S・J・ベネットのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ絵画紛失と脅迫の手紙、家政婦の死去、これらが思わぬところで繋がっていくのが面白かった。
第一弾に引き続き仕事ができて頼り甲斐のあるロージーと、賢く愛らしくチャーミングなエリザベス女王の姿があって、思わず顔が綻びる。
でも事件に絡んでくるのはレイシズムやミソジニズム。ありそうだと思えてしまうあたり、差別と偏見は容易には消えてなくならないのだと痛感する。
女王が謎を解くことだけに執心せず、死者を心から弔うところが良い。でも、丸く収めるために黙ってしまうところはモヤモヤが残った。褒めること、信頼を伝えることで、未だ偏見の残る男性たちが自分たちを有能だと思い込んでしまうところも。そもそも最初、女王に隠していたことは問題にされないのだろうか。
そういう細かいところは気になるけれど、女王の立場を考えれば、事態の収拾が第一なのかもしれない。このあたりの王族の葛藤のようなものを複雑な思いで読んだ。国民を分け隔てなく愛し、国民からも愛されるという関係を維持するには、並々ならぬ努力と自制が必要なのだろうと推察した。
ラストはまたも心温まるストーリーになっていて、こういう人間味を感じさせる点がこのシリーズの魅力だと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ城での晩餐会などは非日常ながら、王族と王室に仕える人々がみんな人間味あふれる姿で描かれていて、身近に感じられる要素があった。
女性がどんな扱いを受けているかに気づいてハッとした。長年女王として君臨してきた人でも、性別や年齢で偏見を持たれていたり軽んじられることがあるのかと愕然としてしまった。実際は分からないけれど、ありそうなことだ。
女性同士で密かに手を組んでサクサク情報を集めていくところが、読んでいて楽しかった。事件の性質上、おおごとにせず上手く立ち回る必要があり、それを軽やかにやってのけるロージーが頼もしかった。陛下とのやりとりも素敵だった。
それだけに、すべてが上手く回るように陛下が動いていたことを、誰にも明かせないのが本当にもどかしかった。男たちはヒントをもらったことに気づきもせずに……と憎らしく思ったけれど、陛下が影に徹することにしているのは、そのお立場からも仕方のないことだった。国民に愛されて信頼される存在となるには、自らが分け隔てなく国民を愛し信頼しなければ成り立たない。
遺族や被害者へのあたたかい心配りで物語は締めくくられていて、最後にすべて持っていかれたと思った。 -
Posted by ブクログ
エリザベス女王にとっては幼い日々の思い出がつまった場所「わが家」であるウィンザー城で若い男の遺体が発見される。
その男は晩餐会に呼ばれた若きロシア人のピアニストだった。
事件についてお城では箝口令が敷かれ、警察とMI5はロシアのスパイによるものとし捜査を始めるが…
なんと〜
難航していたその事件を華麗に解決してみせるのは御年90歳の名探偵、エリザベス女王!
しかも秘書官を使って情報を集め謎解きをする安楽椅子探偵ときた…(笑)
確かに謎解きは平凡だけど、実際の出来事や、実在する人物の登場に陛下の私生活を覗き見れたような気持ち…
そして、
もしかして陛下は本当に普段から謎解きをされているんじゃないかしら?と想像してみたり…(笑)
何百人という使用人はみんな家族!とおっしゃる通り、女王陛下は彼らを大切にし尊重し、宮殿をしっかりと守ってくださっているのです…
女王陛下が国民に愛される理由がよく分かる〜
とにかく
聡明な女王陛下らしい事件の解決ぶりに拍手喝采〜!
そして、ラストの陛下のご配慮にはもう胸が熱くなるのです -
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ネタバレ女王陛下と秘書官補、またまた謎解き。
女王の信頼厚いハウスキーパーが変死した。周囲からは煙たがられていた彼女は数々の嫌がらせを受けていた。しかし嫌がらせを受けていたのは彼女だけではなかった。ブレグジットに揺れ、アメリカ大統領選挙に気を取られ、世界の変化を感じる女王陛下は自分の所有物である絵が思いも寄らないところにあった謎を解くためにロージーに依頼をしていた。すべてが繋がったときに見えてきたものは——。
前巻もそうだが、女性の戦いを描いた小説だと言ってもいい。女性だから、と扱われること。たとえ君主が女性の国でも、あまく見られたり不名誉な言葉で表現されたりはするのだ。それを女性同士の連帯でしなやかに乗り越えていこうとする姿が描かれているのが気持ちのよいところでもある。
女王陛下がなぜ美術的価値がそれほどない船の絵に執着したのかがわかるラストシーンがとてもチャーミング。そしてあらためてフィリップ殿下の逝去は女王陛下にとって大変なことだったのだとしみじみ思う。現実の女王陛下はおそらくフィリップ殿下と同じところに行ってしまったけれど、願わくばまだこのシリーズを読みたいと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ女王陛下は名探偵!
エリザベス2世の愛するウィンザー城で若いピアニストが変死した。心を痛める女王陛下を気遣いながら捜査が進められているはずだった——ナイジェリアにルーツを持つ秘書官補のロージーは上司にも秘密の任務に選ばれる。それは"ボス"女王陛下の推理を手伝うこと!
すごい。イメージするエリザベス2世がそこにいて、推理を働かせていく。もちろん女王陛下なので足を使って手がかりを集めるわけではない。バディとなるのは秘書官補のロージー。タフでクールなヒーロー。しかもこのバディ制度は前から続いていたものらしい。そんなのいくらでも過去に遡ってエピソードが書けてしまう。こんなに楽しい安楽椅子探偵の設定ができたなんて!
