清水大吾のレビュー一覧
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「社会のためになることを、儲かる構造にする」
本書は、資本主義そのものを否定するのではなく、その“使い方”を問い直す一冊だった。
著者は、現代の資本主義が抱える歪みの原因として、「成長の目的化」と「時間軸の短期化」を挙げる。本来は手段であったはずの“成長”が目的そのものになり、四半期単位の成果が過度に重視されることで、企業活動は長期的な社会価値よりも短期的な数値に引き寄せられていく。その結果として、環境問題や社会問題といった外部不経済が積み上がってきたという整理だ。
印象的だったのは、資本主義を「暴走した仕組み」として断罪するのではなく、「強力だからこそ、方向づけが重要なエネルギー」と捉えている点である。資本主義は、正しく設計されれば、社会課題の解決を加速させる力を持つ。そのために必要なのは、「社会に良いことをする」ことではなく、「社会のためになることを、儲かるように設計する」ことだと説く。
順番が重要だという指摘も印象に残った。
善意を出発点にするのではなく、構造を設計することから始める。
社会性と収益性を対立概念として扱うのではなく、両立させるビジネスモデルをつくる。そのためには、企業、投資家、金融機関、規制当局といったプレイヤー全体の評価軸を変えていく必要がある。
本書は、資本主義の外側からの批判ではなく、内側からの変革を志向している。だからこそタイトルの「資本主義の中心で」という言葉が重い。中心にいるからこそ、ルールや評価基準を変える責任があるという姿勢だ。
成長は本当に悪いのか。
短期志向は不可避なのか。
資本市場は歪みの原因なのか、それとも設計次第で解決の装置になり得るのか。
資本主義を捨てるのではなく、どう使いこなすか。
その問いを真正面から考えさせられる一冊だった。 -
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資本主義の中心で、資本主義を変える
資本主義の仕組みを知らずに社会を生きるのは、車の運転法を知らずに走るのと同じだと気づいた瞬間、日常の見え方が変わった。
この本はゴールドマン・サックスの第一線で16年戦った著者が、資本主義の根幹「所有の自由」と「自由経済」に潜むジレンマを紐解き、成長追求の歪みや時間軸の短縮がもたらす問題を浮かび上がらせる。特に「ゲームのルールを変えられるのは勝者だけ」という理論が突き刺さる。理想と現実の狭間で葛藤しながらも、持続可能な資本主義を模索する筆致は、読む者に覚悟を促す。難解さもあるが、今の経済社会に生きる全ての人に読んでほしい一冊。 -
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外資系の証券マンらしく切れ味鋭い切り口で、資本主義の何たるやを問おうとしている。とはいえ、難解な言い回しや複雑な専門用語を使うことなく理解しやすい。自分の身に置き換えた時にハッとさせられることも大いにある良書だった。
以下、備忘しておきたい数文。
・「ゲームのルールを変えられるには、ゲームの勝者だけ」
・「客観性」を身につける経験があった人々は、「会社の常識」に染まることなく、危機感を持ってチャレンジすることができるのだろう。
・リーダーは人を管理するだけのマネージャーとは違う。リーダーというのは「どんな困難に直面しても逃げずに真正面から取り組む勇気があって、また部下や仲間を大切にする優しさを持っている。さらに常に謙虚で努力を怠らない」 -
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ネタバレ常に成長し続けることが求められる「成長至上主義」は果たして正しいのかというテーマ。
著者は、仮に非営利機関に勤めて声を上げたとして、外部の声は成長至上主義の内部には届かない。資本主義の中心で、ゲームの勝者として働きかけることで、内部を根本から変えることを目指した。
◯資本主義の目的とは
すべての経済システムは人類の幸福に資するために発展してきた。しかし成長が目的化すると、Up or Outのように人を常に成長に駆り立てる社会的風潮を生み出してしまう。これは資本主義そのものの問題ではなく、資本主義の使い方の問題である。
そして成長が目的化した資本主義社会では巨大な投資マネーが利益の源泉を求めてさまよっている。その過程で、これ以上の成長志向は人間社会に対して害悪をもたらす危険があるにも関わらず、立ち止まることも許されず、越えてはいけない一線を越えてしまう「資本の暴走」が発生しているのだ。
◯儲けるか儲かるか
二宮尊徳は「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」 と述べた。それならば例えばSDGsというのは、「資本主義を使いこなして、道徳のある経済を達成しよう」ということを意味するのではないか。「儲ける」はコスト競争が起こり得る。しかし「結果的に儲かる」場合は喜んで対価を払う状況をつくれているのでその違いは明確である。
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話は変わるが、社会貢献的意識が強い若者は、ごく普通の営利企業への就職はださいとか、社会貢献を全面に出したビジネスがかっこいいという価値観があるかもしれない。ESGやSDGsを分かりやすく取り入れたビジネスはかっこよく見える。しかし別にそこまで拘る必要はなくて、普通の営利企業の中で倫理観を持った利益追求をすることも、ただ資本主義に身を任せることに比べたらずっと尊い素敵なことなのではないか。 -
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資本主義の中心で、資本主義を変える
