ジョセフヒースのレビュー一覧

  • 啓蒙思想2.0〔新版〕 政治・経済・生活を正気に戻すために

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    ネタバレ

    本書の中心的なテーマは、政治における右派(保守派)と左派(改革派)の根本的な非対称性
     進歩的な社会変革は、複雑で達成しがたく、妥協、信頼、集団行動が求められ、膨大な量の「頭」を使わなければならない。それに対し、右派の運動は、直感的で感情に訴える方法で形成することができる。例えば、税金に関する政策に対して「皆さんが苦労して稼いだお金を政府は奪うんです!」といった直感的に誰もがイメージできる言説で大衆の賛同を得るような運動をイメージすればわかりやすいかもしれない。

     本書は人間の脳がいかに合理的な思考を行うのが難しく時間がかかるか、従来の社会改革が人間の理性を過大評価してきたかを述べ、私たちの

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    2024年12月06日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    結構な量の論述。
    カウンターカルチャーの表面的な批判では決してなく、未来に対する理想を抱き、前向きかつプラグマティックに論を展開していく。
    消費主義がカウンターカルチャーが生み出した側面である個性化や競争性を内包しつつ、現代まで大きく肥大してきたという隠された面にメスを入れるあたり頷かされた。
    もちろん、カウンターカルチャーの文化左翼的活動がもたらした正の影響は否定し得ないし、自分が摂取してきた芸術を真っ向から否定する気はないが、この社会という枠組みの中でどのように個人性や自由を追求していくのか、その終わりのなさそうな永遠のテーマに、僅かながら思考する時間を作れて感謝感激雨嵐です。

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    2024年09月20日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    自分は基本的にはルールを守る人間で、体制というシステムそのものに反抗を持つことはなかった。そんな自分でもこの本を読んでいるうちにうぎゃ~と痛いとこを突かれた気持ちになった。幼いころからジブリやガンダムやその他沢山の物語に触れてきたことによって、カウンターカルチャー賛美の価値観がいつの間にか自分に育っていたのだ。
    この本はどちらかというと実際的なことに重心を置いて書かれているので(あたりまえだ)、作品そのものの価値にはあまり触れていないが、解説でそのあたりを拾ってくれているのでいつもは早川のSFを読んでいる人もある意味救われる・・・のかもしない

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    2022年01月16日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    カウンターカルチャーというものの思想と矛盾について深く理解できる本でした。あまり馴染みのないトピックなので始めはピンと来なかったのですが、読み進めると案外面白くて一気に読めました。

    現代の人々は消費社会に組み込まれて抑圧されているので、そこから解放されるには、社会制度から逸脱した行動を取ってそれを破壊する。でもそれが単なる身勝手な犯罪行為を肯定するレトリックに使われてしまう。しかも皮肉にも、カウンタカルチャーは差別化の心理によって推進される消費社会にことごとく取り込まれてしまう。さらに、逸脱を正当化するために問題の原因を制度ではなく文化であるとする。そのため、破壊後に代替となる具体的な制度を

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    2024年06月15日
  • 啓蒙思想2.0〔新版〕 政治・経済・生活を正気に戻すために

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    人間の脳は構造的に弱点があり、そのため常に非合理的な考え方が優勢になる。この仕組みを克服するのではなく、よく理解して上手く使おうという提案書。そうすれば、世にはびこる非合理主義、反知性主義(例えばトランプ主義者。本人たちは思想だと思っている)に対抗できるぞ、と。それがアップデートした啓蒙「啓蒙思想2.0」。
    端的に2.0とは、「政治は外部クルージ(人間の脳の弱点を有り合わせの応急措置で解決する)を利用していこう」「他者からの啓蒙(コントロール)をどんどん使っていこう」ということ。「個々の人間が理性を高めて社会を向上させる」というポストモダンで個人主義的な思想は武器にならなかった。実際効力が無い

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    2024年03月12日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    第二次大戦後、リベラリズムの中から生まれたカウンターカルチャーが世界で(特にその局地としてのアメリカで)いかに理想と解離してしまっていたか、そしてそれが社会に混迷と不幸をもたらしたか、を未来のために分析する書。
    カウンターカルチャーとはルールや文化の変革なのではなく、ルールと文化の破壊そのものが目的である。破壊されることにより人々の意識が変わり、抑圧と戦争と貧困が解消される革命とされた。そして時代が進み、カウンターカルチャーは様々な呼び名に変化していった。エコ・スローフード・ローカリズム・ネット革命・ミニマル生活、その中心的思想は一貫して変わらない。大衆社会批判だ。
    しかし実は、カウンターカル