名探偵はただ事件を解決するだけではなく、皆が幸せに向かうように収めなくてはならないと思っている。女王陛下の推理は、この条件を見事にクリアしていく。そのような態度をとる理由が、長きに渡って国家君主としてあらゆる局面を乗り越えてきたことに、周囲の忠誠と尊敬を集めているところにあるように描かれているのがよい。憧れる「英国と女王陛下」の姿がここにある。
愛すべきフィリップ殿下の描かれ方がとても好き。2人の絆というか姿というか、やり取りがとてもよかった。 -
Posted by ブクログ
エリザベス女王の若い頃の設定だと思って読んだら違っててびっくり。89歳のエリザベス女王が登場。物語の中で90歳を迎えるんだけど、わりと最近の設定。ロイヤルファミリーや各国のお偉いさんの名前がそのまま出てくるので、読んでて顔が頭に浮かんで、物語に入り込みやすかったかな。これ実際あったことではないか、と思ってしまう。
エリザベス女王のお気に入りのウィンザー城で事件が起きます。その事件解決のためにエリザベス女王が動きます。秘書官補のロージーがアシスタントしてます。安楽椅子探偵なのかな?と思ってだけど、違います。女王自ら現場を見に行ったりとなかなかの行動派。ロージーは女王が動きが取れないときに、秘密裏に動いて女王を助けます。この二人を読んでて、アガサ・クリスティの『パディントン発4時50分』のミスマープルとスーパー家政婦(名前は忘れちゃったけど)みたいと思いました。
物語を読み終え、エリザベス女王はどんな方だったんだろう?と考えてしまいました。私が知ってるのは、遠い異国の女王、国民に愛されている、それくらいしか知らない。これもTVの情報であって実際はどうなんだったんだろう?この物語では、女王としての顔を持ちながら、好奇心旺盛で行動派。優しくて、家族、城に仕えてる人たち、国民を愛している。そういう風に読み取れたけど、実際もこういう方だったらいいな。
1ページに文字がギッシリ詰まってて、目が疲れたけど、楽しく読めました。 -
Posted by ブクログ
イギリスで10万部、18か国で翻訳されているという人気シリーズの1冊目。
原題は”(Her Majesty The Queen Investigates) The Windsor Knot”。()内はシリーズ名でもあって、つまり『女王陛下は「ウィンザーノット」を捜査する』となる。原著の既刊は3冊、刊行予定が1冊で、いずれも『女王陛下は「〇〇」を捜査する』となる。なかなか気が利いた作り。
邦訳は2冊目の『バッキンガム宮殿の三匹の犬(The Three Dog Problem)』まで。
さて、本シリーズの探偵役は先ごろ亡くなった英国女王陛下その人である。
実のところ、巻末解説にある通り、女王陛下が登場するフィクションは少なくないという。行き過ぎたタブロイド紙などとの攻防はあるが、英王室は「コンテンツ化」されることに比較的鷹揚であるようにも感じる。愛され、親しまれ、それでいて隠されたミステリアスな部分もあり、想像を働かせるには格好の題材なのだろう。王室側もそれを許す懐の深さ(逆に言えばしたたかさ)を持っているということかもしれない。
本シリーズ、まだ1作目を読んだところであり、私は英王室に取り立てて詳しいわけではないが、王室内部の描写がある程度実態に近いのではないかと思われる。晩餐会や各国要人との面会などの行事、秘書官や近習ら、女王付きの人々の仕事、次々と公務をこなさねばならない女王のハードスケジュール。小柄でありながらエネルギッシュで魅力的なエリザベス女王や、口は悪いが磊落で悪気のない伴侶フィリップ王配の人柄も、人々がさもありなんと想像する通り。
そうした「舞台装置」がかっちりしているからこそ、投げ込まれるフィクション部分の「謎」が生きてくる。
2016年4月。
女王お気に入りのウィンザー城で、一人の若いロシア人ピアニストが遺体で発見される。前の晩、宿泊晩餐会に参加していた1人だった。
彼は当初、性的な快楽を得ようとして誤って事故死したと見られていた。だが、そうと断じるには不審な点が出てくる。
女王は、密かにこの事件を調べ始める。
本書の準主役はナイジェリア出身の若き女性秘書官補、ロージーである。この職について間もない。
女王が探偵といっても、表立って軍配を振り、犯人を追い詰めてとっちめるわけではない。手となり足となる存在が必要だ。実は女王は昔から謎解きがお得意だった。海千山千の各国政治家を相手にして渡り合ってきたのだ、その洞察力と政治力が凡庸なはずはない。女王の内緒の助手は代々、近しい部下が務めており、今回はロージーに白羽の矢が立ったというわけだった。
女王はあからさまでなくロージーに指示を与え、ロージーはその意を汲んで内密に捜査を進めていく。
さらには、警視庁やMI5にそれとなくヒントを与え、捜査を正しい方向に導いていく。
原題の「ウィンザーノット」はネクタイの結び方(knot)として知られているが、ウィンザー城の難局(knot)とも解釈できる。今回の事件では、紐の結びが事件の謎を解く1つのカギとなっており、なかなか洒落たタイトルである。
謎の出来もまずまずだが、やはり一番の魅力は女王の人柄だろう。
女王には手柄も名探偵の称号も不要である。そうしたものは欲しがる相手に与えてやればよいのだ。女王陛下ならではの慎ましさと寛容さ。人々は、一見優しい老婦人に見える女王に操られているのに、最後までそれに気づきもしない。
本書の事件、犠牲となったのは1人ではなかった。その人々の死を、女王は衷心から悼む。
そんな姿に胸を射抜かれて、この人を守りたい、この人に付いていきたいと思うのは、お付きのロージーだけではないだろう。
なかなかの快作。