菊地よしみのレビュー一覧

  • 嫉妬/事件
    初アニー・エルノー。すごく良かった。小説ってこんなに生身の人間を直に曝け出すことができるんだと圧倒された。
    恐らく筆者自身が経験したであろう出来事を深く正確に綿密に的確な言葉を重ねて描きつつも、決して感情だけに流されることのない冷徹とも言える明晰さ。個人的な出来事を突き詰め続けることで至る普遍。特に...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    90/100

    この話は男性には理解できないんだろうなと思う

    性に対して様々な多様性が進んでる中、一貫して変わらないのは妊娠するのは「身体的構造が女性」である人たちだけ。

    男性には分からない生理や妊娠などの苦しさ葛藤が、心情描写が細かい訳では無いのに切々と迫ってくるものがある。状況を淡々と文字で...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    別れた男の現在の彼女への嫉妬を描いた「嫉妬」、中絶が認められていなかった時代のフランスで中絶する「事件」2編のオートフィクション。
    ものすごい解像度と赤裸々さで、感情とその流れが克明に記されていき、全て本当にあったこととしか思えない。
    性愛を重視していることと、時々ある観念的な考え方はフランスっぽい...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    「嫉妬」も「事件」も女性として考えさせられる小説だった。アニー・エルノーの小説は自伝的。本当の所は知らない。淡々と書かれているけど、情熱的。その相反する読後の印象が自伝的だと思わせるのだろう。「事件」で知った、フランスは中絶が違法だった期間が長かったこと。フランスのイメージとは大きく異なるこの法律に...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    女性の環境や人生や感性を、客観的に綴る。

    嫉妬 気が狂わんばかりの嫉妬なのに、語り口が客観的で冷静。ある日突然それがバカバカしいことだと気がつくあるある。

    時間 どこまでも自分が大事で、当然のように自分の道を進もうとする価値観が新鮮。グロテスクであるが、それが人間でもある。ヒッチ
  • 嫉妬/事件
    凄まじくリアルだが、小説でもノンフィクションでもないという一冊。

    女性の心情を事細かに書いてあるようだが、事実をベースに書いてあるため、非常に読みやすい。

    特に印象に残った文章は、

    ーー正常と言われている世界にいつ戻ってきたのかは、わからない。"正常な世界"とは曖昧な表現だけれども、その意味す...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    映画の「あのこと」を見てから読んだ。
    映画では痛みをこらえて編み針で堕胎させようとしたり、中絶の費用を私物を売って自分で用意しようとしたりする強い姿が多かったが、この「事件」では不安や恐怖といった感情がよくでていたと思った。
    階級や性差による不自由さや理不尽がよくわかる話。
    「嫉妬」はその嫉妬という...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    この作品の言葉にはあまり感情が見られない。
    出来事を言葉にすることで与えられてしまう、ある種のフィクション性がなるべく排除されている。
    記憶がドラマチックに歪曲されてしまうことを作者は危惧しているように思う。
    そういった意味で最もノンフィクションに近い小説だった。

    印象的だった箇所
    「当時真実だっ...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    ノーベル文学賞に身構えたが、非常に読みやすかった。

    作者の経験をから書かれた、ノンフィクションとも私小説とも言えない感じの文章。
    それだけに生々しく苦手な描写も有り。
  • 嫉妬/事件
    『嫉妬』と『事件』の2作品。
    どちらも興味深いテーマだった。
    妊娠、中絶、出産。女性としての生殖機能があれば必ず考えなければならないできごと。
    何を選択してもみんなが幸せになれる世の中になればいいのにね。
  • 嫉妬/事件
    私は終えた。嫉妬に囚われた想像界、ここではそれは、嫉妬の虜であり、かつ観客であつわた私自身よ想像界だったわけだが、そこに現れるさまざまな形象を抽出することを。
  • 嫉妬/事件
    縁あって読む事になった小説。「嫉妬」「事件」の2作収録につき別々に感想を書く。

    「嫉妬」
    嫉妬に駆られている自分を冷静に見つめようとしながらもそれを失念し、ふと気付くと嫉妬が原動力になって色んな事をやらかしている、やらかそうとしていた事を冷静になった自分が書き記している、という作りになっていて面白...続きを読む
  • 嫉妬/事件
     映画「あのこと」を先に観てから原作読みました。映像が何せ衝撃だったので、小説はそれに比べると淡々と書かれていた印象。それでも、主人公の苦悩、女性だけが受ける苦痛はひしひしと伝わってきました。
     人工中絶が合法化されたのは日本の方が早かったことを解説を読んで知り、とても意外でした。未だ日本では経口妊...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    2023.1.14

    喉の奥に胸の奥に、後味がざらりと残る。

    追体験とはこのようなことを言うのか、
    と考えさせられるくらい、とめどない感情の波に呑み込まれ揺さぶられてしまう。
    読者の想像力や思考力を試しているかのような、畳み掛けるような筆致が続く。

    これは、遠い昔の話ではないのではなかろうか。
    ...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    短編集2篇
    自伝風の小説。簡潔に隅々まで詳しく内なる感情をその流れるままに記録して、その時の心情が余すところなく再現される。思わず引き込まれ感情の海にどっぷり浸かって追体験した気になった。中絶場面の恐ろしさに気分が悪くなった。
  • 嫉妬/事件
    ノーベル文学賞受賞者による。
    筆者の体験したことかのように書かれている。
    事件は、中絶が禁止されていた時代のフランスで妊娠してしまった学生が中絶を果たすまでの体験。
  • 嫉妬/事件
    本作は、ノーベル文学賞受賞者のアニーエルノ著の作品で、映画化もされているみたいです。
    本作品は、一人称で書かれており、実体験をもとにしたストーリー展開で、主人公の内面の葛藤を生なましく描き、とてもリアルでした。
    著者の作品は、心に内在する熱い情熱が吹き出してくるような作品が多く、火傷したような読後感...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    2022年〈ノーベル文学賞〉受賞のアニー・エルノーさんの「嫉妬」「事件」を合わせて文庫にした本。

    「嫉妬」は、別れた年下の男が、他の女と暮らすことを知り、嫉妬に苦しむ話である。
    嫉妬とは、目に見えない醜いものだと思っている。
    できるなら嫉妬は、したくない。
    嫉妬に狂うとなにも見えなくなる。
    穏やか...続きを読む
  • 嫉妬/事件
    身体を傷つける具体的な内容や醜い心を包み隠さない内容等が書かれており、うわ!と思わず声が漏れてしまった。人間が窮地におかれた時の見せない醜くい部分も人間らしいなと思う。
  • 嫉妬/事件
    著者が過去の自分の手紙を読み返しながら、この小説を書いているようで、オートフィクションという特殊なこのタイプは、はじめて読みました。読みづらかったです。

    嫉妬では、心の中での私と、もう一人の私と、さらにもう一人のわたしで会話しているかのようで、自走、仮想、妄想とずっと一人で、狭い部屋にいる感じです...続きを読む