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    2024年01月08日
  • 啓蒙思想2.0〔新版〕 政治・経済・生活を正気に戻すために

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    科学的根拠のない言い放しの演説や、都市伝説のような噂話が世の中に溢れている。匿名の一般SNSユーザーの発言ではなく、一国のリーダーが、平気でこういったフェイクをばら撒き、指摘されても開き直り、訂正もせず、陰謀だと逆ギレる。著者はこういった世界的な風潮の分析し、人間の判断や知性の弱点を指摘し、熟慮、理性を取り戻すこと、スローポリティクスを提唱する。確かに、情報の奔流と、アプリの普及などで一瞬にして意思決定させられる状況が、こういった時代を引き起こしているのかもしれない。熟慮、大事だなあ。

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    2023年12月24日
  • 啓蒙思想2.0〔新版〕 政治・経済・生活を正気に戻すために

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    心理学の見地から人間の合理的思考の脆さを一通り指摘し、その上で現在までの政治や経済活動における反合理的な風潮を見直す。個人的にはナッジ・パターナリズム(リバタリアン・パターナリズム)が権利の制約が最小限である、という点において魅力的に思った

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    2023年10月25日
  • 啓蒙思想2.0〔新版〕 政治・経済・生活を正気に戻すために

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    二度の大戦以降、理性を信じきれなくなってしまった現代人に向けて教育とかルールとか、縛られるのも案外悪くないかもよ?理性信用してみようよって投げかける本。

    文句はごもっともなんだけど、改善策がイマイチ出てこないなぁと。それは自分も同じなんだけど。

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    2022年11月05日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    読書会の課題本。副題になっている”「反体制」はカネになる”が、むしろ原題に近い。個人的に抱いてきたフェミニズムやオーガニックやスローフードなどへの違和感や嫌悪感を見事に言語化してくれた感じであった。オーガニック批判はネットで「炎上」したらしく、それについての補足説明となる「後記」も必読である。

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    2022年10月14日
  • 啓蒙思想2.0〔新版〕 政治・経済・生活を正気に戻すために

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    従来の啓蒙思想の誤りは理性を過大評価したこと。合理的判断には熟慮する時間と認知が必要だけど、人は少ない認知をケチるようにできているし、社会はより直感的でスピードにとりつかれるようになった。広告やSNS、政治の主張はファクトチェックが入る前にメディアによって拡散し繰り返されることで真実化してしまう。真実より真実らしさが重視される時代に、理性の劣化を止め合理的な政治をおこなうためには、それを可能にする条件を理解し改善する方法を熟慮して、集団行動(政治)に取り込まなくてはならない。落ちついていきや。っていう本。

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    2022年07月31日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    (資本主義・市場がかかえる問題を例示した後)「どちらのケースも、システムの問題ではない。問題はシステムに内在する抜け穴だ。解決は抜け穴をふさぐことであり、システムを廃することではない。」(p528)
    「二十世紀の福祉国家の歴史は、市場の論理との一連の戦いというよりも、むしろさまざまな形の市場の失敗の克服として解釈されるべきだ。(中略)僕らは市場を廃止するのではなく完成させるように努めるべきである。」(p536)
    概ね、近代経済学的な分析、それに基づく解決策を支持した内容。
    ファシズムに至った民主主義的な手法への過剰な懸念へも、疑問を呈している。
    「反逆」という手法は、派手だが、本質的ではなく、

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    2022年01月27日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    資本主義への批判について、反論が満載。
    資本主義の批判の対象は、消費主義であり、資本主義ではない。
    フロイトの哲学やマルクス主義を対比として用いているところが興味深い。

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    2024年01月10日
  • 反逆の神話〔新版〕 「反体制」はカネになる

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    NHKにジョセフ・ヒースさんが出演してて、トークが面白かったので著書を購入。かなり難解だが、1950年からの世相、政治、市民活動を俯瞰し、本質的なところを理解するために勉強になりました。ヒッピーやパンクなど、反体制・反資本主義を唱えて活動してきた人たちが、実は欲望を煽って消費を活性化しているという見方。差異のない平等の世界というのは、実は全体主義・監視主義の隣にいること。自然主義活動家の多様性を許容しない態度、など。現代社会などという大きな括りではなく、身近にも感じられる違和感は、世界的潮流・底流としても存在しているのだとみょうに納得。これからもそういう違和感を大事にしていこうと思いました。

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    2023年11月23日