【感想・ネタバレ】準平原の謎 盆地は海から生まれたのレビュー

あらすじ

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◆盆地は海から生まれたって、どういうこと?◆
地球科学の難問「日本列島、東西圧縮の謎」を解いた地質学者が、100年余りにわたって常識とされた地形学のセオリーを疑い、新たな視点で地形の成因をひもとく第2弾!

「準平原」とは、地表が長期にわたる侵食作用を受けて起伏が小さくなり、海面の高さ付近まで低下した、ほとんど平らな地形のこと(国土交通省東北地方整備局HPより)。アメリカの地形学者ウィリアム・モーリス・デービスが100年以上も前に提唱した侵食輪廻説における最末期の地形で、「準平原は陸上で河川によってつくられた地形」です。
日本列島には、標高の異なる起伏の小さい侵食小起伏面が知られています。とりわけ、中国地方にはかなりの広がりをもつ明瞭な侵食小起伏面が数段あり、「準平原が隆起したもの(隆起準平原)」であると信じられてきました。ところが、前著『分水嶺の謎 峠は海から生まれた』で考察したように、谷中分水界や片峠は、島と島の間の海峡が離水した地形でした。それらが標高1000mを超す山地にも確認されることは、かつての海峡(海底)が大きく隆起していることを意味します。中国地方の隆起準平原とされた地形を丹念に観察すると、平坦な地形はいずれも起伏の少ない分水界に囲まれていて、分水界には谷中分水界や片峠が確認されます。ということは、谷中分水界や片峠が海峡だったころ、分水界に囲まれている起伏の小さい地形は……浅い海底だったのではないでしょうか。

本邦地形学の常識(隆起準平原)を見つめ直し、谷中分水界や片峠を鍵として、その成り立ちの謎について解いていきます。



■こんな方におすすめ
・地形マニア、地形の形成過程に関心のある方、登山が好きな方、自然の謎解きを疑似体験したい方々


■目次
●旅の準備
〇侵食輪廻説と準平原
・平坦な火砕流台地は堆積面
・平らな平野の地形も堆積面
・日本列島の侵食小起伏面
……ほか
〇谷中分水界の成因
・謎を解く一つ目の〝鍵〟は谷中分水界
・スプーンですくったアイスクリーム?
・片峠は二つ目の〝鍵〟
……ほか
●第1日 思い出の場所で〝鍵〟のチェック
・須知盆地で準備体操
・低くても、雨水は縁からあふれない
・一直線に並ぶ三つ子の谷中分水界
……ほか
●第2日 〝鍵〟を閉じれば背中合わせの盆地
・縁の高い篠山盆地と縁の低い三田盆地
・高い山並みからなる篠山盆地の分水界
・分水していない谷中分水界?
……ほか
●第3日 海が削った吉備高原
・吉備高原もやはり盆地
・吉備高原の成り立ち
・吉備高原は瀬戸内海だった
……ほか
●第4日 海面は海底と陸地の間の関所
・陸化を拒む海の関所
・20年の時を隔てて
・石油が採れるための四つの条件
……ほか
●第5日 水にとってはすべてが盆地
・吉備高原より一段低い世羅台地
・山岳地帯は盆地?
・誰が見ても、盆地は盆地
……ほか
●第6日 4次元地形学への誘い
・里芋のようにつながった盆地の宝庫
・かつての海峡は交通の要所
・ここかしこに海の景色
……ほか
●第7日 私が地形に夢中な理由
・舐めるように地形を観察する理由
・科学者の役割
・何度でも地形を観察し続ける理由
……ほか
●第8日 高所に残る海の痕跡
・〝天空の聖地〟もかつては内湾
・標高800mにある背中合わせの盆地
・標高900mの〝ミニ吉備高原〟
……ほか
●第9日 川を下ればタイムトラベル
・海から生まれた盆地
・標高500mでも競っている最後の海峡
・隆起準平原と紹介されている阿武隈山地
……ほか
●旅のおわりに
・地質との出会い
・秩父盆地との再会
・〝炭〟も積もれば……
……ほか

■著者プロフィール
高橋雅紀(たかはしまさき):1990年に東北大学大学院理学研究科博士課程を修了。1992年に工業技術院地質調査所(現産総研)に入所。専門は地質学、テクトニクス、層序学。関東地方の地質を調べ日本列島の成り立ちを研究。
NHKスペシャル『列島誕生ジオ・ジャパン』のほか、NHK『ブラタモリ』秩父、長瀞、下関、日本の岩石SP、つくば、東京湾、前橋、世界の絶景SP、行田、長岡に出演。著書に『分水嶺の謎 峠は海から生まれた』(技術評論社)や『日本地方地質誌3 関東地方』(朝倉書店、分担)など。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

日本列島の地質を調べると、西日本のほとんどの山地は、古い基盤岩で占められている。これは東日本とまったく異なっている。著者は、海底からゆっくり隆起した際に、表層が波で削られてしまったという仮説を立てている。西日本でよくみられる片方が切れおちて、もう一方は平たんな峠、それによく似た地形が福井県の海岸で見ることができる。同じようなことが昔、各地で起こったのではないか。
隆起準平原と考えられてきた吉備高原は、実は、ふちの低い盆地がたくさん集まった地形ともいえる。つまり、吉備高原は瀬戸内海だった。前作でも論じた、分水嶺の峠部分の標高がそろっていることも、その推理を支えている。
新潟平野の地質断面図を見ると、褶曲により、本来は高い山になるべき部分が平らに削り取られている。これも海による浸食で生まれたと考えられるのではないか。

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2025年01月25日

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