高橋雅紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
地形図の新たな楽しみ方を教えてくれる本です。
この読者が伝えたいのはあくまで、「地形がどのようにできたか」を考えるために、どのように地形図を観察すれば良いかのヒントの伝授であって、結論ではありません。
そのため、比喩表現を多用しており、正確さよりもわかりやすさを重視しております。
カラーの図を多用し、読者に面白いと感じてもらうための工夫が随所に感じられます。
万人向けではありませんが、地形についてもっと深く知りたい方や、大学1〜2年生向けの入門書として読んでいただくのがちょうど良いです(比喩表現が多いため、地形について専門的な知識を有する方には、かえって読みづらいとは思います)。
な -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本列島の地質を調べると、西日本のほとんどの山地は、古い基盤岩で占められている。これは東日本とまったく異なっている。著者は、海底からゆっくり隆起した際に、表層が波で削られてしまったという仮説を立てている。西日本でよくみられる片方が切れおちて、もう一方は平たんな峠、それによく似た地形が福井県の海岸で見ることができる。同じようなことが昔、各地で起こったのではないか。
隆起準平原と考えられてきた吉備高原は、実は、ふちの低い盆地がたくさん集まった地形ともいえる。つまり、吉備高原は瀬戸内海だった。前作でも論じた、分水嶺の峠部分の標高がそろっていることも、その推理を支えている。
新潟平野の地質断面図を見る -
Posted by ブクログ
面白かった。
そもそも、谷中分水界も、河川争奪っていうことも知らなかったし、実際歩くのでなく、地図を辿って、中国地方の分水嶺を歩くという企画も斬新だった。
が。
ちょっとうざい。
分水嶺を歩きながら、この地形は本当にそうなんだろうか、なぜだろうか、と疑問を後から後から撒き散らかし、私はそれが真実とは思えない、私の説はこうなのだっていう展開。
日本海溝移動説ってのも初見だったし、本来は目の覚めるような展開であるべきなのが、どっと疲れた。
歩き疲れだろう。
地形が好きな人、旅が好きな人、地図を辿りながらここもそうか、あそこもそうだよねってワクワクするのはいいんだが、それにこの「説」の展開 -
罪作りな一冊
元産総研の地質学者による書籍。
全編にわたって地理院地図のインドアワークの成果をもとに執筆している。地質学者であるのに地表の形態論が中心で第四紀の堆積物などの地質的な証拠の記載はほとんどなされていない。そして、谷地形を形成したのは、潮流とする新説を提唱しているが、その地形形成のプロセスについての記述もない。地味な分野を楽しいイラストや分かりやすい立体地図を用いた紙面構成で説明しようとする姿勢には好感は持てるが、事実誤認や矛盾点があまりにも多く、某地球物理学者のコメントにもあるように、私も一般大衆向けの罪作りな本だと思う。