今道友信のレビュー一覧
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とても読みごたえがあった。高校時代に悩みを通して哲学に心惹かれ、カントの乱読から入り、プラトン、レヴィストロース、西田幾多郎と恥ずかしいほどの直感任せで、哲学が何たるかも10年ほど分かっていなかった時も無駄だとは思っていない。世界での異文化経験と宗教世界への没入と、教育分野への従事によって拡がった風呂敷の端々を手繰り寄せるように、だんだんと一つのものへと収斂されてくる過程を感じているからである。西田幾多郎の哲学概論を読みそれでも哲学の全容と目的としていることが分かり、今回の通読によって歴史との関わりを深く知ることができた。
本書の内容にはあえて触れず、しかし今後の哲学の進むべき方向性に希望を一 -
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西洋哲学史の入門書です。著者の講義をもとにしているため、口語調で書かれており読みやすいように感じられます。
約350ページの分量をもつ本書では、約半分の180ページほどが古代・中世哲学の解説にあてているのが特徴といえるように思います。これにつづく内容は、近世哲学が約100ページ、近代哲学が約50ページ、現代哲学が約30ページとなっています。
自分たちが生きている現代に近い時代の動向が大きく見えがちなのは哲学史にかぎらないでしょうが、本書は西洋哲学の根幹を形作った古代・中世についての紹介が多くなされており、西洋哲学史の全体像を見るときにわれわれが用いている拡大鏡の倍率を補正するためにも役に立 -
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自然を私たちの認識の対象と捉える自然科学に対して、自然を私たちの生命の営みそのものとして、あるいは生命の営みの場所として捉える「自然哲学」の復権を語っている。
現代の哲学者の中で「自然哲学」と呼ぶべき思索をおこなった者と言えば、バシュラールやメルロ=ポンティの名前が思い浮かぶ。後期ハイデガーも、ソクラテス以前の哲学者による「自然」についての思索を手がかりに、「四方界」についての議論を展開している。また、そうしたハイデガーの思索を継承する宗教哲学的自然哲学の試みもある。
これに対して著者の議論は、少なくともそのアプローチに関して言うならば、哲学的人間学に近いと言えるように思う。たとえば「夜」 -
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著者が提唱する「エコエティカ」(eco-ethica、生圏倫理学)を紹介した本。現代の人間の生活圏は、自然環境や科学技術・医療技術などのさまざまな位相を持っている。それらいっさいを含む「人類の生息圏」を幅広く見渡し、現代の倫理のあり方をさぐることを、エコエティカはめざしている。ただし本書の議論は、エコエティカの原理を考察することには向かわず、私たちを包む生活圏のさまざまな局面で生じている倫理的問題を並べており、雑多な内容が一冊の本に同居しているという印象を受ける。
とはいえ、アリストテレスの実践的三段論法の逆転という現象が、科学技術の支配する現代における人類の生息圏に生じているという指摘は、