菊地よしみのレビュー一覧

  • 嫉妬/事件

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    ネタバレ

    凄い本を読んだ。
    ノーベル文学賞を受賞されたので、その時に買っておいたのだと思う。ずっと積読でした。
    『嫉妬』という作品と『事件』という作品の2篇が1冊になっている。
    淡々としている文ですが、ものすごく強い力があって心が揺さぶられ震えた。
    読み進めていくうちに複雑な感情が湧いてくる。
    恐怖とか悲しみとか安堵みたいなものが、ぐちゃぐちゃに掻き回されて1つになったような感情だった。
    読後も心の中がまだ小さく小さくザワザワしている。
    それでも暗いイメージはなく、陽射しの明るいイメージが残った本だった。

    「わたし」の自己対話を通して、読者も「わたし」の「経験」を体感するような本だと思った。
    余韻が物

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    2025年06月30日
  • 嫉妬/事件

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    初アニー・エルノー。すごく良かった。小説ってこんなに生身の人間を直に曝け出すことができるんだと圧倒された。
    恐らく筆者自身が経験したであろう出来事を深く正確に綿密に的確な言葉を重ねて描きつつも、決して感情だけに流されることのない冷徹とも言える明晰さ。個人的な出来事を突き詰め続けることで至る普遍。特に嫉妬には自分自身に思い当たる経験があり、個人的な経験を分析して突き詰めて文学に昇華させる彼女の手腕に驚いた。小説というのはこういう書き方もできるだと世界を広げてくれる作品だった。
    事件は男女問わず必読。甘えのない生々しい描写に気分が悪くなるかもしれない。しかしこれが現実なのだ。本作のレビューを読むと

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    2024年04月06日
  • 嫉妬/事件

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    90/100

    この話は男性には理解できないんだろうなと思う

    性に対して様々な多様性が進んでる中、一貫して変わらないのは妊娠するのは「身体的構造が女性」である人たちだけ。

    男性には分からない生理や妊娠などの苦しさ葛藤が、心情描写が細かい訳では無いのに切々と迫ってくるものがある。状況を淡々と文字で説明しており、その状況を想像するだけで胸が苦しくなった。


    男性が悪い訳では決してないけど、結局どれほどの犠牲を女性が、社会的にも、心理的にも、払わなきゃいけないのか凄く伝わってくる。

    最後のあとがきを読んでより一層共感した。

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    2023年12月09日
  • 嫉妬/事件

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    別れた男の現在の彼女への嫉妬を描いた「嫉妬」、中絶が認められていなかった時代のフランスで中絶する「事件」2編のオートフィクション。
    ものすごい解像度と赤裸々さで、感情とその流れが克明に記されていき、全て本当にあったこととしか思えない。
    性愛を重視していることと、時々ある観念的な考え方はフランスっぽいなと思うが、どの国でも女の思考は共通しているところが多いな、と連帯感を覚えた。「嫉妬」なんて失恋した時に読んだら共感の嵐だと思う。

    やはり衝撃的だったのは「事件」。
    読んでいて自分まで下腹部が痛い気がしてくるほどだった。
    中絶を禁じるって、本当に悪しき文化だと思う。胎児の命を軽視するのはもちろん良

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    2023年09月23日
  • 嫉妬/事件

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    「嫉妬」も「事件」も女性として考えさせられる小説だった。アニー・エルノーの小説は自伝的。本当の所は知らない。淡々と書かれているけど、情熱的。その相反する読後の印象が自伝的だと思わせるのだろう。「事件」で知った、フランスは中絶が違法だった期間が長かったこと。フランスのイメージとは大きく異なるこの法律にヨーロッパがいかにキリスト教と結びついているのかを改めて見た気がする。
    「嫉妬」の主人公。恐らく表面上は淡々と生活はしていたのだろう。だけど、内面は相手女性への執着でドロドロしている。それを伝える文章は全くドロドロしてはおらず、一歩間違えばメロドラマ的になってしまう内容をいたく知的で詩的なものに感じ

