菊池秀明のレビュー一覧
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このシリーズを12巻から読み進めているのですが、こに「ラストエンペラーと近代中国」は現代中国を理解するために必読の本だと思います。
中国は辛亥革命以降僅か100年余りしか経っていないのですが、常に変化してきました。中央集権的な2000年が続いた国ですが、春秋戦国時代や列国に分断された時代など、地方分権的な時代もあって、今の中国の姿から全部の中国を決めつけるのは危険です。この本を読んでやっと日本の近現代史が少し理解できました。
日本で終戦の玉音放送が流れているときに、蒋介石もラジオ番組に出演していて、その時に「われわれは報復してはならず、まして敵国の無辜の人民に汚辱を加えてはならない。もし -
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日本人にとって馴染みのある中国はだいたい北部で華南には馴染みがない、と言われてまずなるほどと思った。華南が中華世界に組み込まれたのは遅く、歴史の表舞台に立っていたのはいつも華北であった。本書はそんな華南が辿った歴史を解説している。華南には福建人、閩南人、潮州人、広東人のような漢民族のサブグループの他にイ族やチワン族などが入り乱れている。彼らはみなそれぞれに貧しく、18世紀の人口爆発に押されて移動を余儀なくされる。華南の歴史は彼らの闘争の歴史であり、ひたすらに暗い歴史が綴られる。彼らの生き方は「ワンセック」と呼ばれる、食べるために様々な事業に手を出すという、華北の儒教的価値観とは齟齬のあるものだ
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帯には民主化への分岐点となった「人類史上最悪の内戦」という惹句があり興味を惹かれたが、「最悪の内戦」というイメージはあまりわかなかった。が、期待以上に内容的には面白かった。
副題にもあるとおり、太平天国は「皇帝なき中国」を目指したが、その理念は実現できず、1851年から1864年まで足かけ14年にわたる内戦で多くの犠牲を出しつつ終結した。
太平天国の指導者であった洪秀全の特異なキリスト教理解は、それまでの中国の皇帝支配を否定するものであったが、はじめから「滅満興漢」を掲げたものではなく、太平天国が拡大していくなかで作られていったスローガンであった。「つまり太平天国の滅満興漢の主張は旗人(* -
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キリスト教を母体とした独自の宗教を創設した洪秀全の指導のもと、農民らを巻き込みながら独立国家として清の打倒を目指した太平天国の乱を巡る概説書である。
本書を読むまで高校レベルの世界史で教わる程度の知識しかなかった自身にとってまず驚かされたのは、太平天国の乱による死者数2,000万人という数値である。これは第一次世界大戦の死者数(約1,500万人)を超えており、わずか14年間に中国という一国での死者数ということを考えると、この乱がどれだけのインパクトを後世に与えたかがわかる。
なぜ、現代において太平天国の乱に注目する必要があるのか?その答えは、現在の習近平指導体制で一層強化された中央集権的体 -
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読み進んできた中国史が一気に現代史になった印象。その中で、日本が果たしてきた存在の大きさを改めて噛み締める。有名な蒋介石の言葉「報復してはならない。憎しみは憎しみを生み、永遠に終わらない」との言葉は昭和天皇の終戦ラジオ演説と同時に行われたラジオ演説だった。全く誉められないとしか思えない蒋介石のそれまでの歩みを振り返る時に、中国の懐の深さには感服する。その蒋介石がこの書物の後半では最重要人物のように登場する。ここ数年の習近平政権の強引な政策は毛沢東路線の回帰という前に、蒋介石、また袁世凱の圧政と同じ!との断言で、現代の中国の原点とでもいうべきことを端的に説明していると感じた。そして台湾と清国の
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教科書でチラっと見て清朝末期の中国でキリスト教系の反乱があった、くらいの認識だったのだけど帯に今の中国の一党独裁はこの事件に起源がある的なことが書いてあったので興味を持った。結果言うと自分の読みが浅いのかなぜそう言えるのか分からなかった、とうのが正直なところ。太平天国の乱とは科挙に落ち続けた洪秀全という男がある日、キリストの啓示を受けて自分たちの国を作るために立ち上がり一時は大都市南京をはじめかなりの勢力を持つに至ったが結局は鎮圧された、という事件である。既に弱体化しつつあった清朝が更に弱くなり、地方に軍閥が生まれるきっかけにもなったようだ。作者は太平天国が権力の分散のきっかけになったのでは、
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岩波新書って地味だよね・・。ドラマチックに書けそうなテーマだけどわざと退屈させようとしてるかというくらい淡々としている?太平天国の初めのほうは男女が別れて生活させられたのに洪秀全は1000人の女官とたくさんの妻に囲まれて生活していたとか、内容はショッキングなのに、読者を煽らずアッサリとした文章でむしろ好感持てるくらい。
アヘン戦争が終わったばかりのぼろぼろの中国で、1843年、科挙試験に挫折した洪秀全は初期の中国人キリスト教徒が書いたプロテスタントの伝道パンフレットを読んで自分なりに目覚め(?)、自分が上帝(キリストの当時の中国語訳)に選ばれた末裔と思い込む。偶像崇拝の誤りや上帝が唯一の神であ -
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ネタバレ太平天国の乱の通史。
洪秀全の説く拝上帝会はキリスト教を教義としながらも、官として出世する現世利益や中国固有の天朝制度華夷思想を盛り込んだ独自のものだった。ヨーロッパ近代が「文明」を自任し「野蛮」を排斥した論理をも含み込んでいる。
タイへ天国の乱の当初は教義に基づいた天朝田畝制度や男女の別などの理想主義的な政策が特に貧民に対して受け入れられたが、やがて現実との摩擦で変容を余儀なくされるのは古今東西の革命軍の倣いの通り。太平天国は自らの支持基盤である下層民以外の地主や旗人といった旧体制側の人間を取り込めず発展性を失った・
南京を落とし天京として制度を整えた洪秀全は、自ら天兄・真主として形而上形而