菊地よしみのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ嫉妬/事件
著者:アニー・エルノー
訳者:堀茂樹(嫉妬)、菊池よしみ(事件)
発行:2022年10月15日
ハヤカワepi文庫
初出:200年5月、単行本(早川書房)
ノーベル文学賞が発表される時期になった。2022年の受賞者であるアニー・エルノーは、その年に初めて読み(『シンプルな情熱』)、去年も1冊(『凍りついた女』)を読んだ。これが3冊目。中編小説が2本収められているが、『事件』の方は2022年に「あのこと」というタイトルで映画化されたようである。この文庫本も、本来の表紙カバーと、映画化用のものと、2枚重ねになっていた。
そのカバーにも書いてある「オートフィクション」というジャンル -
Posted by ブクログ
著者が過去の自分の手紙を読み返しながら、この小説を書いているようで、オートフィクションという特殊なこのタイプは、はじめて読みました。読みづらかったです。
嫉妬では、心の中での私と、もう一人の私と、さらにもう一人のわたしで会話しているかのようで、自走、仮想、妄想とずっと一人で、狭い部屋にいる感じです。
事件では、街の通行人とのすれ違いやカフェで隣りにいる会話などが常に主人公の孤独感を煽り、クライマックスでは、短い時間が長く感じるシーンが生々しく、罪悪感というか開放感というか複雑な場面が、R指定的です。
男性が読むほうがフェミニズムの存在が理解しやすいと思いました。
やはり事件の方が印象に残り -
Posted by ブクログ
ネタバレ全体的にかなり読みやすい。描写や表現はノーベル賞受賞するくらいだからやっぱり凄い、と納得した。
「嫉妬」は主人公が別れた後、男性が他の女性と暮らしていることを知り、激しい嫉妬に駆られる心情が描かれた作品。女性心理を凄く強烈に描いていて、失恋後だったらちょっとは共感できるのかもしれない。嫉妬によって妄執に取り憑かれる様子がこんなに上手く言語化できるのが凄くて、読んでいて面白かった。でも女って恋人に執着している時間が過ぎ去ると結構あっさり忘れられるもので、それが良いのか虚しいのか、そこも上手く描かれていた
「事件」の方は個人的にはあまり好きではなかった
中絶という題材に加えて、描写がかなり苦しくて -
Posted by ブクログ
ネタバレ劇薬みたいな小説エッセイだった。
40歳にもなって年下男の今カノを特定しようとする様はほぼホラーなのだが、その辺りの葛藤描写が精神病にも近い妄執となっており楽しめた。
ここまで言語化できるという点が面白い。
20代前半で望まぬ妊娠した主人公が3ヶ月間で如何にして堕胎したのかを書いた『事件』はよりショッキングな内容だった。
宗教的に堕胎が許されない場合、闇医者に任せるしかなかったり、堕胎後の出血多量で行った先の病院での扱いも悪いという所がまぁ胸糞。
何より主人公から胎児への愛情が一切無く、生と死と困難としか思っていない所はなかなか日本の小説では味わえない部分だなと思った。 -
Posted by ブクログ
仏映画 あのこと
この原作が事件。エルノーの自伝的小説。それだけに生々しく、想像することを拒絶しそうになる。
60年代フランスはIVG 人工妊娠中絶が違法。
この時代背景でもって、彼女は苦しむ。
果たして中絶することとは、権利であるのか。
それとも。。。
あとがきが秀逸であり、本当に考えさせられた。後にフランスにおいても合法となる中絶。
実存主義的に考えるなら、人は無限に将来に向けて自分を発展させていく、まさに己が主体。そこで妊娠するとは、他者に主体を移すこと。
ボーヴォアールによれば、
子を持つことが女性にとって重荷だとすれば、
それは風習が女性に子を持つ時期の選択を許さないから。
マ -
Posted by ブクログ
2022年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家アニー・エルノーの短編集。『嫉妬』(堀茂樹訳)と『事件』(菊地よしみ訳)所収。
自伝的フィクション(オートフィクション、autofiction)の作家だそうで、自身の経験をもとにしたフィクション。社会問題はさておき、そしてそのことと個人の経験が切り離せるかどうかもさておき、正直エルノーの人生に興味はないし、今回ノーベル文学賞を受賞したということと、そのために文学カフェで取り上げるようになったこと(私が提案したわけだけど)がなければ、わざわざ読むことはなかっただろうなと思う。ナルシシズムのかおりがするものを基本的に受けつけないというのもある