本間洋平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この物語の主人公はいったい誰なのだろう?
慎一でもあり、茂之でもあり、吉本でもある。
進行役である慎一の目線から語られているシーンもある。
だが、茂之や吉本の心情が語られることはない。
・長男 慎一
地域で一番の進学校に合格。
母や父に期待され、うっとうしく思いながらも優等生としてふるまい続けてきた。
弟の成績があがるにつれ、両親の関心は自分から弟へと移っていき、彼は優等生を演じることをやめる。
したいこともなく、何ひとつ自分で決めることもない。意固地。
流されるままに時間だけは過ぎていく。
・次男 茂之
他人に対して自分の感情を伝えることもぶつけることも出来ない。
鬱屈した感情は、異様な行 -
Posted by ブクログ
今の若者にひしひしとくるフレーズがあるのでは
すばる文学賞受賞シリーズ。
第五回の受賞は1981年12月掲載なので、もう35年前の話。
ですが嵐の櫻井翔さん主演でドラマにしていたのはなんとなく記憶に新しい。
優秀な僕にグズな弟、という設定が新しい・・・!と感じます。
大体、兄弟に劣等感持っているじゃないですか。
それが、弟が思ったよりグズ、というかちょっと知能に障害をお持ちなのでは、というぎりぎりの人でびっくり。不潔なんだよなー。
でも、執着を持った部分には物凄い知識を持ってるんだろうというのは、随所に現れます。
そんな弟のもとにやってきた家庭教師が凄い、時代だよなぁ。今はこんなんや -
Posted by ブクログ
ネタバレ弟の家庭教師に雇われた風変りな大学生により変わり出す、ある兄弟の日常を描いた物語です。
家庭教師の手腕を見せる物語だと思って読み始めましたが、作品の趣旨は想像していたものと違っていました。
外側に出られない子供たちを始めとして、この作品で描かれる種々の問題は現代でもありふれたものです。
それだけに兄弟の状況全てを家族の問題とするのはやや難しい気もしますが、問題の一面を簡潔に浮き彫りにしたという点では、成功しているかもしれません。
兄の状況とともに観察したまま終幕を迎えますが、今なお問題の解決に動き出せていない、読者の時代をも批判的に捉えられていることが残念でなりません。