大社淑子のレビュー一覧

  • 青い眼がほしい

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    ネタバレ

    言葉が出ない。重たい作品だが、日本文学と異なる点も多くあり、学びになった。感情移入すると、無理だ。読めない。
    あれは何を示す?これは何を示す?というテキストに対する疑問が多く湧いてくる…。
    そういう話を抜きにするなら…。青い眼を求め狂っていくピコーラだが、クローディアたちも同じ黒人である。ニグロ、という枠をどこに当てはめるか…。対比によってのみ生きていく価値観、そこに黒人への差別が投影されているのか…。
    何度も読みたい作品である。

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    2025年02月11日
  • スーラ

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    ネタバレ

    フォークナーのヨクナパトーファ・サーガに通じるものを感じた。善悪がテーマであり、スーラがいわゆる悪女のキャラクターである。スーラは背徳、性的放縦、裏切りに生きるけれど、それらを反省して悪だと考えることはせずに、その果てに自分が何かに、誰かに愛されている、誰かとの友情が成り立つと実感できると考えている。いわゆる毒母に育てられると、自己肯定感が低く、愛情に飢えた子に育つ。そうなるに当たっては、社会的に差別された黒人の貧困、野蛮も当然関係しているのだろう。

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    2025年01月30日
  • 青い眼がほしい

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    デビュー作?
    とんでもない作品だ。
    比べるべき作品は、『苦海浄土』しか思い浮かばない。

    差別を僕らはある決まった物語の尺度でしか見ていなかった。

    その奥底、本当の意味をトニ・モリスンの言葉、表現で初めて知る。しかし、それは序の口という印象だ。悲惨に底はない。

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    2023年08月22日
  • 青い眼がほしい

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    文章の素晴らしさに驚いた。「秘密にしていたけれど、1941年の秋、マリーゴールドはぜんぜん咲かなかった」「秘密にしていたけれど」の言葉の意味が持つ親密さ、打ち明け話、信用、このニュアンスが持つ子供の無垢さ。それが差別、暴力の助長につながる。そこをとてもうまく同居させている。

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    2023年05月18日
  • 青い眼がほしい

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    読んだ本は1994年6月30日初版発行の早川書房の本、黒人女性だから書ける本、深く重い印象、ピコーラと言う黒人の女の子の名前が記憶に残る、著者と訳者が1931年の同年生まれ。

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    2023年01月30日
  • 青い眼がほしい

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     1941年のオハイオで、黒人の少女ピコーラは「青い眼にしてください」と熱心に祈っていた。黒い肌で縮れ毛の自分は醜い。美しかったら、不幸な人生は違っていたに違いないのだ。ピコーラは貧しく、学校ではいじめられ、父親の子どもを宿すことになる。
     語り部を担当する少女がいるにはいるが、物語はあちこちに飛び、何の話だか分からなくなる。これには著者の狙いがあり、読者が「責任を顧みることをせず、彼女を憐れんでしまうというという気楽な解決のほうへ」流されないよう、読者自身が語りを再構成するようにしむけたかららしい。
     この手法のせいかは分からないが、確かに「ピコーラがかわいそう」「父親や白人が悪い」で済ませ

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    2022年07月06日
  • 青い眼がほしい

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    差別を受かる黒人の精神的苦痛の表現がすごい。読めてしまう。
    嫉妬心と羨望。ミスターヘンリーの淡緑色の言葉。

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    2022年03月24日
  • ジャズ

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    ネタバレ

    作品紹介にもあるが、化粧品のセールスマンをやっているジョートレイスが、恋に落ちたドーカスを射殺してしまう。ドーカスの葬式の日にトレイスの妻ヴァイオレットがナイフで切りつける。トレイスは親が赤ん坊を捨てた孤児、ドーカスは暴動で両親が殺されている、ヴァイオレットは、母親のローズディアが井戸に自殺している過去をもつ。登場人物のつらい過去を背景に、お互いの愛を正常に育むことができない。読めば読むほど味わい深い、何度も読み返したい一冊。

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    2022年01月15日
  • スーラ

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    オハイオ州の小さな町、メダリオンが舞台の物語、二部構成、主人公のスーラピース、ネルライトの友情を描く。第一部はネルが結婚する1927年まで、第二部はスーラがメダリオンに戻ってくる1937年から始まる。社会常識的な生き方をするネルと、自由奔放に生きるスーラの対照的な性格のもととなる母、祖母の背景を含め話は展開される。ネルの夫を寝取って、棄ててしまうことからスーラと疎遠になってしまうが、スーラが亡くなる間際ネルは最期に会いに行くが、お互いが理解し合えないまま家を出る。スーラの埋葬式の後、仲のよい友達だったことに気づき号泣する。登場人物が何をもたらしてるのか、また一読するだけでは解読できない深い後味

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    2022年01月03日
  • 青い眼がほしい

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    自分の容姿を醜いと思い込み美しい青い眼に変われるよう祈る少女ピコーラ。いつか自身の持つ美しさを見つけ人生を変えて行く物語かと期待していたが…更に厳しい苦難が。

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    2021年09月17日
  • 青い眼がほしい

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    ネタバレ

    既に形成された価値観を覆すことは難しい……
    だけど、2020年を迎え、今まさにアメリカを中心に、黒人達が立ち上がろうとしている

    日本人達は対岸の火事の様相。外国の著名人が声を上げてもシラーっとしてる。だけど、日本に住む外国人に対する排他的な視線や感情を、彼等は敏感に感じ取っているはず……。

