ジョゼフ・コンラッドのレビュー一覧

  • 闇の奥(新潮文庫)

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    大自然の雄大さと人間の心の闇を世界に曝け出した問題作。

    世は植民地時代、主人公が血生臭い経験をしながら、アフリカ大陸奥地にある貿易会社の拠点に赴くと悍ましい光景が広がっていた。

    おおまかなあらすじはこの小説に辿り着いた読書人なら誰でも知っているかもしれない。
    しかし、その中の一定層は、この手の小説に冷ややかな視線を向けるのではないだろうか。

    「そういう重たい話は現実世界で十分だ」
    「読んでいて疲れるのにはうんざりしている」

    私はこのような気持ちから、発売直後に購入したにも関わらず、約三年もの間積読していた。

    重い腰を上げたキッカケは些細なものだった。なんとなく近代の海外文学を読みたくなっただけだ。

    読み始めた瞬間に気がついた。この小説は読みやすいと。そして、面白い。
    本作の語り手であるマーロウの語り口がとにかく秀逸だった。ユーモアがあり、葛藤があり、秘密があり、勢いがあった。

    この重い主題を、非常にスリリングな読書体験に変えてくるコンラッドは間違い無く稀代の作家である。
    もし、私のこの文章が、本作を手に取ったものの読み始める気力が湧かない方に届き、読むキッカケとなったならそれ以上の嬉しさはない。

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    2025年07月31日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    会話らしい会話もなく、ストーリーテリングではなく、1人の体験談として語られる植民地の状況。結局異常正常、常識非常識は絶対的なものがあるわけじゃない。本当に語りかけるような文体だからこそ、怖いし、他人事のようにも聞こうと思えば聞けるし。いやでもやっぱりこわい。異文化がではなく人間が。

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    2025年05月04日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    大英帝国の繁栄を担う貿易商社員がコンゴの奥地のジャングルで目にしたものは、誰もが目を背けたくなるのような現実だった。19世紀のヨーロッパの植民地主義は、文明的、人間的に劣後した地域をキリスト教的な理想主義のもとに啓蒙するという高邁な使命によって、貿易利益の独占、資源的搾取を覆い隠すような陳腐なショーであった。クルツというヨーロッパ人を象徴として、人間性の闇、文明人が未開人になり、未開人が文明的になるその皮肉を、陰鬱で明快な表現で書き上げている極めて歴史的価値が高い一冊。ヨーロッパの植民地主義を人文的に一考する上で、欠かせない一冊であろう。

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    2024年11月09日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    植民地支配側の目線なので偏りはあるが、植民地支配に疑問を投げかける一冊であると読み取れた
    解説で時代背景や筆者の船乗りでの経験などについて丁寧な説明がなされており、理解を深めることができた

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    2026年08月11日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    予想以上に読み易く面白かった。小説の形を取りながらも著者の実体験に基づくことを註釈が補強し、コンゴの大密林への冒険記としても楽しめる。130年前のリアルな密林や植民地支配の空気感が伝わる素晴らしい本でした。

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    2025年11月26日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    思ったより読みやすかった。アフリカの未開の地を航行したのが実体験に基づいていると知り驚いた。道理で。
    もう一回読みたい。

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    2025年11月13日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    植民地支配の醜悪さがきつい。
    何度かヨーロッパに戻れる機会があったのに、思いとどまったクルツの心情を考えながら読む。
    未開の地に西洋文明を教示、ついでに象牙で一儲けのつもりが、身も心も自らが軽蔑する蛮人以下になってしまう。身を守るために残忍にならざるを得ない、ジャングルの圧倒的な自然と、そこに住む人たちのわけのわからなさ。
    多面的でいろんな読み方ができる本だと思うけれど、逐一、対比がはっきりしているのでストーリーや会話の意図はとりあえずは読み取りやすい。
    例えば船に乗組員として乗せた食人族が、白人のマーロウ達を飢えていたとしても襲わなかったこと。それに比べてクルツが奥の駐在所の入り口に無数の生首を置いていること。
    人としての尊厳や残虐さや死生観などが、ジャングルと西洋文明の徹底的な対比を通して語られていく。
    最後のクルツの言葉を婚約者に言えなかったマーロウは、そういう人だからこそ、帰って来れたんだと思う。

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    2025年10月16日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    『青の6号』の小説で、この本が触れられていたので読んだ。熱帯雨林、蛮人、「ガリア戦記」という単語など、影響は伺える。が、基本的には植民地支配の話だった。

    序盤は語り部が誰なのかはっきり分からなかった。
    だんだん、マーロウという男がコンゴの川を遡り、奥地の出張所にいるクルツに会いに行くストーリーとわかる。
    タイトルの『闇の奥』とは、文化的なイギリスからコンゴの熱帯雨林のなかを食肉するという蛮人を怖がりながら進む船の航路のこととも取れるし、かなり才能あるクルツがジャングルの奥で精神を病んでしまったことを指しているとも思える。

