別れた男の現在の彼女への嫉妬を描いた「嫉妬」、中絶が認められていなかった時代のフランスで中絶する「事件」2編のオートフィクション。
ものすごい解像度と赤裸々さで、感情とその流れが克明に記されていき、全て本当にあったこととしか思えない。
性愛を重視していることと、時々ある観念的な考え方はフランスっぽい
...続きを読むなと思うが、どの国でも女の思考は共通しているところが多いな、と連帯感を覚えた。「嫉妬」なんて失恋した時に読んだら共感の嵐だと思う。
やはり衝撃的だったのは「事件」。
読んでいて自分まで下腹部が痛い気がしてくるほどだった。
中絶を禁じるって、本当に悪しき文化だと思う。胎児の命を軽視するのはもちろん良くないけど、そちらを盲目的に尊重して、産む側の人権がないがしろにされるのは、本当にいいことなんだろうか。
ていうか中絶しないといけない状況に追い込む男の方が明らかに悪くない?
中絶が成功しそうなタイミングで、主人公は自分の血と体液に濡れたパンティを見る。それで、死んだ飼い猫の血と体液の染みが自分の枕の真ん中に残されていて、学校から戻ってきたときには、猫はお腹のなかで死んだ子猫たちとともに既に埋められていたことを思い出すというエピソードが、抒情的で心に残った。