クラム・ラーマンのレビュー一覧

  • テロリストとは呼ばせない

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    1作目に引き続き善悪の境が分からなくなるようなハードな物語ながら、だがしかし現代社会をテーマにしたらこう描かざるを得ないよなっていう絶妙なバランスを保っている。今作は一人称語りの視点を2人にしているが、ムスリムのコミュニティの同胞を救いたいジェイ、白人の家族と幸せな人生を送りたい元テロリストのイミーの視点は、ムスリムが一方的な被害者ではないことを共通して語っていて、非常にバランスよく誠実な描き方だと感じた。
    最後はクリフハンガーかつ救いのない終わり方で、続編が気になるところ。はやく出版されますように。

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    2023年06月02日
  • テロリストとは呼ばせない

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     ジェイ・カシーム三部作の二作目ということである。前作のラストは異様であった。本作はそれを継いで始まる。ぼくは前作で、町の移民である若者ジェイが悪を倒すために国家的組織に利用される構図を、『傷だらけの天使』のヒーロー修とアキラの兄弟に例えてしまったのだが、それは本作でもあまり変わぬ印象のまま。

     『傷だらけの天使』という稀代のTVドラマをかつて青春真っただ中で体感したぼくには、木暮修たちは純情なコアの部分を持ちながら青春を精いっぱい生きる若者たちであるにも関わらず、東京という大都市に蠢く大人たちの欲望や駆け引きに否応なく利用されてしまう悲しき天使たちとして描かれていた。等身大のヒーローならま

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    2022年12月21日
  • ロスト・アイデンティティ

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    主人公はイギリス生まれのパキスタン人。ムスリムでありながら、麻薬の売人、酒も飲む、と言う設定。イギリスの組織に計略的にスパイの仲間入りをさせられる。始めは主語は一人称だが、ある時から主語が変わっていき、それと共に物語のスピード感も増す。ジハードの話?と懸念する必要はなかった。訳が上手くて、明治維新の時の戦いとかにも置き換えられそう。最後はびっくり‼️それって英国の差金かとも思った。悲しい物語。

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    2022年10月29日
  • ロスト・アイデンティティ

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    ネタバレ

    敬虔、とはいえないムスリムでありドラッグの売人でもある主人公がMI5にスカウトされて、イスラム過激派のグループに潜入する。
    なぜ彼がスカウトされ、なぜスムーズにグループに招き入れられたのか?一つのパズルがきちっと嵌り、ストーリーがしっかりと動き出す。
    根底にあるイスラムの物語の上に、主人公の軽妙さや周囲の人間との結びつきが描かれ、スピーディーな展開で面白い。
    主人公はチャチな悪党かと思いきや、母や友達を大事に思い、正義感をもった人物で本当に魅力的。
    翻訳が素晴らしい。


    が!ラスト!嫌な予感はしてたけど。
    これは一体どうなるの…?
    ここで終わるっていうことは、そういうことなんだろうけど、でも

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    2022年07月11日
  • ロスト・アイデンティティ

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    普段読まないタイプのの内容。
    とても、ハイテンポで読みやすかった。
    ムスリムについて知識はあまりない私でも分かりやすく、そして、宗教について考えさせられた。

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    2022年05月03日
  • ロスト・アイデンティティ

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     イギリス在住の作者クラム・ラーマンはパキスタンはカラチ生まれ。一歳で英国移住、ロンドン育ちの現在はIT企業会社役員、という珍しい肩書の新人作家だ。本書は、作者お馴染みの、ロンドン西部の移民率が高い自治区にあるハウンズロウに育ったムスリムの青年たちの日常からスタートする。

     主人公のジェイ・カシームは麻薬の売人だが、友人の一人は警察官、もう一人はテロリストキャンプにまで参加する民族主義者。再婚相手ができたばかりの母は冒頭からカタールに引っ越ししてしまい、父なし子のジェイは、初めての独り立ちを迎える。

     本書はそうした環境下で、青春小説、成長小説としての基盤を持ちながら、大枠ではイスラム・テ

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    2022年04月30日
  • テロリストとは呼ばせない