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    2025年07月14日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    大自然を前に、人間の愚かさを直視したコンラッドでなければ書けない本
    植民地主義時代の価値観がとても丁寧に描かれていたし、マーロウと一緒に冒険している気分にもなれる
    『地獄の黙示録』同様、やっぱりクルツのインパクトは強烈だった

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    2023年02月21日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    全てを支配できると思い込む人間の傲慢さ
    不可能な事をできると信じ、できなかったら狂い出す人間の滑稽さ

    一見輝かしいことは、多くの人の肉体と精神が犠牲になって生まれているのだと思った。

    人が求めているのは平等ではなく、人よりも上に立つ事なのだと思う。

    地味にクルツの妻がホラー。

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    2022年12月20日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    いわずと知れた地獄の黙示録の元本。出張先の書店で見かけて購入。
    原始の混沌に魅せられてしまった殉教者に魅せられてしまう物語なんだろうか。
    虐殺機関の元ネタなんだろうなー。

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    2023年02月25日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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     古典を読まなくなって何年にもなる。十代、二十代の頃は、向学心も強かったためか古典ばかり読んでいたのに、今は新作の追っかけに四苦八苦してそれで済ませている自分がいる。でも古典は、今も時に気になる。未読の古典はずっと心の片隅で消化されることなく遺り、燻り続ける熾火である。

     本作は多くの方とおそらく同様に映画『地獄の黙示録』を契機に知ることになったものだ。コンラッドという作家は冒険小説作家の起源みたいなものである。ぼくはパソコン通信時代<冒険小説フォーラム>に入りびたり、ついにはSYSOP(システム・オペレーターの略でフォーラム運営者を言う)にもなりゆき上なってしまったが、恥ずかしながら冒険小説の古典であるコンラッドの作品に目を通したのは今回が初めてだ。パソコン通信とそのフォーラムがなくなってしまったのは30年前くらいで、その後は情報交換手段はインターネットに移行。さらにパソコンからスマホへと多くのツールやソフトがアプリとなって移ってゆく。

     そんな時の流れの早さの中で、今もなお生き残り続けるのがコンラッド的世界であると、ぼくはこの作品を読んで確信した。フランシス・フォード・コッポラの映画『地獄の黙示録』を観ている方には、本書がその原作となっているということで馴染みやすいと思う。しかし本書は正直言ってお世辞にも馴染みやすくなどはないと思う。一世紀以上の時を隔てた物語なのだから。さらに進化に置き去られたような場所が舞台なのだから。

     本書は、主人公のマーロウが川船で進んでゆく密林と、その最奥部に棲むという謎めいた男クルツ。一言でいえば語り手のマーロウのクルツとの出会いをクライマックスに描いた冒険物語なのだが、さらに驚くことは、コンラッド自身が、未開のコンゴを舞台にした川船行その他の冒険を実際に果たしてきた人間であることだ。

     作品の大分は、テムズ河口でマーロウが問わず語りに話し出す一人称により描かれる。作者自身がマーロウのモデルでもあり、それを聴く側の船乗りたちでもあるのだろう。そんな不思議な情景に本書はスタートする。コンラッド自身の過去や体験がこの物語を語っているようにも見えてならない。

     紙の上に文字を書くだけではなく、実際に船で世界の辺境を巡る人物が、本書の作家でもある。そんな重層構造。しかも彼の生きた時代。彼がこの小説を書いたのは現在より122年前のことである。その時期においてさえ、コンゴという国の深奥部は、あまりにプリミティブであった。人喰いの習慣のある現地人、野生のままの生活の中に入ってゆく象牙収集会社、クルツのように個人で王国を築く者の存在。

     あらゆる人間の原初的なものと、文化の進出を阻む野性、そして思うがままに持続してきた未開の文化。それらが作者の歴史観を根底から破壊してしまった。そんな痕跡が散見されるような表現で綴られる黙示録なのである。

     段落替えの少ない圧倒的な語り口で綴られた何か月にもわたる遡行の旅と、その結末。未開の地で行使される暴力は避けられず、神の不在を感じる作者の体験。それらは、後世には『地獄の黙示録』という映画のエネルギーとなり多くの人々に目撃されることになる。ヴェトナム戦争の現代へ、アジアの密林に舞台を変えて。

     本書は堂々、高見浩氏による新訳である。冒険小説という忘れかけていた言葉が蘇るような力作であるとともに、人間の感ずべき真の恐怖、その恐怖との闘いについて、言葉でしか綴ることのできないメッセージが否応なく感じられる本書。生き残ってきた古典の迫力と、語り口の強さと、描かれた題材の独自さを、改めてまざまざと感じさせる、確かな古典傑作である。

