本間洋平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この物語の主人公はいったい誰なのだろう?
慎一でもあり、茂之でもあり、吉本でもある。
進行役である慎一の目線から語られているシーンもある。
だが、茂之や吉本の心情が語られることはない。
・長男 慎一
地域で一番の進学校に合格。
母や父に期待され、うっとうしく思いながらも優等生としてふるまい続けてきた。
弟の成績があがるにつれ、両親の関心は自分から弟へと移っていき、彼は優等生を演じることをやめる。
したいこともなく、何ひとつ自分で決めることもない。意固地。
流されるままに時間だけは過ぎていく。
・次男 茂之
他人に対して自分の感情を伝えることもぶつけることも出来ない。
鬱屈した感情は、異様な行動となって現われる。
しかし、そうした行動も人の目があるところではけっしておきない。
ただ、面倒な今から逃げるため、それだけしか考えていない。その場しのぎさえ出来ればいい。
常に面倒なことからは逃げ、自分からは何もしようとしない。
・母
自分では教育熱心な口うるさい親ではないと思っている。
だが、無言の圧力は慎一に優等生を演じさせ、茂之からは逃げ場を奪う。
自覚がないだけに、もしかしたらもっとも手強く面倒な存在。
・父
父親とは家庭ではこうあるべきという妙な思い込みがある。
機嫌がいいときも、不利になったときも、とにかく乱暴な物言いをする。
おまけに声でもでかい。
破天荒なやり方で茂之にアプローチしていく吉本。
最初は唖然とし批難したりした両親も、成績があがるにつれて吉本を信頼するようになる。
吉本が茂之に一番教えたかったことは何か?
それは成績があがる方法でも、勉強のしかたでもないと思う。
自分で決め、自分で動く。
ただそれだけのことを覚えてほしかったのだと思うのだが。
人はその気になりさえすれば、何歳になっても変わることができると思う。
逆に言えば、本人にその気がなければ周囲が何を言っても何をしても、変わることは絶対にない。
挫折・・・吉本と慎一は、方向性は違っても共に感じたのではないだろうか。
現実を見ようとしない親。
現実を変えようとしない長男。
現実から逃げることしかできない次男。
家族というのは難しい。
2013年放映のドラマ「家族ゲーム」の展開を期待して読んではいけない。
原作からは基礎的な設定だけで、中身はまったく違う物語になっているからだ。
小説「家族ゲーム」は結局何も変わらない、以前よりも悪化した状態で終わっている。
しかし、ドラマ「家族ゲーム」では崩壊してからの再生までも描かれている。
個々の設定も現代にあわせて変更されていた。
原作というよりも原案程度に考えて読んだほうがいい。 -
Posted by ブクログ
今の若者にひしひしとくるフレーズがあるのでは
すばる文学賞受賞シリーズ。
第五回の受賞は1981年12月掲載なので、もう35年前の話。
ですが嵐の櫻井翔さん主演でドラマにしていたのはなんとなく記憶に新しい。
優秀な僕にグズな弟、という設定が新しい・・・!と感じます。
大体、兄弟に劣等感持っているじゃないですか。
それが、弟が思ったよりグズ、というかちょっと知能に障害をお持ちなのでは、というぎりぎりの人でびっくり。不潔なんだよなー。
でも、執着を持った部分には物凄い知識を持ってるんだろうというのは、随所に現れます。
そんな弟のもとにやってきた家庭教師が凄い、時代だよなぁ。今はこんなんやったら訴訟沙汰。
ガンガン行きます。
でも、この家族のゆがみがあって、結局は変われない。
35年前の作品でも今の若者にひしひしとくるフレーズがあるのではないのでしょうか。
父親の無関心、母親の過干渉が子供をだめにする。それが弟だけでなく、兄も。
やりたいことが見つからない、という闇を抱えたまま物語が終わってしまいます。
困っていることは、自分で気づいて、それを乗り越えて行くしかないんですね。
子供に過干渉になる人に、読んで、気づいて頂きたい作品。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ弟の家庭教師に雇われた風変りな大学生により変わり出す、ある兄弟の日常を描いた物語です。
家庭教師の手腕を見せる物語だと思って読み始めましたが、作品の趣旨は想像していたものと違っていました。
外側に出られない子供たちを始めとして、この作品で描かれる種々の問題は現代でもありふれたものです。
それだけに兄弟の状況全てを家族の問題とするのはやや難しい気もしますが、問題の一面を簡潔に浮き彫りにしたという点では、成功しているかもしれません。
兄の状況とともに観察したまま終幕を迎えますが、今なお問題の解決に動き出せていない、読者の時代をも批判的に捉えられていることが残念でなりません。