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    イギリスに暮らすイスラム教徒とアングロサクソンの対立を描く三部作の二部作め。前作は未読だが問題なく読めた。

    人種差別的発言の目立つ白人
    リベラルな白人
    イスラム教徒同士の繋がりを重視する排他的なムスリム
    白人との融和を拒まない穏健派ムスリム

    主要な登場人物たちは上のいずれかに当てはまり、それぞれの立場のキャラが交わってストーリーが進む。
    想像していたような「追跡、格闘、推理」の展開ではなく、割と地味に話は進むがそれもリアルな描写で、自分は面白いと思った。

    他者を受け入れなくても認める
    そこにある、ということを認知することから対立は収められるのではないか。
    敢えて交わらず我関せずでも、結果

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    2023年12月02日
  • テロリストとは呼ばせない

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    麻薬の売人時代にMI5に引き込まれ、イスラム過激派に潜入するはめになったパキスタン系の青年ジェイ。
    事件解決後にMI5を去り役所勤めを始めた彼は、生まれて初めてまともな生活を送っていた。
    そんなとき、人種差別主義者に暴行されたムスリムの少女が自殺。
    復讐を誓う恋人の少年を“テロリスト”にさせまいと、ジェイは奔走する。
    一方、ジェイの正体を知ったテロ組織は彼の暗殺を命じ――。

    前作「ロスト・アイデンティティ」もなかなかの良作だったが、今回も良い。読後、漂う寂寥感。

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    2023年09月17日
  • ロスト・アイデンティティ

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    スパイスリラーとして面白かった。
    一人称での語りは、主人公ジェイの視点で世界を認識する際の葛藤や苦しみ、怒りが強調されたので、うまく機能していた。世界を知っていく中で信念が揺らぐなど、未熟だが等身大の語り口は読者に感情移入させやすかった。
    テーマとしては、ロンドンでのムスリムの立ち位置、今なお続く憎しみの連鎖、と言った非常にセンシティブで身につまされるもの。ジェイの語りでどちらの立場に対しても共感させられるためモヤモヤした気持ちになるが、現代このテーマを語る上ではこれくらいのバランスが最適解だと感じた。

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    2023年03月28日
  • ロスト・アイデンティティ

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    ロンドンにあるモスクが人種差別主義者たちに荒らされた。モスクに通う“敬虔な"ドラッグの売人ジェイ・カシームは怒りを覚えながらも、同胞の過剰な反撃に疑問を抱く。

    そんなとき、麻薬密売の容疑で逮捕されたジェイは、無罪放免と引き換えにMI5の一員となってテロ対策に協力するよう命じられる。

    やがてイスラム過激派の中枢部に迫るにつれ、無差別テロが現実味を帯びていき――。

    後半、予想の斜め上を行く展開に。

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    2022年10月23日
  • ロスト・アイデンティティ

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    ジェイは、パキスタン系でロンドンでドラッグの売人をしている。イスラム教徒とキリスト教徒の対立に巻き込まれ、金を失いドラッグの総元締に迫られる。すると、MI5からリクルートされ、テロ組織に潜入するよう言われる。

    なかなか面白かった。作者自身がパキスタン系で、これがリアルロンドンの人種、宗教対立なのかと、ヒリヒリしながら読んだ。あっと驚く展開も良かった。特になぜジェイが選ばれたのかが分かったときが。

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    2022年06月18日
  • ロスト・アイデンティティ

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    登場人物のキャラクターは魅力的。テーマもまあ目新しい。が、最期があれっそうなるの?って感じの幕切れでした。

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    2022年04月15日
  • ロスト・アイデンティティ

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    某動画配信でみたような光景、そういえばBBCのドキュメンタリーでもこんなシチュエーションあったじゃないか。目の前の文字面を追えば追うほど、既視感のある映像が浮かぶ。続編も読みたい。

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    2023年03月25日
  • テロリストとは呼ばせない

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    イギリスに暮らすイスラムの少年らと彼らを追い詰める白人の少年たちをメインに、同じコミュニティにいるジェイが彼らがテロリストになるのを阻止する中で、ジェイ自身もテロ組織に狙われる、
    と言うサスペンスアクション。

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    2023年03月16日