従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント
著:中塚敏明
スキルマネジメントとは、組織の最大化を実現するマネジメント手法である。その特徴は、個々の社員が自己完結でスキルを管理して、仕組みでPDCAを推進する「人」と「システム」による分業スタイルである。
スキルマネジメントでは人材育成を、「人」に代わり「仕組み」が担う。職務遂行能力を高める能力の習得はもとより、獲得したスキルの定着化や、長期的な観点からの従業員のキャリアデザイン、能力分析を可能とする。
本書の構成は以下の4章から成っている。
①従業員エンゲージメントを高める新たな戦略とは
②スキルマネジメントが能力開発の危機を救う
③人事評価制度の限界とスキルマネジメントとの融合
④ミッション・ビジョン・バリューの浸透もスキルマネジメントが有効
人事評価制度や人事育成等の対しての取り組みについては、時代に合わせ、それぞれの旬に合わせて目まぐるしく変化を経ながら展開されている。
現在のVUCAと呼ばれる不確実で変化が著しい時代においては、都度の最適な環境に合わせた取り組みを都度行うことは、スピード感では劣り、その変化に現場も疲弊してしまう。
そこで大切なことは、サステナビリティをキーワードとして長期視点と運用のしやすさである。サステナビリティの観点からみれば、ミッション・ビジョン・パーパス等の長期視点や高い視座からの考えを根底に置き、ブレない軸をつくる。運用のしやすさという点では本書での肝である「人」と「仕組み」の融合によるバランスを考慮した運用の容易さとインパクトを兼ね揃えた機能を叶えることができる。
枠は大切であるも運用はそれ以上に大切であり、そのバランスが絶妙にかみ合わさることで運用が定着し、その先に徐々に成果が表れる。人が育ち、成果が表れる。並行的に表出する場合もあるものの、人の成長が継続的になされなければ、人・組織の成長は止まり、社会から淘汰されることになる。
本書では、用語の説明のみならず、運用の苦労までも生々しく説明されており、臨場感を感じながら読むことができた。