尾身茂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最近の仕事で感じていた「有識者および専門家と政策形成の関係・役割のあるべき姿とは」という問題意識に合致し非常に面白かった1冊だった。シーシャ屋で軽い気持ちで読み始めたら最後まで一気に読んでしまった。
本著では新型コロナに対応した尾身茂氏が、時系列に氏を中心とした有識者の振り返りと、それらを踏まえた課題を整理されている。
有識者と政府がメディアで思われている以上に同一の存在ではなく、緊張関係にありつつ、専門的観点から政府に提言し続け、その都度政府側が様々な反応があり、様々なやり取りをしつつ、コロナ対応を推進する模様を描かれているのは、回顧録としても非常に面白かった。
本著からは「専門性の重 -
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新型コロナ発生から関わってこられた尾身先生による手記です。読んでみて印象に残ったのは、平時への移行フェーズに関しては専門家と社会の齟齬が生じて、尾身先生をもってしても舵取りに苦慮したという下りでした。
ステークホルダー間の利害対立を調停するのは本来政府の役割であって、専門家が主導する(あるいはそのように見える)のは望ましくないというのが本来のお考えでしょうけど、危機的状況にあたりあえてそこを越えたことについては、今後評価されることになるのでしょう(個人的には当時政府のメッセージが弱すぎたと感じました)。
5類化の議論については、分科会内では重症化だけでインフルエンザとは比較できないという至 -
Posted by ブクログ
長かったコロナ禍。いろいろな方面から矢面に立ちながらも方向性を提言・構築してくれた尾身さんはじめ専門家の方々のご苦労に心からの敬意を表します。この本の発刊を知った時、すぐにでも読みたい衝動に駆られました。コロナ禍の3年余り、私も管理職の立場にあり、常に判断と決断を迫られる日々を送っていました。葛藤もありました。本書の中で様々な分野の専門家たちが集まり、それぞれの知見をぶつけ合う。感情論になることもあり、人間関係がギスギスする中、尾身さんは「そんな内輪もめをしている場合か。仲間内の人間関係についてくだくだ言うよりも闘うなら、もっと大きな目的のために闘おうではないか。私たちに与えられたミッションを
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Posted by ブクログ
本書を読むと、特にコロナ禍の後半では政府の情報の取り扱いや意思決定が非常に軽かったのが目立ってくる。 日本ではこれまでも、そして現在も日々当たり前のように事前リークが行われているが、政治や行政では既成事実を作って物事を進めると言うのが1つの様式になってしまっているように見える。
また実際には専門家に相談していないにもかかわらず、専門的な知識から決定したと言うのは、厳密には嘘のわけで、この辺もわが国の政治における言葉の軽さが如実に現れていると感じた。
本書が書かれた理由の一つでもあり、専門家の奮闘を支える原動力の一つとなっていたが「対策は最終的には歴史が判断する」という価値観だ。言葉が軽い、 -
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ネタバレ社会は許容できる死亡者数を決められるか…。
あまりにも重い提言だ。どうしても出せなかったとはいえ、こんなことを検討しなくてはならないほど逼迫した状況を3年も戦い続けてくれた専門家の皆さんにまずは感謝したい、と本書を読んで思った。
誰も最も最良と言える確かな判断を出来ない状況の中で、時には怒鳴り合いながら六時間以上も話し合うのはものすごい精神力や忍耐や体力も必要だったことと思う。
そしてこれだけ詳細なデータややり取りを残しておくこと自体も必要とはいえ大変な作業量だったことと思う。
よくぞこれだけの文章にまとめられたものだと思う。
著者は常に矢面に立たされる立場だったことから世間から批判されるこ -
Posted by ブクログ
今は花粉症対策でマスクをする人があちこちで見られるが、
コロナ禍の、全員必須、しなければ国賊、というような緊張感はなくなった。
あ、病院だけは相変わらず必須だが。
2020年2月に始まり、2023年5月の5類移行に終わったコロナ禍で
「専門家会議」の会長だった尾身茂氏が、その3年の活動をまとめた本。
基本は記録。
正体不明の新型ウィルス、志村けん、岡江久美子の死で一気に緊張感が高まり、
当時の安倍首相以下政府の迷走が思い出される。
学校の全国一斉臨時休業、緊急事態宣言、アベノマスク、三密、無観客東京オリパラ、、
未知のウイルスに対する試行錯誤は当然ではある。
専門家といっても、未知なもの