもの。エンドウ豆のように単純ではない。
遺伝子はたんぱく質をつくるレシピ=レシピが同じでも同じ料理はできない。GWAS(ジーワス)=ゲノムワイ -
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著者はテキサス大学の心理学教授。本作が処女作ということになるようだ。訳者は「フェルマーの定理」の訳で有名な青木薫氏、最近ではブライアン・グリーンの大著「時間の終わりまで」などがあり、科学啓蒙書の翻訳には定評がある。本書もそれらの例に漏れず訳がこなれていて読みやすい。
著者の主張は本書で幾度となく言及されているように、政治哲学者ジョン・ロールズの思想の強い影響下にある。ロールズによれば、「遺伝子セット(自然的偶発性)」と「社会的環境(社会的偶発性)」は、内在的であるか構築的であるかの違いはあれど、どちらも人間の表現型(実際に発現し測定可能な特質)に作用し、人生の広範な局面に影響を与えるの -
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ネタバレヒトゲノムが解読された時に「全ての人間は99.99%同一だ」と言ったクリントン大統領の発言は間違っているし、間違いの上に社会基盤を構築しようとするのも間違っている。遺伝による違いは歴然と存在しており、学業の達成度や社会的な成功に関係している。ただし、それは優劣という比較の対象になるようなものではなく、運良くたまたま受け継がれたにすぎず、次の世代に受け継がれていくという保証もない。
必要なことは機会の均等(全ての人に同じ教育機会を与える)ではなく、個別化、最適化された教育である。ろうやアスペルガーが障害でなく特性だ、というのはやや言い過ぎのように思うが、公平と平等の違いなと、遺伝的な差異と社会 -
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遺伝と「平等」と言うと、優生学とか過去の色んな犯罪学とか絡んできて若干引くところがある。
筆者も、それは否定しないし、実際過去にはそれが利用されて来たのも事実。
だが、社会的成功や人生に、「遺伝」が絡んでいることは、否めない事実であり、それに目を瞑ることもまた、誤りにつながると論ずる。
前半は、様々な遺伝に関わる研究の成果、手法の進歩、問題点について触れ、遺伝の影響を排除は出来ないことを述べ、後半でそれを前提にした上で、では、どう言う社会を作っていくのが望ましいのかを説明していく。
いい内容だと思う。
環境ガチャと遺伝ガチャは事実であるが、いくつかの特定の遺伝子に起因する病例などを除 -
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少し内容的には難しかったが、今まで人を分ける時にはそれは優生論となってしまい、あまり遺伝と人の関係は研究されて来なかった。
だけども、人は誰しも違う遺伝子に生まれ、それが個性として現れることは事実である。
生まれた時の遺伝子と生きる環境によって人の人生は変わってくる。
よく言われる親ガチャは悪い意味で使われがちだが、人が親からもらってるもの、遺伝子が違うのは事実である。
それをうまく利用することで社会を良くすることはできるかもしれない。
そう思わずにはいられないが、持つものが結局は負担が大きくなる。それには結局は反感を買ってしまう部分があり、どうなのだろうと思ってしまう。