乾敏郎のレビュー一覧
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「人が考えること」「意識的に行動すること」が、脳の各所によって処理されているという仕組みと学ぶ。その脳は、生まれ持ったものだけではなく、育った環境や経験によって発達の度合いも異なり、さらにニューロンという神経細胞の伝達のパターンまでもが変化する――これが、人が「それぞれ違う」ということの科学的な裏づけと言えるのだと思う。
この前提に立つと、「自分が正しい」と思っていることも、あくまで「自分という存在の中で培われた基準」に過ぎないということが見えてきます。つまり、他人にも他人の脳があり、他人の基準がある。そのことを意識するだけで、人との接し方が変わってくると感じた。
自分が他人と接するとき、 -
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【この本のテーマ】
人間の脳がいかにして知性を獲得するのかを紐解きながら、その知識を日々の生活に活かしたり、そもそも人間とはなんなのかを考えるきっかけを与える。
【概要】
全8章をかけて、脳科学の歴史と脳が持つ機能や学習・発達のメカニズムが述べられている。
脳の研究自体は古代ギリシャ時代からあるものだが、高次機能研究は1800年代後半にヘルマン・フォン・ヘルムホルツが基盤を築いた。ヘルムホルツは、我々が見ている世界は脳が推論して作り上げているということを提唱したり、「位置の恒常性」を解明したりしたが、さらに重要な発見は「自由エネルギー」という概念を導き出したことだった。自由エネルギーとは、脳 -
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【はじめに】
自由エネルギー原理の解説書としては今までで一番わかりやすい。著者は『脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか』という解説本も書いているが、こちらは数式もたっぷりで決してわかりやすいとは言えなかった。本書は、新書というフォーマットであることもあり、本の構成も説明もやさしい。本当にわかっている人が丁寧に書くととてもわかりやすいものになるという実例になっている。
【本書の内容】
この本の軸は、カール・フリストンが提唱した自由エネルギー原理にある。この原理はあらゆる脳機能が自由エネルギーという評価関数が最小になるように設計されて動作しているというものである。ここで言う脳機能には認識 -
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脳による「意識や心」を解明する本だ。まず、脳は推論するシステムで、知覚とは無意識的推論を指すという定義から始まる。推論がキーワードだが、これは、たとえば、ハンバーガーを見ると、見ることで得られる視覚の感覚(外受容感覚)や、以前にハンバーガーを食べたときの経験から思い出される味覚の感覚(これも外受容感覚)に加えて、これを食べると血糖値が上昇するという内受容感覚が過去の経験から学習され、脳内に記憶されている。こうした感覚の想起により、食べたい、という感情が起こるというものだ。
ー 他人にくすぐられるとくすぐったいのに、自分でくすぐってもくすぐったく感じない。これは、自分でくすぐったときには皮膚感 -
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ネタバレ脳の動作の根本的な目的を、自由エネルギーの最小化であるとする理論(自由エネルギー原理)について述べた本です。
脳は、①外界への仮説を形成、②外界からの感覚信号の情報を受け取る、③形成した仮説が正しい場合に得られるであろう感覚信号と、実際に受け取った感覚信号との違いを計算、④計算結果に応じて外界への仮説を修正、というサイクルで稼働しているという話で始まります。
また、"注意を向ける"という行為は、どの感覚信号の精度を高めるかを決めることであり、注意を向けられた感覚信号の予測誤差は、仮説の修正に対して重要視されることとなります。
自由エネルギー原理の面白いポイントは、運動制御と -
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知覚、運動、世界モデルの構築、予測、信念の形成、意識、体内のホメオスターシス、などの脳が関わる機能が「脳はヘルムホルツの自由エネルギーを最小化するように推論を行う」という原理に基づいて統一的に説明できてしまう、という目から鱗が落ちる本でした。
個々のニューロンやシナプスの動きや、脳の機能局在マップなど90年代くらいまでに分かってきた個々のメカニズムを大きく結びつけて統一してしまう原理で驚きました。これからも、様々な脳や神経の働き方がこの理論をベースに解明されていくのだろうと期待させられます。また、AIへも応用されていくのだろうなと感じました。 -
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●主題
2006年ごろ イギリスの研究者カール・フリストン
「自由エネルギー原理」を提案
数式を使って具体的に記述されたもの。ニューラルネットワークでの処理として表すことが可能
○感情はどのようにして作られるのか
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前帯状皮質から前島に送られる内臓状態の推論内容が内臓知覚の実態
このメカニズムは単なる内臓状態の知覚(つまり、内感覚受容)にとどまらず、私たちの感情を作る基盤にもなっている。
感情は、このような内臓状態の予測信号に加えて、内臓状態に変化をもたらした(隠れ)原因に関する推論(高次の認知情報)とも密接な関係があるといわれている
つまり、この高次の認知情報と内受容感覚 -
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脳は常に指令だけを与えているのではなく、推論をしてその誤差は測っている。面白い観点だと思った。何かを認識することだけではなく、運動や目標志向性などにも推論が関与しているというのも驚きであった。運動にせよ、目標志向性にせよ、感覚信号の不確実性や推論の不確実性を最小化するように動いている。つまり、何事も不確実性を低下させるように自分でも意識的に生きると推論の精度が上がるのであろう。
運動に関しては武井壮が言っていたことを思い出した。どうすれば運動能力が向上するか?のような質問に対して、
「体を思った通りに動かすことを真面目に考える。まず、両手を両横方向に水平に開いてみる。自分は水平に開いているつ