これまで読んだこの作家の作品の中では一番良かった。
子ども向けの本も書いている作家だが、これは大人向け。
1904年に岡山から移民してきた一世の幹三郎から、その孫のジュンコまで語り手を変えながら、日系人一家の戦前から現在までを綴る作品。
差別され苦労を重ねながらもアメリカ社会に溶け込み財を築いて、家
...続きを読む族を増やした一世の努力を全て奪った戦争。
長男は真珠湾攻撃の直後、アメリカ人の集団に暴行され、家族は全財産を奪われ収容所へ。ノーノーボーイにはならなかった次男は戦死。
戦後から現在までも描かれるが、圧倒的に力を入れて描かれるのは、戦前の家族の姿で、それだけに奪われたものの大きさがリアルに伝わる。
もちろん政治的な内容もあるが、日系人一家の、写真花嫁として幹三郎と結婚した佳乃、その娘のハンナ、ハンナの娘のジュンコが主な語り手であるため、イデオロギーより感情が表現としてさきにあるので、共感できる。
日系人強制収容の小説はたくさんあるが、読むべきものの一つだと思う。