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    2023年06月30日
  • 嫉妬/事件

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    女性の環境や人生や感性を、客観的に綴る。

    嫉妬 気が狂わんばかりの嫉妬なのに、語り口が客観的で冷静。ある日突然それがバカバカしいことだと気がつくあるある。

    時間 どこまでも自分が大事で、当然のように自分の道を進もうとする価値観が新鮮。グロテスクであるが、それが人間でもある。ヒッチ

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    2023年04月23日
  • 嫉妬/事件

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    凄まじくリアルだが、小説でもノンフィクションでもないという一冊。

    女性の心情を事細かに書いてあるようだが、事実をベースに書いてあるため、非常に読みやすい。

    特に印象に残った文章は、

    ーー正常と言われている世界にいつ戻ってきたのかは、わからない。"正常な世界"とは曖昧な表現だけれども、その意味するところは誰もが理解している。つまり、ぴかびかの洗面台を見ても、列車のなかで旅行客の顔を見ても、もはや何の問題もなく苦痛も感じない世界のことである。ーー(事件)

    表現が分かりやすいのに、どこか奥が深い。そんな文章が最後まで綴られる。

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    2023年03月27日
  • 嫉妬/事件

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    映画の「あのこと」を見てから読んだ。
    映画では痛みをこらえて編み針で堕胎させようとしたり、中絶の費用を私物を売って自分で用意しようとしたりする強い姿が多かったが、この「事件」では不安や恐怖といった感情がよくでていたと思った。
    階級や性差による不自由さや理不尽がよくわかる話。
    「嫉妬」はその嫉妬という感情がこれほど生活に影響するのかと驚いたし、自分ではどうにもできないのだと感じた。

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    2023年03月26日
  • 嫉妬/事件

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    面白かったんだけど、中絶手術の様子が生々しすぎてトラウマ級に辛かった。ちょっともう一度読める気がしないです。

    人工中絶が合法化していない&技術が発展していない時代、女性はそれだけ過酷な方法で自分の身を守っていたんだということがよく伝わりました

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    2025年07月03日
  • 嫉妬/事件

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    読み友さん、読んでいた本。気になっていた。☺ 一日に没頭した2作品。あまりに、生々しくて読むのが辛かった中絶に関する【事件】 【嫉妬】、誰にでもあるかもしれないし、ここまではないかもしれないし。 久しぶりに翻訳物。やっぱりよかった。 アニー・エルノー。フランスの作家さんで、ノーベル文学賞を受賞された方です。

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    2025年05月30日
  • 嫉妬/事件

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    妄想の代償と行動の反動と、様々な感情にただ振り回されて心が占有される様「嫉妬」

    優生手術の実態を克明に描き、苦悩と戦った女性と、権利に苦悩する息苦しさを謳う「事件」


    一歩違えば嫉妬していたかもしれないし、油断していれば事件に巻き込まれていたのかもしれない。一人称で記されているからこそ他人事じゃなく感じる。生まれた環境が違う、自分の境遇を呪う、なんて自分と他人を比べることがあると思う。そんな表層の話ではない。真に相手や時代に向き合ったとき、見える本性を読んだ気がする。

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    2025年05月27日
  • 嫉妬/事件

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    別れた恋人のSNSを覗きみたり...
    いつまでも引きずってたり、
    忘れられなかったり...
    そんな経験がある中で「嫉妬 」で刺さりまくり、穴があったら入りたくなる。
    でも、この作品のおかげで自分を客観的に見ることができた、大切な作品。ありがとう。

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    2025年01月31日
  • 嫉妬/事件

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    「彼をもう一度自分のものにしたかった」 

    当時真実だったただ一つのこと、私はそれをけっして口にしないつもりだったけれど、それは、「あなたと寝たい、そして、あなたにもうひとりの女性を忘れさせたい」だった。他のことはすべて、厳密な意味において、フィクションにすぎなかった。

