ダニエル・ヤーギンのレビュー一覧
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新しい世界の資源地図
エネルギー・気候変動・国家の衝突
著:ダニエル・ヤーギン
訳:黒輪 篤嗣
米国で最も影響力のあるエネルギー問題の専門家である、筆者が地政学的見地から、超大国の動向を解説した大書
20,21世紀は、エネルギーという軸で、世界は動いていて、気候変動や、国家間の衝突を誘発している
本書は二つの軸から語られている
国家(経済力、軍事力、地理的条件、戦略、野心、偶発的出来事と不足の時代)
エネルギー資源(石油、天然ガス、石炭、風力、太陽光、書く)
この二つの要素が絡まる地図は、絶えずダイナミックに変化し続けていて、バンデミックなどの不測な事態を含めて、世界に深刻な混乱を -
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原油、天然ガス、レアアース…資源の地政学を知らずして世界情勢を語るべからず。歴史や経緯を含めた全体を本書で俯瞰できるため、新聞やテレビなどの媒体よりも深い理解を得ることができる。
そもそも産油国ってほとんど中東中心だと思っていたが、中央アジアから北中南米、アフリカまでかなり広い範囲に渡っていると改めて認識させられた。それに対してコベルトやリチウムなどは中国とコンゴに産地が限定されているのが不気味で、代替材料の実用化が喫緊の問題に感じさせる。
フラッキング技術によるシェール革命で米国がエネルギー自給自足になったことはザックリ知っていたが、ギリシア出身の移民が事業的なリスクを背負いながら突破口を開 -
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この一冊を頭に入れるだけで、世界を見る目が変わる気がする。高レベルで広範囲のエネルギー事情が解説される。国防においても経済においても重要な課題であり、教科書にすべきほどの決定版ではないだろうか。あまりに密度が濃過ぎて、年跨ぎで読む事になった。メモ書きの抜粋に書評を添えて以下に記す。
アメリカはシェール革命の結果、石油と天然ガスのどちらにおいても、ロシアとサウジアラビアを一気に抜いて、世界最大の生産国になった。現在では、世界屈指の石油と天然ガスの輸出国でもある。アメリカは、エネルギーをほぼ自給できるようになった。
何十年にもわたって、世界の石油市場を規定してきたOPEC加盟国対非加盟国と言う -
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近年の地政学とエネルギー分野の激変に関して、米露中、さらに中東、気候変動ごとに読み解いていく。
アメリカの項ではシェール革命の経緯、ロシアの項ではソ連崩壊後エネルギー大国として欧州に影響を与えてきたが天然ガス市場の変化等によりそれが変わってきたこと、中国の項では経済や軍事の成長とともに拡大したエネルギー需要や一帯一路構想、中東では石油と天然ガスによる富と権力と石油需要ピーク後への関心の移動、気候変動の項ではパリ前とパリ後のエネルギーの地図の変化などを主に扱っている。
シェール革命がガソリンの値段だけでなく、2015年イランの核合意や欧州のロシア依存の軽減など、地政学的に大きな影響を与えていたこ -
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ネタバレいやー、難しい…。哲学系以外で理解に時間をかけたのはホント久々かも。まぁその難しさが面白いわけなんだけど。
エネルギーを生み出すのに必要な石油/天然ガスが大国アメリカから採れるようになった「シェール革命」から本書は始まる。ロシアやサウジアラビアからの輸入を必要としなくなる上、色々な国へエネルギー源を輸出することが出来るというのは、各国の関係性を変えるのに十分だったわけだ。
ロシアや中国、中東の危うさも同様に、このエネルギー源に由来している部分もある。エネルギー源は金になるからこそ、それを手に入れようと誰もが争うのだな。
一方でコロナや再生可能エネルギーにより、石油/天然ガスの価値というもの -
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ネタバレ500ページを超える読み応えのある本。この一冊で現在のエネルギー資源と世界の勢力地図を総覧しようとしている。近年、エネルギーと地政学にまつわる世界地図がどのように塗り替えられたかを、石油・天然ガスの主要な生産あるいは消費国・地域である米国、ロシア、中国、中東と、エネルギー問題に関する二つのテーマ、電気自動車、気候変動問題を中心に詳細に描き出している。
米国で2000年代初めにシェールオイル、シェールガスが採掘され、増産が軌道に乗ると、世界的な政治・経済のバランスが大きく変化した。経済的には、2008年のサブプライムローンによる金融危機で疲弊した米国の経済が復活した。安価な石油が生産できることで -