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    2022年11月18日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    狂気の描き方がほわっとしてるというか、表面的に読めばそこまで気が違ってるようには思えない。わかりにくい、といえばそれまで。この作品にホラーやサイコパスめいたものを期待してはいけない。そこらへんに散らばってる出来事や事実を拾い集めると、胃がもたれるような気味の悪さが浮かんでくるタイプ。じわじわきますね。映画のようなドラマティックさはないものの、多くの謎を残したまま、置いてけぼりにされるので。

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    2022年11月03日
  • ロード・ジム

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    雑誌BRUTUSの村上春樹特集で、本人が選んだ51冊のブックガイドの中でまだ未読だったものの1冊。コンラッドの名作『闇の奥』は読んでいたのだが、同じ語り手マーロウが登場する他作品ある、というのはそもそも知らなかった。

    コンラッドの作品は、基本的に植民地支配がテーマであり、本書ではインドネシアのスマトラ島が舞台となる。主人公は、多くのイスラム教巡礼者を乗せた客船が沈没寸前となったことから客船を見捨ててボートで逃げ出したイギリス人航海士のジムという男である。彼が自らの名誉を回復せんがごとく、スマトラ島の未開の地を開拓し、現地人のリーダーとしてコミュニティを作っていく・・・というのが大まかなあらすじである。

    ジムは、航海士という職業でありながら、沈没寸前の客船を見捨てて逃げたことで失った自身の名誉を、とにかく取り戻そうと悪戦苦闘する。本書は一見、職業倫理の問題のようにも見えるが(航海士という職業でありながらジムは乗客を見捨てたのだから)、本書が読者の旨をえぐるのはむしろジム自身の行動が、「”こうありたい”と思う理想の自分に対して、現実の姿が追い付いていないというギャップ」を埋めるためになされているように見える点である。職業倫理の問題であればそのテーマが普遍的なものであるとはいいがたい。しかし、理想の自分に対する現実の自分のギャップであれば、これはどんな人間でも一度は考えたことがある深みを持つことになる。

    そうした点で極めて特殊な造形の人物を描きつつも、その実態は普遍性を持つという文学作品のお手本のような作品だと思い、個人的にいろいろと考えさせられてしまった。

    もちろん柴田先生の翻訳も素晴らしい。

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    2021年10月24日
  • ロード・ジム

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    ノルウェイの森の永沢が敬愛する作家の一人として挙げていたジョゼフ・コンラッド。漠然とした興味で手に取ったのが本作。既訳が何個か出ているが柴田訳を見つけるまでに何度も挫折。最初から柴田訳を見つけておけばよかった。。
    訳文を読んだだけで原文のコンラッドの英語の硬質そうな感じが伝わってくる。感情の描写では一読しただけでは理解に苦しむ部分も多く、なかなか噛み砕けなかったが風景の描写自体はかなり克明というかリアルで海原を進む船の様子がはっきりとイメージできた。
    爆笑問題の太田が本作を「線路に倒れた人を助ける勇気がないのが人間だが自問自答を続けることで助けられるようになるのも人間なのだと教えてくれる作品」と評していたがこんなに正確な書評はない。ジムが作中で何度も私のうちの一人と形容されているように沈みゆく船から飛び降りる行為は立ち止まって考えると誰にも批判できない行動である。
    難解な文と分量の多さで敬遠されることもある本作だが読む人の倫理観を揺さぶり、当事者意識を持たせるようなリアルな作品にするにはここまで長くなるのも必要なんだと思う。

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    2021年10月19日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    あらすじには「植民地主義の闇を凝視した」とあるが、現代の感覚としては、コンゴの"原始人"たちへの眼差しには十分に植民地主義的な上から目線を感じるように思う。ただ当時としては、野蛮人を「啓蒙」するのだという白人たちの酔いに同調せずにかなり引いた態度を取っているだけ、ニュートラルな姿勢だったとは言えるのだろう。

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    2026年08月08日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    映画『地獄の黙示録』の原作といわれる。

    ある船乗りが過去に経験したアフリカ中央への旅を語るという形で冒頭が始まる。そして最後まで一人語りのままつづくとは。

    大航海時代の列強の植民地支配に関して学べるかと思って読んだがただの船員の一人称視点での探検記という中身なのであまり知識が深まることはなかった。

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    2026年05月21日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    ネタバレ

    脚注25 "十九世紀の世界地図では、諸大国の領土を赤(イギリス)、青(フランス)、オレンジ(ポルトガル)、緑(イタリア)、紫(ドイツ)、黄色(ベルギー)の各色で色分けしていた。" p.204

    "油のようにねっとりとした波が大儀そうに艦をもち上げては下ろし、細いマストを揺らしている。" p.35
     これぞ目の当たりにしたものの描写と思える。想像では、こうはいかない。