題名は「資本主義を変える」というものであるが、印象に残ったのは日本に資本主義はあるのかという問題提起であった。本書では、日本ではなぜか疑問視されていない当たり前のことを、真っ当に述べられている。昨今、「モノ言う株主」という言葉があるが、本書を読むと非常に不思議に思う。なぜならば、そもそも株主はモノを言うものだからだ。なぜこのような言葉が話題になるかと言えば、これまで日本における政策保有株式という暗黙の株の持ち合いにより、所有と経営の分離の大原則に基づく、所有者(=株主)による経営の監視が「なあなあ」になってきたという経緯がある。株式会社はその性質から、株主の資本を経営者が委任されて、利潤の最大化を目指すものであるが、日本ではそのような健全な感覚がない。思えば「自己資本」という言葉も極めて不可解なネーミングであり、自己資本とは経営者の資本ではなく、株主の資本である。株主の資本であるからには、その運用に責任を持ち、どのように価値を創造し、利潤を得ていくのかを適切に議論する場があってしかるべきであるが、政策保有株式という仕組み(?)により、そのような感覚が希薄であった。
昨今、日本の保険業界でもカルテルの問題などが騒がれているが、保険業界も上記の感覚のズレを含む非常識がまかり通っていることは実態であると考える。例えば、大手生保会社はまさに政策保有株式により、株主としてのプレッシャーにより、実質的に企業の福利厚生などの団体保険契約のシェアを決めている実態がある。企業としては、モノ言わぬ株主を増やすことで、監督機能を削ぐことができるゆえに、多少の団体保険における保険料率の高さや保険会社任せの団体保険の補償内容に目をつむっている節もあるが、人的資本経営が叫ばれる中で、企業価値の根本たる人材への投資の一環としての福利厚生の分野に、そのような後ろ向きな論理を適用するほど、今後の日本の人材市場やグローバルマーケットは生ぬるいものなのかと訝しがってしまう。生保会社は人間の寿命という大数の法則によって極めてボラティリティの低い保険商品を、強力な販売チャネル(株式保有をベースとした法人営業と、営業職員による人海戦術)をもとに営業推進することによって集めた保険料を資産運用による利差益と、政策保有株式と言う形で企業の武器としている。保険契約において、約款通りに保険金が支払われることができていれば消費者にとっては良いのであろうが、保険会社がそのような強力なビジネスモデルの上に成り立っていることは知っていても損はないと思う。(無論、集めた資金が商品性の向上に使われているのであれば文句はない)
改めて本書を読むことにより、資本主義を変える以前の問題として、日本における慣習が世界の非常識であり、グローバルに通用しない考え方に浸ってしまっていることが再認識される。たしかに、このような政策保有株式の関係性によって、日本企業は徒党を組んで海外投資家からの買収危機を乗り越えて、国内産業の育成を行ってきたという向きもあるが、それなら非上場のまま、あくまで国際的にも公平・公正を謳う株式市場に登場するべきではないのであろう。
私自身は、ある種保険業界においては異端とされる立場にいるが、本書は私が日々考える日本の商慣習と「あるべき論」のギャップと共感することも多く、非常に楽しく読ませて頂いた。
清水さんの、いつの時代も歴史を変えるのは「よそ者、ばか者、若者」であるという言葉を胸に、保険業界における「よそ者、ばか者、若者」として、どの企業に属していようとも、「客観性」をもって、馬鹿正直に正論を突き詰めて働いていきたい。 -
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環境破壊、気候変動、格差拡大、政治的分断など、現代の重要な社会課題の要因として、資本主義の不完全性を挙げる声が強まっている。
本書は、資本主義をビジネスそのものにしている証券業界の最前線ともいえる、あのゴールドマンサックスの日本法人で16年勤めた著者による、資本主義を修正する試みと提言である。
他のポスト資本主義の本と違い、本書は脱成長には一切触れない。持続可能な、長期的な視点で成長も重視するために、特に日本の会社の経営者や人事部、また投資家に向けた啓蒙的な内容である。著者自身が、投資会社に勤めながら、長期視点と成長の両方を奮闘してきただけあり、内容はとても現実的。最後は道半ばで退職(クビ)になるのだが、淡々と書いているのに少し胸熱だ。
脱成長を夢見る暇があるなら、自分にできるところから社会を変える動きをしようと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ現状の資本主義のあり方に疑問・課題は感じ、関連する書籍はいくつか読んだが、ただの理想論のような印象も受けていた。そんな中、本書の「はじめに」には資本主義を変えるためには資本主義の中心にいる必要がある、GSで16年間最前線で資本主義と戦ってきた、といった記載を目にし、これまでとはアプローチが異なるなと興味をひかれ手にとった。
資本主義の根本原理は何か、そこに付随する何が問題なのかを分析している。さらにGSで資本主義を内側から変えるため何に取り組んだかが描かれ、最後にはよりよい日本の資本主義社会をつくるためにはどのような変化を起こす必要があるか考えを述べている。
資本主義そのものを否定するのではなく、使われ方に問題があることを指摘し、どう変えればいいのかを論じるという内容で、単なる理想論ではなく、多少時間はかかろうとも実現可能な策が議論されていてよかった。日本を次世代に誇りをもって引き継げるような国にしたいという気概、実際の取り組みに感銘を受けた。
日本の組織、人事制度の課題や、消費者としての意識の問題などにも言及され、どのような立場の人でも学べる点があると思う。
個人的には、「そのものが持つ固有の時間軸」に関する話と「お金には名前が書いてある(自分の使ったお金が社会に与える影響を考えよ)」話が勉強になった。