清水大吾のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
資本主義の中心で、資本主義を変える
資本主義の仕組みを知らずに社会を生きるのは、車の運転法を知らずに走るのと同じだと気づいた瞬間、日常の見え方が変わった。
この本はゴールドマン・サックスの第一線で16年戦った著者が、資本主義の根幹「所有の自由」と「自由経済」に潜むジレンマを紐解き、成長追求の歪みや時間軸の短縮がもたらす問題を浮かび上がらせる。特に「ゲームのルールを変えられるのは勝者だけ」という理論が突き刺さる。理想と現実の狭間で葛藤しながらも、持続可能な資本主義を模索する筆致は、読む者に覚悟を促す。難解さもあるが、今の経済社会に生きる全ての人に読んでほしい一冊。 -
Posted by ブクログ
外資系の証券マンらしく切れ味鋭い切り口で、資本主義の何たるやを問おうとしている。とはいえ、難解な言い回しや複雑な専門用語を使うことなく理解しやすい。自分の身に置き換えた時にハッとさせられることも大いにある良書だった。
以下、備忘しておきたい数文。
・「ゲームのルールを変えられるには、ゲームの勝者だけ」
・「客観性」を身につける経験があった人々は、「会社の常識」に染まることなく、危機感を持ってチャレンジすることができるのだろう。
・リーダーは人を管理するだけのマネージャーとは違う。リーダーというのは「どんな困難に直面しても逃げずに真正面から取り組む勇気があって、また部下や仲間を大切にする優しさを -
Posted by ブクログ
ネタバレ常に成長し続けることが求められる「成長至上主義」は果たして正しいのかというテーマ。
著者は、仮に非営利機関に勤めて声を上げたとして、外部の声は成長至上主義の内部には届かない。資本主義の中心で、ゲームの勝者として働きかけることで、内部を根本から変えることを目指した。
◯資本主義の目的とは
すべての経済システムは人類の幸福に資するために発展してきた。しかし成長が目的化すると、Up or Outのように人を常に成長に駆り立てる社会的風潮を生み出してしまう。これは資本主義そのものの問題ではなく、資本主義の使い方の問題である。
そして成長が目的化した資本主義社会では巨大な投資マネーが利益の源泉を求 -
Posted by ブクログ
資本主義の中心で、資本主義を変える
題名は「資本主義を変える」というものであるが、印象に残ったのは日本に資本主義はあるのかという問題提起であった。本書では、日本ではなぜか疑問視されていない当たり前のことを、真っ当に述べられている。昨今、「モノ言う株主」という言葉があるが、本書を読むと非常に不思議に思う。なぜならば、そもそも株主はモノを言うものだからだ。なぜこのような言葉が話題になるかと言えば、これまで日本における政策保有株式という暗黙の株の持ち合いにより、所有と経営の分離の大原則に基づく、所有者(=株主)による経営の監視が「なあなあ」になってきたという経緯がある。株式会社はその性質から、株主 -
Posted by ブクログ
環境破壊、気候変動、格差拡大、政治的分断など、現代の重要な社会課題の要因として、資本主義の不完全性を挙げる声が強まっている。
本書は、資本主義をビジネスそのものにしている証券業界の最前線ともいえる、あのゴールドマンサックスの日本法人で16年勤めた著者による、資本主義を修正する試みと提言である。
他のポスト資本主義の本と違い、本書は脱成長には一切触れない。持続可能な、長期的な視点で成長も重視するために、特に日本の会社の経営者や人事部、また投資家に向けた啓蒙的な内容である。著者自身が、投資会社に勤めながら、長期視点と成長の両方を奮闘してきただけあり、内容はとても現実的。最後は道半ばで退職(クビ -
Posted by ブクログ
ネタバレ現状の資本主義のあり方に疑問・課題は感じ、関連する書籍はいくつか読んだが、ただの理想論のような印象も受けていた。そんな中、本書の「はじめに」には資本主義を変えるためには資本主義の中心にいる必要がある、GSで16年間最前線で資本主義と戦ってきた、といった記載を目にし、これまでとはアプローチが異なるなと興味をひかれ手にとった。
資本主義の根本原理は何か、そこに付随する何が問題なのかを分析している。さらにGSで資本主義を内側から変えるため何に取り組んだかが描かれ、最後にはよりよい日本の資本主義社会をつくるためにはどのような変化を起こす必要があるか考えを述べている。
資本主義そのものを否定するのでは -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書では、資本主義の根本は「所有の自由」×「自由経済」であり、「成長の目的化」はその結果に過ぎないとしているが、むしろ「成長の目的化」が資本主義の根本であり、「所有の自由」・「自由経済」はその手段なのではないかと感じた。(資本主義は産業革命から始まったと言われるが、その前から所有の自由やそれを前提とした市場での自由な交易は存在していた。資本主義の弊害としてよく語られる”環境汚染”や”人間疎外”は、”資本蓄積を最優先するという考え”(成長の目的化)が蔓延した結果であり、ここに資本主義の根本があるのではないか)
また、この「成長の目的化」を正すことで資本主義をいかに修正するのかという話が本書では