ジョセフヒースのレビュー一覧
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ネタバレ本書の中心的なテーマは、政治における右派(保守派)と左派(改革派)の根本的な非対称性
進歩的な社会変革は、複雑で達成しがたく、妥協、信頼、集団行動が求められ、膨大な量の「頭」を使わなければならない。それに対し、右派の運動は、直感的で感情に訴える方法で形成することができる。例えば、税金に関する政策に対して「皆さんが苦労して稼いだお金を政府は奪うんです!」といった直感的に誰もがイメージできる言説で大衆の賛同を得るような運動をイメージすればわかりやすいかもしれない。
本書は人間の脳がいかに合理的な思考を行うのが難しく時間がかかるか、従来の社会改革が人間の理性を過大評価してきたかを述べ、私たちの -
Posted by ブクログ
結構な量の論述。
カウンターカルチャーの表面的な批判では決してなく、未来に対する理想を抱き、前向きかつプラグマティックに論を展開していく。
消費主義がカウンターカルチャーが生み出した側面である個性化や競争性を内包しつつ、現代まで大きく肥大してきたという隠された面にメスを入れるあたり頷かされた。
もちろん、カウンターカルチャーの文化左翼的活動がもたらした正の影響は否定し得ないし、自分が摂取してきた芸術を真っ向から否定する気はないが、この社会という枠組みの中でどのように個人性や自由を追求していくのか、その終わりのなさそうな永遠のテーマに、僅かながら思考する時間を作れて感謝感激雨嵐です。 -
Posted by ブクログ
自分は基本的にはルールを守る人間で、体制というシステムそのものに反抗を持つことはなかった。そんな自分でもこの本を読んでいるうちにうぎゃ~と痛いとこを突かれた気持ちになった。幼いころからジブリやガンダムやその他沢山の物語に触れてきたことによって、カウンターカルチャー賛美の価値観がいつの間にか自分に育っていたのだ。
この本はどちらかというと実際的なことに重心を置いて書かれているので(あたりまえだ)、作品そのものの価値にはあまり触れていないが、解説でそのあたりを拾ってくれているのでいつもは早川のSFを読んでいる人もある意味救われる・・・のかもしない -
Posted by ブクログ
カウンターカルチャーというものの思想と矛盾について深く理解できる本でした。あまり馴染みのないトピックなので始めはピンと来なかったのですが、読み進めると案外面白くて一気に読めました。
現代の人々は消費社会に組み込まれて抑圧されているので、そこから解放されるには、社会制度から逸脱した行動を取ってそれを破壊する。でもそれが単なる身勝手な犯罪行為を肯定するレトリックに使われてしまう。しかも皮肉にも、カウンタカルチャーは差別化の心理によって推進される消費社会にことごとく取り込まれてしまう。さらに、逸脱を正当化するために問題の原因を制度ではなく文化であるとする。そのため、破壊後に代替となる具体的な制度を -
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人間の脳は構造的に弱点があり、そのため常に非合理的な考え方が優勢になる。この仕組みを克服するのではなく、よく理解して上手く使おうという提案書。そうすれば、世にはびこる非合理主義、反知性主義(例えばトランプ主義者。本人たちは思想だと思っている)に対抗できるぞ、と。それがアップデートした啓蒙「啓蒙思想2.0」。
端的に2.0とは、「政治は外部クルージ(人間の脳の弱点を有り合わせの応急措置で解決する)を利用していこう」「他者からの啓蒙(コントロール)をどんどん使っていこう」ということ。「個々の人間が理性を高めて社会を向上させる」というポストモダンで個人主義的な思想は武器にならなかった。実際効力が無い -
Posted by ブクログ
第二次大戦後、リベラリズムの中から生まれたカウンターカルチャーが世界で(特にその局地としてのアメリカで)いかに理想と解離してしまっていたか、そしてそれが社会に混迷と不幸をもたらしたか、を未来のために分析する書。
カウンターカルチャーとはルールや文化の変革なのではなく、ルールと文化の破壊そのものが目的である。破壊されることにより人々の意識が変わり、抑圧と戦争と貧困が解消される革命とされた。そして時代が進み、カウンターカルチャーは様々な呼び名に変化していった。エコ・スローフード・ローカリズム・ネット革命・ミニマル生活、その中心的思想は一貫して変わらない。大衆社会批判だ。
しかし実は、カウンターカル -
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(資本主義・市場がかかえる問題を例示した後)「どちらのケースも、システムの問題ではない。問題はシステムに内在する抜け穴だ。解決は抜け穴をふさぐことであり、システムを廃することではない。」(p528)
「二十世紀の福祉国家の歴史は、市場の論理との一連の戦いというよりも、むしろさまざまな形の市場の失敗の克服として解釈されるべきだ。(中略)僕らは市場を廃止するのではなく完成させるように努めるべきである。」(p536)
概ね、近代経済学的な分析、それに基づく解決策を支持した内容。
ファシズムに至った民主主義的な手法への過剰な懸念へも、疑問を呈している。
「反逆」という手法は、派手だが、本質的ではなく、 -
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Posted by ブクログ
NHKにジョセフ・ヒースさんが出演してて、トークが面白かったので著書を購入。かなり難解だが、1950年からの世相、政治、市民活動を俯瞰し、本質的なところを理解するために勉強になりました。ヒッピーやパンクなど、反体制・反資本主義を唱えて活動してきた人たちが、実は欲望を煽って消費を活性化しているという見方。差異のない平等の世界というのは、実は全体主義・監視主義の隣にいること。自然主義活動家の多様性を許容しない態度、など。現代社会などという大きな括りではなく、身近にも感じられる違和感は、世界的潮流・底流としても存在しているのだとみょうに納得。これからもそういう違和感を大事にしていこうと思いました。