    " この黒人たちが緩慢な死をとげつつあるのは、ひと目でわかった。彼らは敵でもなければ犯罪者でもなく、もはやこの世の者でもない――病いと飢えにからみとられ、緑がかった薄暗闇のなかにもつれ合って横たわる黒い影にすぎない。" p.42

    "顔を照らす松明の明かりが不吉な翳を生んでいた。" p.64
     脚注から超訳の気配がうかがえたのだが、これは翻訳の妙であろうか。原文の味だろうか。


    序盤から、映画『地獄の黙示録』にすごく似てると感じた。調べてみたら本書を翻案して制作されたとのこと。そもそもそれで気になって読もうリストに積んだのだった。積んだまま忘れていた。ことによると2022年より前から。

    良い読み心地ではない。序盤は特に。うだうだぐだぐだ自分語り。天使憑きを思い出させる。天使憑きは若年の頃からのトラウマ。減点。
    自分語りでないところには感じ入るものがあり、時にマジックリアリズム的な心地よさも覚える。加点。

    コンゴの状況を憂いたとされる作家が南アメリカの金鉱に投資している。どう解釈したらいいのか。それはそれ、というやつか。

    訳者は解説において<自然対人間>というテーマがあると記している。この記述は、本書に覚えた違和感を追求するのに役に立った。
    本書においてアフリカ人は、二通りに描かれている。船員として働くアフリカ人と、そうでないアフリカ人。そうでないアフリカ人は、人間としてではなく、アフリカの事物として記されているように読めた。船員として働くアフリカ人は、特徴的な風習を特筆している点はあったとしても人として描写しているので、単純に<こちら側対あちら側>という構図にすぎないと感じられる。
    少しでも理解が及ぶもの、こちら側にいるのは人間、そうでないものは自然という対照。欧米主観対その他。

    そのような印象が本書に冠された「植民地主義の闇を凝視した」という評に違和感を覚えさせる。
    著者がレイシストであるという批判は古くからあるようで、実際、イギリスの植民地は絶賛し、他をくさすというようなこともあったようだ。本書の舞台となるコンゴはこのときベルギー王の私有。南アの金鉱に投資できた理由もわかる。レイシストかどうかはわからないが、ダブスタではある。

    訳者が巻末解説に記した著者の影響について。
    『密偵』はグレアム・グリーンに。
    『ナーシサス号の黒人』はヘミングウェイに。
    コッポラ『地獄の黙示録』に。
    ヴェルトナー・ヘルツォーク『アギーレ/神の怒り』に。
    キャロル・リード『第三の男』に。

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    2025年12月20日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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     日本縦断サイクリングに持ち込んだ本のうちの1冊が本書だ。面白く、かつ、サクサク読み進められない、というのが選択基準だ。結果、本書と『ホモ・デウス』を持ち込んだが、サイクリング中は主に『ホモ・デウス』を読んでいたので、本書は帰宅後読み進めることになった。

     映画『地獄の黙示録』の原案として知られる本書だが、私も中学生の時に観た『地獄の黙示録』が忘れられず、いつか本書『闇の奥』を読みたいと思っていた。新潮社のStar Classicsシリーズの新訳が発刊されたので、手に取ってみた。

     1800年代の欧州とアフリカの象牙交易の様子がよくわかる。なんと命の価値の低いことかと感じ入る。

     コンゴ奥地で辣腕をふるっているクルツの元に、河をさかのぼり辿り着くお話は、地獄の黙示録そのままだ。王国を打立てたクルツの最期の言葉は『The horror horror 』だ。映画でマーロン・ブランドが吐息のようにつぶやいた言葉だ。本書では『地獄だ 地獄だ』と訳されているが、『恐怖』ともとれるか。いや、でも定冠詞がついているので、感情ではなく情景を指したと考えられ、やはりクルツは『地獄』を見ているのか。

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    2025年09月15日
  • 闇の奥(新潮文庫)

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    19世紀末のアフリカ大陸
    植民地化を進める西洋人の、想像を越える未知の世界が広がる。

    小説『闇の奥』は、コッポラが映画「地獄の黙示録」を作る際の原型とした物語。
    19世紀末のアフリカ、コンゴを舞台とした探検記録のような、それでいて、全編にわたりまとわりつくような熱帯雨林の世界を描き綴っており、ページごと進むのがかなり難儀。
    (舞台をベトナム戦争としたコッポラの映画の方が、まだ分かりやすい?)

    冒険を求めて、主人公マーロウは何が飛び出すかわからない密林のなかの川を遡上する。
    そして、行き着いた“奥”で、不思議な集団を率いていたクルツという人物と出会う。

    幽霊の運び手
    従順な崇拝者ども
    鬱然とした密林
    どんよりとして湾曲した水路
    規則的でくぐもった太鼓の響き

    『地獄だ!地獄だ!』

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    2025年07月01日