昨年(令和元年)夏頃に出版された本ですが、私は在宅勤務が始まってから少し経った頃、隣駅の本屋さんで見つけました。緊急事態宣言が発令されてからは、その本屋さんも閉店しているので、この本に触れられたのはラッキーなのかもしれません。
タイトル:働らかない技術、もそうですが、帯に書かれている「あなたの勤務
...続きを読む時間の62%は無駄でできている」というコピーにも惹かれました。上司と同じ働き方(自分より10年以上年上の人を想定していると思います)をしていると、ダメ人間になるそうです。
この本では日本がずっと保持してきた、職能制度から、欧米流である職務制度に一気に変わるのではなく、その両方の能力を持つハイブリッド人間になることを提唱しています。それでいて、今までのような残業(会社に長くいる)はしないで効率よく仕事をこなすことも求めているようです。
欧米とは仕事の仕方が違うなと、外資系会社の日本支社に転職して初めて実感しました。日本の地位が縮小され続けてきたこの30年間、いよいよ日本のやり方が通用しなくなってきている気もします。今まで、どの時点で切り替わるのか予想できませんでしたが、今ならイメージできそうです。いまその渦中にいますが、このコロナショックが収束した頃には、多くの会社において仕事の仕方が変わっていて、働き方も変わっていることでしょう。
緊急事態宣言はとりあえず令和2年5月末まで延長されたようです、往復の通勤時間がなくなった分、考える時間が増えてきたように思います。コロナ後を見据えて、この本に書いてあったことも踏まえて今後の自分のスタンスはどうあるべきかを考えていきたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・本書で想定する読者は、特に30代後半〜40代ミドル世代、働き方改革のキーマンとなる課長世代である(p5)
・2000以上の作業を分析した結果によれば、全ての作業が自動化されるのは職業全体の5%未満であるが、少なくとも3割程度の作業が自動化可能となる(p25)
・これからの職場は3つの観点からみる、1)いまどき世代と働く、2)外国人と働く、3)女性と働く(p31)
・農耕型社会では「評判」が語り継がれる(あなたのおじいしゃんはどうだった等)、狩猟型の働き方だと、移動した先の土地では誰もあなたを知らないので実力だけがものをいう、農耕型社会では、契約よりも人物は人間関係が優先される(p50)
・働き方改革は、「長時間頑張る」に真っ先に規制をかけた、長時間頑張らない、ためには意識とスキルと仕組みを変えなければならない。日本の組織は放っておくと農耕型の働き方をしてしまうことを自覚することである(p51)
・日本企業はこれまで仕事の大きさにより階層をつくるのではなく、仕事をこなす能力により階層を作ってきた、これを資格等級という(p67)
・日本の労働生産性を議論する場合、大企業と中小企業、製造業と非製造業に分けて考えるべき(p76)
・いまの日本が欧米のような階級社会でないのは、職員も工員も戦時中、皆が貧しく飢えるという「苦しさ」を体験したから。階級を設けないための施策として日本型人事管理が貢献してきた(p89)
・職能給は、ポストで求めれる職務の遂行能力に対する報酬の支払い契約であるため、ポストが求める職務に比べて会社の際量により能力の範囲を自由に設定できる。会社側が変更しても契約違反にならない。一方、職務給は、職務記述書の内容に対して報酬を支払い、契約を会社側が勝手に変更することは許されない(p95)
・パワハラの起きる3条件、1)役割権限、責任など関係性があいまい、2)その行為に教育のための大義名分が立つ、3)その行為が隠しやすい(p103)
・職務給による人事管理を日本企業に導入すると、正社員も含めた全ての社員が「派遣社員化」する(p107)
・二番目に優先順位が高いのは、重要度が高く緊急度が低い業務、後回しにされている間にいつのまにか納期が迫り、一番優先順位が高くなり、時間でなんとかする働き方から脱することができない(p123)
・役割給人材が職務給人材に転換することはあるが、逆はまずない。職務給人材は自分の能力をより高く買ってくれる企業を見つけて転職する者もいるだろう(p132)
・働かない、ことができない要因のひとつに日本型の人事管理がある、改革の方向性としては、役割給人材(職場のメンバーを育成して働いてもらう)と職務給人材(ポストに求められる職務範囲で働く)、2つの人材タイプから構成するハイブリッド型人事管理である(p146)
・欧米企業には、社員の能力開発という認識はあるが、人材育成というニュアンスの認識はない。育成とは文字通り後進を育てて立派にすることだが、本来企業と社員の関係において企業側にそのような義務はない。働き方改革とは、企業の側がそれまで握っていた強力な人事権を、一部手放す代わりに、人材育成(能力開発ではない)の義務もないと表明することである(p154)
・バルブがはじけて就職氷河期となった、特に平成5年から17年までを指す、大卒ならば36−48歳の年齢層である(p163)
・ムリムダムラを見つけるポイントとして、1)排除:既存業務からなにか取り除けないか、2)結合と分離:類似業務を一つにまとめる、異なる業務を分けられないか、3)入れ替えと代替:業務の順序、やり方を変更できないか、4)簡素化:業務を単純にできないか(p223)
2020年5月4日作成