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新しい世界の資源の地図を読んで
第一部 米国の新しい地図
・マクロを見ることは大切
→シェールガスで天然ガスの供給量が急激に増えて、天然ガスが下落することを悟ったEOGは、シェールオイルに舵をきった。
・シェールオイルによって、アメリカは世界の主要な石油プレイヤーになった。これは、経済的にも地政学的にも重要。
→各国との貿易で赤字を減らす要因になる。自国でエネルギーを賄えるようになったことで、地政学的にも優位な立場になった。国際的な安全保障を実現しようとした時、強硬策に出られる余地が出てきた。
・メタンガス流出問題
→シェールオイルに限った話ではないが、設備やパイプラインから漏れ出るメ -
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ー 以来、技術とイノベーションはエネルギー転換の要因になってきた。そのためには着想や発案から技術やイノベーションが生まれ、さらにそれらが最終的に市場へといたる必要がある。これは必ずしも短期間で起こるわけではない。エネルギーはソフトウェアとは違う。現に、リチウムバッテリーが1970年代半ばに発明されてから、路上を走る車に使われ始めるまでには、30年以上かかった。近代的な太陽光や風力の産業は1970年代初めに誕生したが、規模が拡大し始めたのは2010年以降だ。しかし、デジタルから新素材や人工知能、機械学習、さらにはビジネスモデルなどまで、イノベーションのペースは、関心の高まりとともに加速している。
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エネルギー安全保障の過去から未来までを俯瞰できる一冊
脱炭素、カーボンニュートラルの世界的な潮流は間違い無いが、具体の対応はその国の地政学、資源、経済状況で異なってくる。
太陽、風、水の自然エネルギーは重要ではあるが、変化の鍵は化石燃料および資源国が握っている。
本書は、米国のシェール革命、中東の宗教と石油、南シナ海、自動車業界など、今の世界を知るのに重要なテーマを広く、濃く解説する。1章ずつが短くトピックごとに明確に分かれるため全体を俯瞰して部分を読み返すのが容易。
新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻など、世界はますます先行きが見えない。資源のない日本にとって、本書の知識は教養として -
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『これまでの20年以上、ウラジーミル・プーチンは大統領として壮大な「国際的事業」に取り組んできた。それは旧ソ連諸国をまたロシアの支配下に置くことであり、ロシアを世界の超大国として復活させることであり、新しい同盟関係を築くことであり、ひいては米国を押し返すことだった。どれほどロシアに原因があるかは別としても、プーチンの思惑にかなった結果になっていることは間違いない。北大西洋条約機構(NATO)の分断しかり、EUの分裂しかり、米国の政治の混乱や、醜悪さや、二極化しかりだ』―『第9章 プーチンの大計画/第2部 ロシアの地図』
自分がこの業界---ここで少し長めの無駄話になるのだけれど、石油業界(あ -
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ロシアとウクライナの戦争を契機に資源価格が高騰している背景をより深く知りたくて、本書を読んだ。地政学の第一人者である著者が、アメリカ、中国、ロシア、中東のエネルギー事情を丁寧に紐解いており、分かりやすかった。
日本は東北大震災以降、原発稼働を最小限にしているため、電力供給を火力発電に多く依存している。火力発電の燃料となる石炭・天然ガスは輸入していることから、海外の紛争や政治リスクは、エネルギー供給を不安定化させ、日本にとっても重要な問題である。
本書で面白かった点のまとめ
①アメリカはシェールオイル・ガスの発展により、世界有数の石油・天然ガスの輸出国となった
・紛争リストが高い中東に天然資 -
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本書で論じられるのは、「地政学とエネルギー分野の劇的な変化によってどのような新しい世界地図が形作られようとしているのか、またその地図にどのような世界の行方が示されているか」である(序論より)。
第1部では、アメリカにおけるシェール革命の進展とその影響が説明される。シェール革命によってアメリカは石油と天然ガスの世界最大の生産国になり、輸出国にもなった。世界のエネルギー地図を激変させ、世界の地政学を塗り替え、新たな影響力、強化されたエネルギー安全保障、選択の幅が広がった外交政策など、米国の立ち位置を変えた。
第2部では、エネルギー大国であるロシアについて、その強さと共に、石油と天然ガスの輸