川名晋史のレビュー一覧
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【浮かび上がる異様さ】
本書は、世界に広がる米軍基地のネットワーク全体の理解をとおし、膠着する沖縄の基地問題を解決に向けて動かしていくためのヒントを探ることを目的にした初学者向けの書籍である。
米軍は世界に600から800地点に基地を置いている。それぞれの接受国が交渉したり、自然災害に遭遇したり、革新政権が台頭したりするなどさまざまな要因で米軍の面積や兵員数を減らしてきた事実に驚く。
一方で疑問なのが、世界の米軍基地のなかでその質と量とともに圧倒的な上位を占める日本は、なぜここまで「本土」に比べて沖縄に残している割合が大きいのかという点である。そもそも本書の趣旨は、世界に目を向けることで、沖縄 -
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【沖縄の米軍基地過重負担問題はどうしたら解決できるのか?】
本書はサブタイトルに「『沖縄』の相対化」とあるように、このあまりにも長く議論され論点が拡散されてしまった問いを「棚卸し」するために、他の接受国、地域で起きている米軍基地受け入れ問題の考察を行い、国際比較によって問題解決の視座を得ようとした意欲的な一冊となっている。
なかでも注目すべきはグリーンランドの論考である。冷戦後に確立した、米国・デンマーク(接受国政府)・グリーンランド(地方政治主体)という三者間協議の存在によって、グリーンランドは政府への発言権が増し、チューレ空軍基地の運用に意見を反映させる機会を得ているのだという。
じつはデ -
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日米安保、日米地位協定、その一方的な内容について、様々な本を読んできたが、在日米軍基地が国連軍基地と重なっていると言う事実についてはほとんど知識がなかった。
現在も安保理の決定により、日本に国連軍基地が設置され続けている、イギリスオーストラリア、カナダ等の軍人が日本に駐留していると言うことも知らずにいた。
日米安保が片務的な内容であり、地位協定が様々な問題を抱えており、日本は基地を提供し、アメリカは日本を守る、と言う考え方がおかしい、アメリカは日本のために軍隊を中流させているのではなく、アメリカの世界戦略のために日本各地に米軍基地を置いている、その事は理解しているつもりであったが、日本がジブチ -
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在日米軍基地の問題というよりも、在日米軍基地が持つ二面性について着目されている。我々が同問題にあたるときに大抵は日本政府と在日米軍というものに焦点が行きがちであるが、今回はそれが持つもう一つの側面と言うべき、在日国連軍との関係についてフォーカスされている。
いわゆる占領軍としての米軍、英連邦軍という敗戦直後から、その後の朝鮮戦争における「国連軍」との関係、朝鮮戦争後の「国連軍」と日本の関係というものに焦点が当てられる。サンフランシスコ平和条約、吉田・アチソン交換公文、国連軍地位協定などの各種条約の相互関係といった法的根拠のあり方の転換などを見受けることができる。
また、「国連軍」のもつ多国間枠 -
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沖縄に関連する事項を冷静な立場で考察しているのは素晴らしいと感じた.1968年から数年間の基地問題に関する事項は記憶にあるものが多く、当時の社会情勢と反対運動がある意味でうまく連動していたのではないかと思った.現在の素っ気ない雰囲気とはかなり違ったものだったのだ.本土に多数存在していた基地(1952年 本土:沖縄 90: 10))が沖縄に集約された経緯は、"基地問題は本土の「身代わり」となって沖縄が引き受けた”ということになる.首都圏の基地を撤去した「関東計画」(1973.1~76.3)がその中身だ.1978年で26:74に比率に変わっていた.アメリカと日本、さらに沖縄県の三者協議が