クラム・ラーマンのレビュー一覧
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ジェイ・カシーム三部作の二作目ということである。前作のラストは異様であった。本作はそれを継いで始まる。ぼくは前作で、町の移民である若者ジェイが悪を倒すために国家的組織に利用される構図を、『傷だらけの天使』のヒーロー修とアキラの兄弟に例えてしまったのだが、それは本作でもあまり変わぬ印象のまま。
『傷だらけの天使』という稀代のTVドラマをかつて青春真っただ中で体感したぼくには、木暮修たちは純情なコアの部分を持ちながら青春を精いっぱい生きる若者たちであるにも関わらず、東京という大都市に蠢く大人たちの欲望や駆け引きに否応なく利用されてしまう悲しき天使たちとして描かれていた。等身大のヒーローならま -
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ネタバレ敬虔、とはいえないムスリムでありドラッグの売人でもある主人公がMI5にスカウトされて、イスラム過激派のグループに潜入する。
なぜ彼がスカウトされ、なぜスムーズにグループに招き入れられたのか?一つのパズルがきちっと嵌り、ストーリーがしっかりと動き出す。
根底にあるイスラムの物語の上に、主人公の軽妙さや周囲の人間との結びつきが描かれ、スピーディーな展開で面白い。
主人公はチャチな悪党かと思いきや、母や友達を大事に思い、正義感をもった人物で本当に魅力的。
翻訳が素晴らしい。
が!ラスト!嫌な予感はしてたけど。
これは一体どうなるの…?
ここで終わるっていうことは、そういうことなんだろうけど、でも -
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イギリス在住の作者クラム・ラーマンはパキスタンはカラチ生まれ。一歳で英国移住、ロンドン育ちの現在はIT企業会社役員、という珍しい肩書の新人作家だ。本書は、作者お馴染みの、ロンドン西部の移民率が高い自治区にあるハウンズロウに育ったムスリムの青年たちの日常からスタートする。
主人公のジェイ・カシームは麻薬の売人だが、友人の一人は警察官、もう一人はテロリストキャンプにまで参加する民族主義者。再婚相手ができたばかりの母は冒頭からカタールに引っ越ししてしまい、父なし子のジェイは、初めての独り立ちを迎える。
本書はそうした環境下で、青春小説、成長小説としての基盤を持ちながら、大枠ではイスラム・テ -
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イギリスに暮らすイスラム教徒とアングロサクソンの対立を描く三部作の二部作め。前作は未読だが問題なく読めた。
人種差別的発言の目立つ白人
リベラルな白人
イスラム教徒同士の繋がりを重視する排他的なムスリム
白人との融和を拒まない穏健派ムスリム
主要な登場人物たちは上のいずれかに当てはまり、それぞれの立場のキャラが交わってストーリーが進む。
想像していたような「追跡、格闘、推理」の展開ではなく、割と地味に話は進むがそれもリアルな描写で、自分は面白いと思った。
他者を受け入れなくても認める
そこにある、ということを認知することから対立は収められるのではないか。
敢えて交わらず我関せずでも、結果