    日本人も、自分の価値観を今一度確かめてみる必要があると思う。


    しかし、この本の素晴らしいところは、ピコーラを破滅に追いやっていった人物達をも鬼畜な敵として描くのではなく、『人間』として描いているところだと思う。どんな想いを抱いて生き、価値観が形成されていったのか、その足跡を丁寧に描いている。

    自分

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    2021年02月21日
  • ラヴ

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    「スーラ」とよく似ている、女同士の友情を綴った物語。それは、爽やかな心ではない。憎しみの上に、苦しみの果てに、悲しみの中に。
    深い傷が膿まなくなった頃、その傷跡をいとしく指でなぞることができるだろうか。

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    2009年10月04日
  • 青い眼がほしい

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    万人にはお薦めできないが、人間と人生のネガティブな側面に正面から向き合えるような、真の意味で勇敢な方々に強くお薦めしたい書籍である。

    登場人物が皆、何らかの(主に人種的な意味で)シビアな闇を抱えている。その闇が詳らかに描写され、そして息つく間もなく事件が続く。

    最も凄惨な目に遭う人物は、間違いなく主人公のピコーラという黒人の少女だ。本人にはほとんど落ち度はない(ように見える)のに、行く先々で様々な悲劇に見舞われる。
    一見悪くないのに不遇な扱いを受ける人物は様々な作家の様々な作品で出てくるが、ピコーラはその極致と呼べそうだ。

    個人的に特に共感したのは、終盤に出てくるあるエセ呪術師だ。彼の歪

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    2025年06月07日
  • 青い眼がほしい

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    比喩が秀逸 母親たちの井戸端会議を、「少しだけ意地悪なダンスみたいだ」とするのハッとした

    「どうやって」をいろんな人の視点から描くことで、「どうして」を考えさせる、お手本のような作り方だと感じました

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    2025年03月16日
  • 青い眼がほしい

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    醜いと思っている黒人の少女ピコーラとその周りにいる2人の姉妹。秋から次の夏までの少女たちを取り巻く変化と何かの象徴の物語。ピコーラの妊娠やその父母の悲惨な生い立ち、ネグレクトや近親相姦などの虐待どんどん暗い方向に進む物語の青い眼への希求と変身。妄想?精神の崩壊?全てが悲しい。

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    2025年03月11日
  • 青い眼がほしい

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    終始重苦しい気持ちで読んだ一冊です。
    ただ、今この瞬間にも人種差別であったり、本人の力だけではどうにもならないところで生きている人たちがいる、ということから目を背けてはならないという戒めのような作品だと感じました。
    風景描写や家具のソファについて細かく繊細な記載があり、翻訳の関係もあるのか外国の小説はこういったタッチで描かれるものなのかな、と新鮮でした。
    みんな一生懸命に生きている。その姿は無条件に美しい。

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    2025年01月21日
  • 青い眼がほしい

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    弱者の中にある、さらなる弱者への差別。不幸の連鎖(親の貧しさ、親に育児放棄された親など)。
    すごく読みづらい、世界観に入り込むのに苦労はしたものの、ピコーラの身に起こった悲劇が今も続いていることを思うと切なくなる。青い眼、眼というよりも「青」の象徴するもの、聖母マリアの色、白色人種の瞳などいろいろあるかもしれないが個人的には聖母の象徴のように思えた。苦しみの中で縋る存在、生きる寄す処、それが「青」い眼なのかもしれない。

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    2024年11月27日
  • 青い眼がほしい

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    土地に、暮らしに染みつき終生その生を縛り続ける差別。悲しみの果てにこぼれ落ちたその願い。つらい。
    黒人差別が“当たり前“に横行していた時代の暮らしが悲しい。

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    2024年08月15日
  • 青い眼がほしい

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    筆者に初めて触れたのは「ホーム」を読んだ時。朝鮮戦争から戻った兄妹の無残な、救いのない話。あたかも御須メルを文でなぞるような癒しと救いの魂を感じた。

    先日フォークナーを久しぶりに読み、難解で捉えようのなかった偉大なノーベル賞作家に再度くらいついてみる気になったから。
    読むという行為は「単に頁を捲り、その世界に触れる」だけでは無謀で、入念な下調べとプロット研究、筆者の成育、生活歴、家柄を知って・・成って行くと私には初めての足踏みをしつつかかる。
    そこに浮き上がってきた、トニ・モリスン・・フォークナーと同じ、ノーベル賞作家、しかも扱うテーマが人種差別。

    何も知識がなかったら、やはり食いつき辛か

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    2024年01月22日
  • スーラ

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     トニ・モリスンは非常に読みにくい。主語と述語がかみ合っていなかったり、目的語がなかったりで意味がとれないところも少なくない。ストーリーも追いづらい。それなのに、読む者の胸に何かを残すことができる。一流の作家だと思う。読後感はジブリ映画を見た後に近いものがある。

     スーラは常人の社会規範とはズレた感覚の持ち主である。友人を守るため、自分の指を切り落とすことも辞さない一方、友人の夫を寝取ることも厭わない。スーラが老いた祖母を追い出し、奔放に振舞うのを見ると、町の住人は急に自分の不道徳を顧みて良識を持つようになる。自分はスーラ的ではないと証明するように。

     スーラは自分の思い通りに振舞っている

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    2023年08月06日