【感想・ネタバレ】分水嶺の謎 峠は海から生まれたのレビュー

あらすじ

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【峠は海でつくられるって、一体どういうこと?】
峠はどうやってできたのか。河岸段丘は本当に川がつくったのか。大地を削り、山をつくったのは本当に川なのか。
本書は地球科学の難問「日本列島、東西圧縮の謎」を解いた地質学者が、100年を超す地形学の常識を疑い、新たな視点で地形の成因をひもとく第1弾です。


■第1弾『分水嶺の謎 峠は海から生まれた』とは……!?
本州に降り注いだ雨水を太平洋側と日本海側に分ける分水嶺は、不思議なことに、ときどき山の斜面を下って谷を横切り、隣の尾根に乗り移ってしまいます。到底尾根とは思えない真っ平らな谷の真ん中を横切るこの不思議な分水嶺は「谷中分水界(こくちゅうぶんすいかい)」と呼ばれ、その成因は110年前にアメリカの地形学者・デービスが唱えた「河川の争奪説」で説明されてきました。河川の争奪とはひと言で言うと、川と川の国盗り合戦。川が隣接する川の上流部を奪い取ることです。その現象は長年、多くの地形研究者や地形ファンを魅了してきました。
しかし、「河川の争奪」は本当にあったのでしょうか。旅の舞台は、インターネットの地理院地図。分水嶺を追跡し、不思議な地形をつぶさに観察。「河川の争奪」を考察する過程で見えてきたのは、「峠は海から生まれた!」という新事実でした。
思考実験を繰り返しながら、著者の妄想が確信に変わっていく過程。サイエンスの現場をつぶさに追体験できる一冊です。


■こんな方におすすめ
・分水嶺マニア
・地図や地形に関心のある方。
・登山が好きな方
・自然の謎解きを疑似体験したい方々


■目次
■第1章 分水嶺の旅
●旅の準備 地形の基本を知る
●第1日 不思議な地形が目白押し
●第2日 気まぐれな分水嶺
●第3日 断層を横切る分水嶺
●第4日 標高がそろう峠の不思議
●第5日 分水嶺を越えられない
●第6日 匍匐前進する分水嶺
●第7日 最大の難所の世羅台地
●第8日 川は川を奪わない?
●第9日 分水嶺をつなぐのは谷中分水界
■第2章分水嶺の謎
●1 関門海峡の謎 本州で最も低かった分水嶺
●2 谷中分水界は海峡だった
●3 隆起の原因は東西圧縮
●4 中国地方は瀬戸内海だった
●5 謎の答えは地形が語ってくれる
●6 盛り上がり続ける中国山地
●7 海から生まれた中国地方
●8 分水嶺のあみだくじ
■おわりに――私の分水嶺



■著者プロフィール
高橋雅紀(たかはし・まさき):地質学者(理学博士)。1990年、博士号取得。卒業研究以降の40年近く、日本列島の成り立ちを研究。2017年に「日本海溝移動説」を発表し、NHKスペシャル「列島誕生ジオ・ジャパン」で放映(2017年)。
NHK「ブラタモリ」に幾度となく出演し、人気を博している。

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Posted by ブクログ


地形図の新たな楽しみ方を教えてくれる本です。

この読者が伝えたいのはあくまで、「地形がどのようにできたか」を考えるために、どのように地形図を観察すれば良いかのヒントの伝授であって、結論ではありません。
そのため、比喩表現を多用しており、正確さよりもわかりやすさを重視しております。
カラーの図を多用し、読者に面白いと感じてもらうための工夫が随所に感じられます。

万人向けではありませんが、地形についてもっと深く知りたい方や、大学1〜2年生向けの入門書として読んでいただくのがちょうど良いです(比喩表現が多いため、地形について専門的な知識を有する方には、かえって読みづらいとは思います)。


なお、分水嶺の位置をすべて把握している方はまずいないかと思います。
そのため、本を読み進めるのとあわせて地理院の電子地形図を開いて自分の目で分水嶺を数ページ分トレースすることをオススメします。
そうすることにより、より理解が深まり楽しいです。

0
2025年02月10日

Posted by ブクログ

ブラタモリ出演の地質学者、中国地方の分水嶺を辿り地形の由来を考察する。河川争奪が主題と思いきやまさかのどんでん返しが楽しめる。良くある風景も長い歳月と侵食等の作用の結果である。
今後のさらなる研究と次回作に期待。

0
2024年04月27日

Posted by ブクログ

面白かった。
そもそも、谷中分水界も、河川争奪っていうことも知らなかったし、実際歩くのでなく、地図を辿って、中国地方の分水嶺を歩くという企画も斬新だった。

が。

ちょっとうざい。
分水嶺を歩きながら、この地形は本当にそうなんだろうか、なぜだろうか、と疑問を後から後から撒き散らかし、私はそれが真実とは思えない、私の説はこうなのだっていう展開。

日本海溝移動説ってのも初見だったし、本来は目の覚めるような展開であるべきなのが、どっと疲れた。

歩き疲れだろう。

地形が好きな人、旅が好きな人、地図を辿りながらここもそうか、あそこもそうだよねってワクワクするのはいいんだが、それにこの「説」の展開を持っていくもんだから。個々具体的なパノラマは新鮮でも、説の根拠の説明としては、拗すぎると感じる。

半分以下で済むんじゃない、この量。

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2023年12月29日

Posted by ブクログ

地質学者が趣向全開で書いた本。

分水嶺から地質の成り立ちを議論している。地質学者が地図やフィールドを見ながら何に気づいて何に興味をもって研究しているかがわかる。

福井を出発して中国山地につらなり、下関門司に至るまでが題材。多少知っているところが出てくると興味深く読める。

一般向けの本ではあるが、難しいところもあったり、中盤は単調になりがち。

後半は分水界についての著者の考えも。

コラムや最後のブラタモリの裏話は面白い。こちらだけで独立して一冊あっても面白そう。

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2024年09月03日

Posted by ブクログ

読み終わったとは言えません。難しかった。起承転結のある小説と違って始めから終わりまで延々と淡々と進めていくのに疲れました。正直何かの研究者にならなくてよかった(笑)。
住んでいる中国地方が海から隆起してできたことは知っていたけど地形ってほんとにミステリーですね。

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2023年11月29日

罪作りな一冊

元産総研の地質学者による書籍。
全編にわたって地理院地図のインドアワークの成果をもとに執筆している。地質学者であるのに地表の形態論が中心で第四紀の堆積物などの地質的な証拠の記載はほとんどなされていない。そして、谷地形を形成したのは、潮流とする新説を提唱しているが、その地形形成のプロセスについての記述もない。地味な分野を楽しいイラストや分かりやすい立体地図を用いた紙面構成で説明しようとする姿勢には好感は持てるが、事実誤認や矛盾点があまりにも多く、某地球物理学者のコメントにもあるように、私も一般大衆向けの罪作りな本だと思う。

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2023年12月12日

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