セルマ・ラーゲルレーヴのレビュー一覧
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ネタバレ前説で簡単に“ニルスが小さい理由”と“ガチョウに乗って旅をしている”ことが書かれているので、原作を知らなくても楽しめるかと思う。
ある夜ニルスが迷い込んだのは、住民達の傲慢さに天罰がくだり、海底に沈んだ町。
自身の行動の選択によって、その町を助けることができなかったことに、悲しさと口惜しさをにじませるニルスに、成長を感じる(動物いじめてた子なのでね)。
文章だけでも情景が胸の中に広がっていくけれど、はっきりとした色合いなのに柔らかさのある絵が、いっそう物語を引き立てている。
ヨーロッパの風景写真もついた解説で、背景の理解もすすんだ。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ最近クマのニュースが多いので考えさせられる。
あと、もののけ姫っぽい(いや、もののけ姫がニルスっぽかったってこと?)
人間が山の中に造った製鉄所のせいで、生活が困難になる熊。おそらく熊だけじゃないと思う。
食べない代わりに製鉄所を燃やしてくるよう熊から脅されるニルス。
ニルスとしては鉄がいかに人間にとって重要か分かっているし、職人達の技術にも尊敬の念を持っているどころか、製鉄所の炎を美しいとさえ感じているのが、ものすごく人間的で興味深い。
逆に人間が動物の生息地を奪ったことも頭にはあるし、動物の命についても尊重できるようになったニルス。
相反する気持ちで悩んでいる成長した姿にホッとするも -
Posted by ブクログ
ネタバレ父親の生き方に違和感を覚えつつも、それが正しいと信じて生きてきた息子は、家を継いで懸命にやってきた。
子どもの頃飼っていた馬(すでに年老いている)と再会したり、父親のせいで孤児となった子ども達と対峙したことで、心が大きく揺さぶられ苦しむ。
青年が親から解き放たれ、自分自身を確立するお話。
とはいえ、父親のしてきたことも、その時代の中では簡単に否定できるものでもなかったのかもしれない。
いつの時代も、親子間の大きなテーマなのだろう。
タイトルにもなり、前説にまである“風の魔女”。はっきりと存在を示すのは2ヶ所しか無いが、巻末の解説を読んで唸らされる!物語のあちこちに、魔女はちゃんといた! -
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Posted by ブクログ
ネタバレ“ニルスが出会った物語”シリーズ最終巻。
…なのにニルスは出てこない。
旅の途中でニルスが耳にした昔話。
巨人族がわざと荒れ地にして人間が踏み込めないようにしてきた土地。そこへやってきた人間の戦士に、難題をふっかけて追い払おうとする巨人の女房。
完璧とはいえないまでも、なんとかクリアしていく。そのおかげで荒れた大地が美しく力強くよみがえる。
国の始まりの神話。この場所はこんな風にして出来たんだよ~ってヤツ。
そういえば子どもが中等部でやった英語劇でも、アイルランドの巨人の話で、女将さんが賢かった(ウチの子が演じた)のを思い出した。
本編がラストへ向けてどうなっていくのかが解説に少し書かれ -
Posted by ブクログ
ネタバレガンの群れの隊長アッカと、アッカが育てたワシのゴルゴのお話。
ニルスの旅が始まる3年前のこと。
ガンはワシを「強盗」と呼びつつも、夏の間に過ごす谷では、両者は上手く共生していた。
そんな中親が戻ってこないワシのヒナを、ガンとして育てることにするアッカ。
とはいえ子育ての中でお互いの小さな違和感が、結果的に大きく隔てる原因となり、それぞれの道を行くことになる。
親子としての愛情と、譲ることのできないアイデンティティ。子どもが成長して自分を見極め出した時、まさにこういったすれ違いや別離は起きるもんだよね。
そこからが子が自分としての人生の選択をしていくことになる。
ケンカ別れみたいな2匹だけ -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作で熊に食べられる寸前だったけど、今作では人間に捕まっている。ピンチがピンチ過ぎて心臓に悪い。
ストックホルムでバイオリン弾きをしている老人が、故郷を思い憂いている。
この老人が、捕らえられたニルスを買って助けることになる(子どもの頃母親から聞かされていた“小人に親切にしなければいけない”という教えのため)。
そんな老人の前に突如現れる紳士、実は正体はいい意味でトンデモナイ人。紳士が老人にしたストックホルムの成り立ちのおとぎ話(人魚姫と、天女の羽衣が混ざったような話)も、正直言うと「で?」ってなっちゃう。
“ストックホルムのことも、誰でもが故郷だと思っていいんだよ”という考え方は、“三 -
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ニルスを子どもに紹介したいけど、本編はちょっとハードすぎて、こちらはどうかと思って読んでみました。本編のことは最初に小さな字でちらっとしかかかれていないので、ほとんど意識されないまま読まれることを前提としているようです。そう思うと、ちょっとニルスの立ち位置がわかりずらいかもしれませんが、まああまりその辺は気にしなくても子どもは大丈夫だと思います。ただ情景描写がとても美しい、と同時にかなり長く、長い描写に馴れない子は途中で放り出しそうな気がします。この描写をものともしない読者を育てたいのはやまやまなのですが・・・ 最後まで読めば余韻を残す、とても不思議なお話しです。