    これが嫉妬の誕生でしょう。

    精神と肉体のステータスを満たすもの、満たしているものを喪失する、奪われる危険性にたいしてだとか、自分が手にできないものに対して抱かれるのではないでしょうか。
    また、それにたいして"努力をしていない"であったり、"努力の程度"が低い者ほど強く抱く傾向にあると

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    2025年01月29日
  • 嫉妬/事件

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    この作品の言葉にはあまり感情が見られない。
    出来事を言葉にすることで与えられてしまう、ある種のフィクション性がなるべく排除されている。
    記憶がドラマチックに歪曲されてしまうことを作者は危惧しているように思う。
    そういった意味で最もノンフィクションに近い小説だった。

    印象的だった箇所
    「当時真実だったただ一つのこと、私はそれをけっして口にしないつもりだったけれど、それは、「あなたと寝たい、そして、あなたにもうひとりの女性を忘れさせたい」だった。他のことはすべて、厳密な意味において、フィクションにすぎなかった」

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    2024年01月26日
  • 嫉妬/事件

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    ノーベル文学賞に身構えたが、非常に読みやすかった。

    作者の経験をから書かれた、ノンフィクションとも私小説とも言えない感じの文章。
    それだけに生々しく苦手な描写も有り。

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    2023年04月12日
  • 嫉妬/事件

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    『嫉妬』と『事件』の2作品。
    どちらも興味深いテーマだった。
    妊娠、中絶、出産。女性としての生殖機能があれば必ず考えなければならないできごと。
    何を選択してもみんなが幸せになれる世の中になればいいのにね。

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    2023年04月11日
  • 嫉妬/事件

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    私は終えた。嫉妬に囚われた想像界、ここではそれは、嫉妬の虜であり、かつ観客であつわた私自身よ想像界だったわけだが、そこに現れるさまざまな形象を抽出することを。

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    2023年03月25日
  • 嫉妬/事件

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    縁あって読む事になった小説。「嫉妬」「事件」の2作収録につき別々に感想を書く。

    「嫉妬」
    嫉妬に駆られている自分を冷静に見つめようとしながらもそれを失念し、ふと気付くと嫉妬が原動力になって色んな事をやらかしている、やらかそうとしていた事を冷静になった自分が書き記している、という作りになっていて面白いなと思った。
    嫉妬から解放された主人公(?)が、当時の心情を分析しながら回想する時の冷えた描写が中々刺さるし、明け透け過ぎて笑えてしまう事もしばしば。
    しっかり消化するには脂身多め(自分的に)だが、何度も再読する価値があるな、と思った。

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    2023年02月18日
  • 嫉妬/事件

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     映画「あのこと」を先に観てから原作読みました。映像が何せ衝撃だったので、小説はそれに比べると淡々と書かれていた印象。それでも、主人公の苦悩、女性だけが受ける苦痛はひしひしと伝わってきました。
     人工中絶が合法化されたのは日本の方が早かったことを解説を読んで知り、とても意外でした。未だ日本では経口妊娠中絶薬が認可されていないなど、海外より遅れている印象があったからです。でも、解説によれば、日本で中絶が合法化されたのは、優生保護法により不良な子孫を残さないために中絶が必要になったとのことで!ぞっとしました。
     本書により優生保護法についても考えるきっかけになりました。

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    2023年02月05日
  • 嫉妬/事件

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    2023.1.14

    喉の奥に胸の奥に、後味がざらりと残る。

    追体験とはこのようなことを言うのか、
    と考えさせられるくらい、とめどない感情の波に呑み込まれ揺さぶられてしまう。
    読者の想像力や思考力を試しているかのような、畳み掛けるような筆致が続く。

    これは、遠い昔の話ではないのではなかろうか。
    いま我が身に起こったばかりのような迫真さ。

    中絶にまつわる世界情勢が巻末で解説されている。
    この本がノーベル文学賞受賞の話題と共に世界に広まることで、女性の人権と政治と宗教を見つめ直す契機とせねばならない。
    だからこその受賞ではと思い巡らせる。

    邦題は「事件」だが、映画版のタイトルは「あのこと」

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    2023年02月04日