柴藤亮介のレビュー一覧
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文系の存在意義を考えるために読んだ。理系の学問でも、研究資金獲得競争に邁進せざるを得ずに有用性という観点に合致する分野に研究領域が収束しているという指摘になるほどと思わされた。ノーベル賞受賞者の、「楽しいと思える研究をする研究者が増え、研究の多様性があることが大切」という言葉は「それって何の役に立つんですか?」という社会における日常的な問いかけを見直すという示唆を与えてくれる。科学史の専門家から提示された、貴族的な国家と民主主義国家での学問・芸術保護のスタンスの違いは斬新な視点であり、歴史上繰り返される衆愚政治や近代の大衆社会における孤独・閉塞感などの民主主義国家のマイナスな特質を考えさせられ
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ネタバレ「研究」に対して、役に立つ・立たない、といった場合、その話している人の頭の中がそれぞれ違うので、話自体が噛み合っていないことも多い。そんな中で、異なる分野の研究者、ここでは数理学、生物学(ノーベル賞の大隅先生!)、人文学の3名の研究者が講演後、座談会形式で課題と具体的な取り組みを話し合っている本。
ナビゲーターは、研究者を応援するクラウドファンディングを経営しているとのこと。基礎研究は、選択と集中と相性が悪く、説明責任を果たす上でも相性が悪い。一方で、説明責任自体は、果たすべきだが、何を説明すべきか、まったく関心がない人にどのように説明するかの工夫や方向性をしっかり議論すべきというのは、と -
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人を動かす原動力はいろいろあると思うんですけど、研究については、「好奇心」とか「探求心・探究心」とか「興味・関心」であることが望ましいのだと思います。
ただ、世界的に、また、とくに日本では、それらを支えられるだけの土壌や理解、文化が乏しくなってきているように思いますし、その状態を危惧しているのが、本書の関係者だと思います。
一方で、その危惧を払拭するための動きがあるのも事実。
たとえば、この本においてナビゲーターを務めている柴藤氏は、そのような動きを支えている人の一人。
自分もいつかは、柴藤氏のような活動をしたいな、と思っていますので、そこに向けて、いろいろと作戦を考えていきたいと思います -
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3人の異なる分野の研究者が、それぞれ微妙に異なる立場から「役に立たない」研究について論じている。
3人それぞれの講演等の中から印象に残ったことを書き記しておく。
まず、理論物理学者の初田さんは、基礎科学の重要性を一般社会や政府に対して理解してもらうためには、科学者自身のアウトリーチ活動をより多様に、効果的に展開していくべきだと主張している。ADKと組んだ独自のアウトリーチの取組み(クリエイターと協力してプロトタイプを作っていくというもの)も紹介していて、興味深い。
次に、分子細胞生物学者の大隅さんは、自身が、当初全く引用されない分野だったオートファジーの研究を続けてきた経験から、安易に「役 -
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ネタバレ役に立たないとされがちな基礎研究について議論された座談会のまとめ。
そもそも役に立つとは何かということ(線引きは不明瞭・恣意的 と理解した)、基礎研究は多様性を認めてこそ将来応用につながるような研究が生まれること(選択と集中はそぐわない)、研究内容に加えて研究者の人となりや生活ぶりを紹介するようなサイエンスコミュニケーションもあるといいこと、市民のニーズにあった研究という視点(シチズンサイエンスや当事者研究)など、盛りだくさんだった。
子供への理科教育は等しく必要としても、大人に対しては、研究にそれほど興味のない層に無理に届けなくてもいいのでは、という提案もあった。そういう視点は大事なように -
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Posted by ブクログ
ネタバレ知識は使えば使うほど増えていく資源
違う分野の相互作用が大切
基礎研究=原理の追求:縦糸 × 普遍性(論理体系)の探求:横糸
科学の発展は循環的
波及効果が大きいため、長期的視点が必要 多様性から選択
有用性以前に精神の自由
ゼロを一にするには「選択と集中」は使えない。
古代ギリシャローマの 有用性=ユーティリティ=公共での役割
自分にどう関係するのかを主張する民主的な社会は 高尚な学問に冷たい
説明責任 =感情的アプローチ
公的財源のなかのパイの奪い合い →アカデミアと企業の協業のプラットフォーム
一回は失敗してみる心の余裕